半導体エンジニアの転職事情が気になるという人も多いと思います。半導体エンジニアから同職種・他職種に転職する人や、別職種から半導体エンジニアを目指す人も多いのではないでしょうか。

こういった人は、半導体エンジニアからどのような仕事に転職できるのか、半導体エンジニアは未経験でも目指すことができるのか、年収がどの程度なのかといった疑問を持つこともあると思います。

本記事では、半導体エンジニアの転職事情について詳しく解説します。半導体エンジニアからの人気の転職先や転職を成功させる方法、年収、未経験から半導体エンジニアへ転職を成功させるポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

半導体メーカーからの転職事情

はじめに、半導体メーカーからの転職事情について解説します。

半導体メーカーからの転職先

半導体メーカーから転職をするときには、どのような業界や職種に転職をするのでしょうか。「転職動向調査2024年版」によると、「電気・電子・機械・半導体」の職種から同職種に転職する割合は63.8%となっています。それ以外の転職先では、「技能工・設備・配送・農林水産」が10%、「医薬・食品・化学・素材」が7.5%となっています。

半導体関連職からの転職先としては半導体や電気、電子、機械などのような同職種や近い職種が選ばれる傾向があり、その他の業種への転職はあまりないようです。

設計職は転職が難しい?

上の転職のデータは半導体や電気、電子、機械などの仕事のデータでしたが、半導体設計職に絞ると転職が難しい可能性があります。

「半導体設計者が、同じ半導体設計という職種に移ることは基本的に難しい」と述べている記事があります。この記事では「半導体設計職で1人の求人が出たら少なくとも50人、多い時は100人の応募が殺到する」とも説明されています。つまり、半導体設計職は転職市場における競争が激しいことで転職が難しくなっている可能性があるのです。

そして、回答者248人のうち63%が「従来に比べて希望の転職先/再就職先に移ることが難しくなっている」と回答しています。その理由として挙げられたのは「自分の年齢が高くなった」ことでした。

転職において、半導体設計者は若手エンジニアと競争することになる場合が多いため、年齢が上がるほど不利になる可能性があるのです。逆に、半導体設計職でも若いときの転職であれば、転職を成功させられる可能性があるでしょう。

半導体エンジニアに人気の転職先とは?

では、半導体エンジニアが転職をするときに人気の転職先とは、どのような仕事なのでしょうか。

上の転職動向調査では実際に転職をした人の職種を紹介しましたが、「希望の職種」のデータをもとに半導体エンジニアがどのような仕事を希望しているのか、なぜその仕事が人気なのかを解説します。

半導体エンジニア

半導体エンジニアから同じ半導体の仕事への転職も人気です。「希望の職種」でも「電気・電子・機械・半導体」が73.8%と、もっとも高い割合となっています。

これは半導体エンジニアから電気や機械などの別職種に転職している人や、同じ半導体エンジニアの仕事でも別の会社に転職をしている人が多いということでしょう。ただし上で述べたように、設計職が別会社の同じ仕事に転職をするのは競争が激しい可能性があります。

半導体エンジニアには次のような職種があります。

職種 仕事内容
半導体デバイスエンジニア トランジスタやIC(集積回路)、PCに使われるメモリなどの半導体デバイスの設計や開発、製造、評価
プロセスエンジニア 半導体デバイスの製造工程の設計および管理
製造装置メンテナンスエンジニア 半導体製造装置の保守やトラブル対応

半導体エンジニアといっても、このようにさまざまな職種があるので、半導体エンジニアのなかの別の職種に転職をするのもよいでしょう。また、海外の半導体メーカーを志望するという道もあります。

ほかにも、電気や電子、機械関係のエンジニアも人気があると思われます。こういった仕事は半導体エンジニアの仕事で培った知識やスキルを活かせる可能性があります。

ITエンジニア

希望転職先として「電気・電子・機械・半導体」の次に多いのは「ITエンジニア」で15.0%となっています。ITエンジニアは、情報技術を活かしてシステムやソフトウェア、インフラ、Webサービスなどの開発・運用を行う職業です。

ITエンジニアにはさまざまな職種がありますが、半導体エンジニアが利用することの多いC言語やC++、C#などのプログラミング言語を用いるようなITの職種であれば、転職できる可能性があります。

また、組み込みエンジニアやデジタル機器やIoT機器の開発に携わるエンジニアは回路や制御に関する知識が求められる場面が多く、半導体業界の経験を活かしやすいでしょう。

医薬・食品・化学・素材

半導体エンジニアの希望転職先として「医薬品・食品・化学・素材」は12.5%であり人気であることがわかります。

医薬・食品・化学・素材の業界では、半導体を用いた機器や半導体製品の研究・開発・運用を行う仕事があります。たとえば、医療業界ではCTスキャンやヘルスケア機器などに半導体技術が活用されていますし、半導体センサーとワイヤレス通信を活用して遠隔地にいる患者をモニタリングする技術なども存在しています。

また、半導体製造プロセスには数々の化学系材料を使用する工程があるので、化学系のメーカーへの転職なども可能でしょう。半導体エンジニアとして培った能力を活かして医薬・食品・化学・素材などの分野へ転職するのもよいかもしれません。

技能工・設備・配送・農林水産

半導体エンジニアから「技能工・設備・配送・農林水産」業界への転職も人気です。半導体エンジニアからの希望転職先では12.5%となっています。

製造業などで特定の技能が必要な作業を行う技能工や様々な装置のメンテナンスを行う設備エンジニア、農業や林業、水産業で用いられる設備や機器にかかわる仕事などでは、半導体エンジニアの経験を活かすことができるでしょう。

たとえば、工場内の生産ラインで電気や電子、半導体の知識が求められる製品の製造および加工を行ったり、製品の組み立てや装置のオペレーション業務に携わったりする場合には、半導体エンジニアとして設計や開発、製造をしてきた経験を活かすことができるはずです。

半導体エンジニアが転職を成功させる方法

半導体エンジニアの転職を成功させる方法には、どのようなものがあるのでしょうか。

転職動向調査2024年版」の「職種別必要能力」を見ると、「電気・電子・機械・半導体」の仕事において今後必要になりそうだと考えられている能力がわかります。こういった能力を身につけておくことで転職を成功させることができるでしょう。

AIの活用スキルを高める

半導体エンジニアが転職を成功させるためには、AIの活用スキルを高めるのもよいでしょう。上のデータの「職種別必要能力」を見ると、「今後必要になりそうな能力」として「AIのプログラム開発・AIを用いたデータ分析能力」は28.4%ともっとも高くなっています。

AIの知識は、半導体業界でも年々重要性が増しています。AIは半導体チップの性能や消費電力の最適化、半導体製造装置の不備の検出などにすでに利用されていますし、高性能な半導体の開発や製造プロセス最適化にAIを利用することは増えていくでしょう。

また、AIがチップの設計なども行うようになると予想している人もおり、AIを活用する能力は今後より重要になってくるはずです。このようにAIの活用スキルを高めることで、半導体エンジニアとしての転職を成功させられる可能性があります。

ビッグデータの分析・処理能力を高める

ビッグデータの分析・処理能力を高めることも、半導体エンジニアの転職につながる可能性があります。上のデータでも「ビッグデータの分析・処理能力」は23.4%となっています。

半導体製造において、ビッグデータを解析することで半導体の性能向上や製造工程の効率化、コストの削減などを実現できる可能性があります。半導体製造装置からは膨大なデータが得られ、それを分析することで生産性を高めるとともに、半導体の性能や品質を高めることができます。

製造した半導体チップの品質のテストを膨大な回数行うので、そのデータを分析することで品質に影響する箇所の特定ができますし、品質保証に欠かせないテスト内容を特定し不要なテストをなくすこともできるでしょう。そのため、統計解析やPythonを用いたデータ処理のスキルを身につけることで高く評価される可能性があります。

情報セキュリティ能力を高める

情報セキュリティ能力を高めることも、半導体エンジニアの転職を成功させる方法のひとつです。上の調査でも「情報セキュリティ能力」は20.3%で3位となっています。

半導体製造企業がサイバー攻撃に遭ってしまうと、製造ラインが止まってしまいますし、企業や製造に関する機密情報が漏洩してしまうということが起こりえます。その被害は甚大なものになるからこそ、半導体エンジニアは情報セキュリティに関する知識を持っていたほうがよいのです。

どのように攻撃がされ情報が漏洩するかを知り、社内でどうやって情報を管理すべきなのかをセキュリティガイドラインで策定するとともに、ITリテラシーを高める必要があります。従業員に教育をしてセキュリティ意識を高めることも評価につながるでしょう。

マネジメントスキルの向上

マネジメントスキルを向上させることでも、半導体エンジニアの転職を成功させやすくなるでしょう。

半導体製造の現場では複数人のチームで仕事をする機会が多く、メンバーを率いることができる人材が求められています。プロジェクトマネジメントやメンバーのマネジメントを行うスキルがあると転職において評価されやすいでしょう。製造計画の立案やスケジュール管理、予算管理、人材育成などの幅広い領域のマネジメントスキルを身につけましょう。

そして、半導体製造では複数の部門をまたいでコミュニケーションを取る機会なども多いので、複数の部門とのプロジェクトを推進するマネジメント能力を身につけることでプロジェクトを円滑に進められるでしょう。このようにマネジメントスキルを向上させることで、半導体エンジニアとしての転職を成功させやすくなります。

半導体エンジニアへ転職しやすい理由

ここまで半導体エンジニアからの転職事情を説明してきましたが、ここからは半導体エンジニアへ転職しやすい理由を解説していきます。

半導体エンジニアの仕事内容は以下で解説しています。
半導体エンジニアってどんな仕事?仕事内容、やりがい、必要な知識を紹介

人手不足

半導体業界が人手不足であることは、半導体エンジニアへ転職しやすい理由です。

2022年の半導体分野に関連するエンジニアの求人数は、2013年の13.1倍となっているというデータがあります。そして、これは半導体工場の建設ラッシュや国内の製造基盤を強化する動きが加速していることが原因と分析されています。

このように求人数が増加しているのにも関わらず、半導体エンジニア自体の数の増加が追いついておらず人手不足が起こっているので、半導体エンジニアとしての転職がしやすくなっているのです。

未経験から半導体エンジニアへの転職については、以下の記事でも詳しく解説しています。
半導体エンジニアは未経験でも転職できる?メリット、注意点、必要なスキルを解説

未経験可の求人が多い

半導体エンジニアへ転職しやすい理由のひとつは、未経験可の求人が多いためです。

半導体業界では多くの企業が人材確保に積極的であり、未経験であっても採用をしている企業が多いです。こういった企業では研修を行うことでイチから育成を行っており、未経験であっても半導体エンジニアとしての知識と技術を得て働くことが可能です。未経験から育成を行うことで自社のノウハウを徹底的に習得させ、品質を維持し、生産性を高める狙いがあります。

このように未経験可の求人が多いので、半導体エンジニアへ転職をしやすいのです。

未経験でも半導体エンジニアになれる?

未経験からでも半導体エンジニアに転職をすることは可能なのでしょうか。

「半導体関連エンジニア」に関する求人と転職の動向についての調査によると、半導体エンジニアへの転職者の33.6%、つまり3人に1人が「異業種×異職種」からの転職となっています。未経験からでも半導体エンジニアに転職することは可能と考えられるでしょう。

ただし、「理系の素養がある若手をポテンシャル採用したりと、様々な観点から業界未経験者を受け入れて」いるという記事もあり、理系や工学系などの隣接分野の人材を率先して採用している企業もあります。

また、「大学時代に物理などを専攻していた理系の若手未経験者」の採用が増えているという報告もあり、未経験でも理系分野に関する知識や経験がある場合には転職しやすいといえるでしょう。ただし、設計職は競争が激しいのでそれ以外の職種に応募するのがよいでしょう。

半導体エンジニアってどんな仕事?仕事内容、やりがい、必要な知識を紹介

半導体エンジニアの年収

半導体エンジニアの年収はどのようなものなのでしょうか。

職業情報提供サイトによると、半導体エンジニアの平均年収は約688.2万円となっています。国税庁による令和5年度の民間給与実態統計調査では、日本の給与所得者の平均年収は460万円となっており、半導体エンジニアは平均よりもかなり高い収入を得られる職業だということがわかります。

また、職業情報サイトの「年齢別の年収グラフ」を確認してみると、半導体エンジニアの年収は20~24歳で356.5万円ですが、年収は大きく上昇していき50~54歳では841.26万円にも至ります。それ以降も一定の年収が得られるので、半導体エンジニアは高齢になってもしっかりとした収入が得られる仕事だとわかるでしょう。

半導体エンジニアの年収とは?将来性や高収入を目指す方法、必要な能力を解説

未経験から半導体エンジニアへの転職を成功させる方法

最後に、未経験者から半導体エンジニアへの転職を成功させるポイントを解説します。

学校で学ぶ

未経験から半導体エンジニアへの転職を成功させるためには、学校で基礎から学ぶという方法があります。

専門学校や大学のなかには半導体の現場で求められる電気・電子工学や半導体工学などを学ぶことができる学校があります。こういった学校で学ぶことで、企業に対して推薦を受けられることもありますし、転職がよりしやすくなるでしょう。

ただし、学校に通うには費用がかかりますし、卒業までに時間がかかってきます。早めに転職をしたいという場合には以下の方法を検討するのがよいでしょう。

エージェントに相談する

転職エージェントの利用も、未経験者から半導体エンジニアへの転職を成功させるのにおすすめの方法です。

転職エージェントは豊富な求人情報を保有しており、研修を行っている企業や未経験可の求人の情報を多く持っています。特に、機電分野に特化した転職エージェントであれば、より深い情報を持っているでしょうし、他社にはない求人の情報なども紹介してもらえるかもしれません。

転職エージェントの利用者は非利用者と比べて、より高い年収が得られるというデータもあります。未経験者から半導体エンジニアに転職をする際には、エージェントを利用することを検討してみてください。

半導体エンジニアの転職ならベスキャリ機電で

半導体エンジニアは需要が大きくなっているだけでなく、IoTやAIなどの影響もあって将来的にも重要とされる仕事でしょう。未経験の人を募集している企業も多いので、転職を考えている人はぜひ応募を検討してください。そして、半導体エンジニアへの転職を成功させるためには、転職エージェントに相談するのがおすすめです。

「ベスキャリ機電」は機電分野に特化した転職エージェントサービスです。15年以上の運営実績を持ち、全国のさまざまな企業とネットワークがあるので、非公開求人を含む豊富な求人情報を取り扱っています。未経験可の求人や研修を行っている企業の情報なども多く保有しているので、未経験であっても転職しやすい仕事を見つけることができるでしょう。

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