セキュリティエンジニアとはどのような仕事なのでしょうか。サイバー攻撃が増加する現代においては、システムやデータを守る「セキュリティエンジニア」という職種が注目されています。セキュリティエンジニアの仕事に興味を持ったという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、セキュリティエンジニアの役割や仕事内容、年収、必要なスキル、おすすめの資格などについて詳しく解説します。セキュリティ分野に興味がある方や、キャリアとして検討している方は、ぜひ参考にしてください。

セキュリティエンジニアとは

セキュリティエンジニアとはどのような仕事なのでしょうか。まずは、セキュリティエンジニアの役割や需要、重要である理由について解説します。

セキュリティエンジニアの役割

セキュリティエンジニアは、企業のシステムやネットワークを不正アクセスやデータ改ざん、ウイルスなどの脅威から守る専門職です。企業のシステムは、ネットワークを介して外部からハッキングやマルウェア感染といった攻撃を受けることで、個人情報や機密情報が奪われたり、システムを利用できない状態に追い込まれたりしてしまう可能性があります。

セキュリティエンジニアはこういったハッキングなどの攻撃がされないようにシステムの設計をし、脆弱性の診断を行うとともに攻撃を受けたときに素早く検知をして被害の拡大を防ぐことが求められます。

セキュリティエンジニアは個人情報やシステムの安定稼働を支える重要な職種であり、企業の経済活動における信頼性や継続性を支える重要な仕事なのです。

セキュリティエンジニアの需要は高い

セキュリティエンジニアの需要は年々高まっています。というのも、サイバー攻撃の件数は年々増加しており、それに伴って企業や組織がセキュリティ対策を強化しているからです。

「サイバー攻撃による法人組織の被害状況調査」によると、過去3年間で56.8%の企業がサイバー攻撃の被害を経験しています。サイバー攻撃が増加し、身近になっているからこそ、セキュリティエンジニアの需要が高まっているのです。また、DX推進やIoT化により、クラウドや仮想サーバーを活用する企業が増えていることもあり、よりセキュリティエンジニアが求められているともいえます。

しかし、セキュリティエンジニアは現在大きく不足しています。グローバルサイバーセキュリティ人材調査によると、日本ではサイバーセキュリティ人材が約48万人に増加したものの、それでもなお約11万人の人材が不足していると報告されており、その需要は高い状態です。

セキュリティエンジニアが重要な理由

現代において、セキュリティエンジニアはとても重要です。企業や組織がサイバー攻撃に合うと、大きな損害を被ってしまいますし、顧客からの信用を損なってしまいます。

「サイバー攻撃による法人組織の被害状況調査」によると、サイバー攻撃による企業の累計被害額は平均1億2,528万円にも上ることがわかっています。攻撃を受けると業務停止や情報流出、金銭の窃取、サプライチェーンへの影響による直接的な損害以外にも、顧客からの信用を長期的に損なうことにもなってしまいます。

このようにサイバー攻撃を受けると大きな損失を被ってしまうので、サイバー攻撃を防ぐセキュリティエンジニアが重要なのです。

セキュリティエンジニアの仕事内容

セキュリティエンジニアはどのような仕事を行うのでしょうか。仕事内容を解説します。

システム企画・設計・実装

セキュリティエンジニアは、企業のネットワークやシステムのセキュリティに関する企画・設計・実装を行う役割を担います。

情報システムのどの部分を監視対象とするかの計画、不正アクセスを検知し防衛するシステムの設計と実装、問題発生時のアラート設定を行います。セキュリティホールがないようなシステムの設計・実装を行うとともに、サイバー攻撃があったときに素早く確実に検知ができるような設計を行い、問題があった場合に警告をするシステムを作るのです。

システムがセキュリティに配慮した設計になっていなければ、たやすくシステム内に侵入されてしまうからこそ、システムの企画や設計、実装は重要です。

セキュリティ監査・脆弱性診断

セキュリティ監査や脆弱性診断も、セキュリティエンジニアの業務の1つです。セキュリティ監査では、企業のセキュリティ体制や運用が適切かどうかをチェックします。情報セキュリティポリシーの遵守状況やアクセス権限の管理、ログの記録状況などを確認し、法令や業界基準への適合も評価します。

脆弱性診断では、セキュリティエンジニアがシステムを検査し、システムやセキュリティ機器から得られるログを分析して脆弱なポイントがないかを診断します。監査結果や診断結果はレポートにまとめ、顧客と協議のうえ適切な対策を講じます。

セキュリティエンジニアは、金融機関のオンラインバンキングや決済システム、ECサイトの取引システム、鉄道や航空などの運行管理システム、製造業における生産ラインの制御システムなど、多岐にわたる業界のITシステムに対して、監査や脆弱性診断を実施します。

運用・障害対応

セキュリティエンジニアは、システム導入後の運用や障害対応も担います。システムが想定どおりに運用されているかをチェックし、日々のログやデータの分析を行い、サイバー攻撃の痕跡がないかの確認などを行います。

セキュリティインシデントが発生した場合には、迅速に原因を特定し、問題の解消にあたります。システムのログ分析やネットワークの診断を行い、問題の除去、システムや業務の復旧、社内外の関係者への連絡と調整を行います。

このように、セキュリティエンジニアは運用の安定化と障害発生時の迅速な対応を行うのです。

保守

セキュリティエンジニアは、企画・設計・実装を行ったシステムやハードウェアやネットワークの保守作業も行います。システムの継続的なアップデートや定期的なセキュリティテストを行い、システムの安全性を担保することが仕事となります。

また、サイバー攻撃は日々進化しており、新しい攻撃手法やウイルスなどが生み出されています。システムやハードウェア、ソフトウェア、OS、ネットワークなどをこういった最新の攻撃に対応するようにアップデートしなくてはなりません。

そのためにも、日々新しい情報をチェックし、脆弱性情報やセキュリティ動向を把握したうえで適切な対策を講じなくてはなりません。

セキュリティエンジニアの年収

セキュリティエンジニアとして働く場合、どれくらいの年収を得られるのでしょうか。

セキュリティエンジニアの年収

厚生労働省の職業情報提供サイトによると、セキュリティエンジニアの平均年収は558.3万円となっています。

「年齢別の年収グラフ」を見ると、年齢が上がるにつれて収入も増加し、45歳で695万円、55~59歳でピークの713.98万円となっています。また、65~69歳でも平均389.04万円の収入があり、高齢になっても一定の収入を得られるということがわかります。

「所定内給与額別の人数グラフ」を見ると、40.0~44.9万円の月給層は9.74%と多くなっています。以下で説明しますが、これ以上の金額も一定割合おりセキュリティエンジニアは年収1,000万円も可能な仕事であることがわかります。

セキュリティエンジニアへの転職で年収が上がる?

セキュリティエンジニアへの転職によって年収を高めることが可能なのでしょうか。結論から述べると、転職によって年収を上げられる可能性があります。

「IT職種の転職前後の平均年収レポート」によると、IT職種において転職前後の平均年収増加幅が最も大きかったのはセキュリティエンジニアで、年収が67万円上がったとのことです。

セキュリティエンジニアは人手不足であり、企業は能力のあるエンジニアを確保するために年収を高めている可能性があります。経験を積み、キャリアを高めていくことでセキュリティエンジニアは年収を高めていくことができるでしょう。

セキュリティエンジニアの具体的なキャリアパスについては、以下の記事で詳しく解説しています。

セキュリティエンジニアのキャリアパスとは?資格、キャリアの始め方も解説

セキュリティエンジニアに求められるスキルとは

セキュリティエンジニアには高度な知識とスキルが求められます。ここでは、経済産業省の「デジタルスキル標準」において、サイバーセキュリティエンジニアが「担う責任・主な業務・スキル」として定められているものを紹介します。ここでは、「a:高い実践力と専門性が必要」「b:一定の実践力と専門性が必要」とされているもののみを解説します。

カテゴリー サブカテゴリー スキル項目 重要度
テクノロジー ソフトウェア開発 コンピュータサイエンス b
チーム開発 b
ソフトウェア設計手法 b
ソフトウェア開発プロセス b
Webアプリケーション基本技術 b
フロントエンドシステム開発 b
バックエンドシステム開発 b
クラウドインフラ活用 a
SREプロセス a
サービス活用 b
デジタルテクノロジー フィジカルコンピューティング b
その他先端技術 b
セキュリティ セキュリティマネジメント セキュリティ体制構築・運営 b
インシデント対応と事業継続 b
プライバシー保護 b
セキュリティ技術 セキュア設計・開発・構築 a
セキュリティ運用・保守・監視 a

出典:デジタルスキル標準 ver.1.2|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

ソフトウェア開発

セキュリティエンジニアにはソフトウェア開発のスキルが必要です。セキュリティエンジニアはIT機器やシステムなどに導入するソフトウェアを開発するので、プログラミングスキルや開発の手法を理解しておかなくてはなりません。

特に、クラウドインフラの活用とSREプロセスの導入が特に重要になります。これらのスキルは、セキュリティエンジニアがシステムの安定性と信頼性を維持しながら、迅速かつ継続的に改善を進めるうえで欠かせません。

近年はクラウド環境を前提とした開発が主流となっており、可用性・拡張性・柔軟性に優れたインフラ設計に関する深い理解が求められます。クラウド環境を適切に構築・運用できることは、セキュリティ対策の面でも大きな意味を持ちます。

また、SREを取り入れることでIT運用作業を自動化でき、障害の予防や自動復旧、継続的な改善を実現できます。モニタリング・アラート設定・インシデント対応・ポストモーテム分析などによって運用面での信頼性を高めることができるのです。

デジタルテクノロジー

セキュリティエンジニアには、フィジカルコンピューティングやその他先端技術の知識が求められます。これらの技術や知識を身につけることで、セキュリティ対策の精度を高め、脅威への対応力を向上させることができます。

フィジカルコンピューティングは、人の動きや表情、音声などの物理的なアクションをデジタルデータとして処理する技術で、近年のIoT化やAIの進化に伴い、重要性が増しています。また、その他の先端技術(ブロックチェーン基盤や秘密計算、HTTP/3など)もサイバー攻撃の防御やシステムの強化に役立ちます。

例えば、手のジェスチャーで機器を操作するインターフェースや、顔認識技術を活用した認証システムは、セキュリティに直結する技術です。さらに、音声認識によるアクセス制御に加え、ブロックチェーン基盤を活用したデータの改ざん防止や、秘密計算技術による個人情報の保護、HTTP/3による安全で高速なデータ通信も、高度なセキュリティ対策に必要になります。

このようなデジタルテクノロジーの技術や知識を習得することで、セキュリティエンジニアは高度なセキュリティシステムを構築し、より強固なセキュリティ環境を実現できます。

セキュリティマネジメント

セキュリティエンジニアには、セキュリティマネジメントの能力が求められます。そして、セキュリティマネジメントには、セキュリティ体制の構築・運用、インシデント対応、プライバシー保護の知識とスキルが必要になります。

高度なセキュリティシステムを導入しても、運用するための体制を構築し、使用者が適切に運用しなければ、その効果は十分に発揮されません。セキュリティマネジメントの体制と計画を作るとともに、インシデントが起こったときの対応方法を定め、組織内でのプライバシーやセキュリティに対する意識を高める能力が必要です。

セキュリティエンジニアは、適切にマネジメント計画を作り、組織全体に率先して働きかけ実行・管理をする能力を身につけなくてはなりません。

セキュリティ技術

セキュリティ技術もセキュリティエンジニアに必須の能力です。これはセキュリティシステムの設計・開発・構築のスキルと、運用・保守・監視のスキルのことです。

企業や組織のシステムをサイバー攻撃から守るためには、セキュリティ対策を施したシステムの設計・開発・構築のスキルと、それを運用・保守し、日々監視を行うノウハウが必須です。

セキュリティ計画や運用などの知識を知っておくだけでなく、実際にセキュリティを実行できる技術が求められるのです。システムを構築、改善するためのプログラミングや運用や監視を行うためのノウハウを得る必要があるでしょう。

セキュリティエンジニアにおすすめの資格3選

セキュリティエンジニアとして活躍するためには、高度な知識とスキルが必要になることがわかりました。この知識とスキルがあることを証明するのに役立つ資格もあります。ここでは、「独立行政法人 情報処理推進機構」で紹介されている、セキュリティエンジニアにおすすめの資格を3つ紹介します。

情報処理安全確保支援士試験

情報処理安全確保支援士試験は、サイバーセキュリティの専門知識と技能を証明する国家資格です。この試験は、技術的な知識に加え、セキュリティ管理やリスク評価、セキュリティ戦略の立案に関する幅広いスキルが問われる内容であり、実務対応だけでなく、組織全体のセキュリティを支える能力も求められます。

試験の難易度はレベル4に設定されており、技術的スキルに加えてセキュリティマネジメントやリスク評価などの知識も問われるため、実務経験を踏まえた総合的な対策が求められます。

ネットワークスペシャリスト試験

ネットワークスペシャリスト試験は、ネットワーク技術の専門家としてのスキルを証明できる国家資格です。この試験は、ネットワークシステムの構築・運用に必要な幅広い知識と技術を問う内容であり、取得者はシステムの開発・運用・保守のみならず、技術支援を行う能力も求められます。

試験の難易度は最高レベルの4に設定されています。情報処理安全確保支援士試験と同様に国家資格であるものの、試験の実施は年に1回のみと限られているため、取得に向けて入念な準備が必要となるでしょう。

応用情報技術者試験

セキュリティエンジニアには応用情報技術者試験の取得もおすすめです。この資格は、セキュリティ分野に関する幅広い知識と技術を身につけており、実務で活用できることを証明するものです。

応用情報技術者試験では、セキュリティ、ネットワーク、データベース、ソフトウェア設計、マネジメント、ストラテジ分野など、実務に直結する幅広い分野から出題されます。特に記述式の試験では、長文の設問に対して論理的に考察し、適切な判断ができるかが問われるため、実務的な対応力や問題解決力も重要です。

試験の難易度はレベル3とされており、情報処理安全確保支援士試験よりは低いものの、幅広い出題範囲となっています。

セキュリティエンジニアの仕事に関係する資格は以下で詳しく解説しています。

セキュリティエンジニアにおすすめの資格とは?国家資格、民間資格ともに紹介

セキュリティエンジニアの派遣・フリーランス案件はベスキャリITで

セキュリティエンジニアは、企業のサイバーセキュリティ強化が求められる中で、その需要が高まり続けている職種です。転職サイトや求人サイトなどでも多くの仕事の求人が掲載されており、転職を考えているエンジニアやフリーランスエンジニアにとっても仕事を得やすい職種といえます。

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