電気設計の仕事に必要な知識・スキルにはどのようなものがあるのでしょうか。電気設計の仕事に興味があり、これから電気設計を目指そうと考えている人は、どのような知識を身につければいいかわからないと思います。

この記事では、電気設計の仕事に必要な知識やスキルについて解説します。就職・転職するためのポイントも紹介しているので、電気設計エンジニアを目指している人はぜひ参考にしてください。

電気設計の仕事とは

まずは電気設計エンジニアの仕事内容について紹介します。

電気設計エンジニアの仕事内容

電気設計エンジニアとは、電気自動車や産業用ロボット、スマートフォン、建築設備などの機器やシステムに必要な電気回路および配線の設計を行う技術者です。

電気自動車の電源管理システムや産業用ロボットの制御プログラム、スマートフォンの基板設計、建築物の電気設備やプラントの電力供給システムの設計など、電気設計エンジニアが携わる製品は多岐にわたります。

また、回路や配線のみならず、PLC(プログラマブルロジックコントローラ:機械を制御する装置)のソフト設計、レイアウト設計なども電気設計エンジニアの仕事に含まれます。これらの設計が完了した後にテスト版の試作を行ない、動作検証と評価を実施し、仕様どおりに動作するかどうかを確認します。

このように、電気設計エンジニアは、多様な製品に不可欠な電気回路や配線を設計する仕事です。

電気設計以外にも電気に関わる仕事にはさまざまなものがあります。以下でそれらを紹介しているので参考にしてください。

電気関係のおすすめの仕事は?年収、資格、スキルをまとめました

電気設計エンジニアの年収

電気設計エンジニアの年収はどれくらいなのでしょうか。職業情報提供サイトによると、全国の電気設計エンジニアの平均年収は688.2万円となっています。

令和5年分の民間給与実態統計調査では給与所得者の平均給与が460万円となっているため、電気設計エンジニアは年収の水準が高い職業といえるでしょう。

また、年齢別の年収を見ると、20代は350万円~500万円前後で推移していますが、30代から年収が600万円を超え、50~54歳で最も高い841.26万円に達しています。60代になると年収は下がってしまうものの、それでも500万円前後の年収を維持することが可能です。このように電気設計エンジニアは高い年収が期待できる職業です。

電気設計に必要な知識

電気設計エンジニアには、さまざまな分野の知識が求められます。ここでは、電気設計エンジニアに必要な以下の5つの分野の知識を紹介します。

  • 電気工学
  • 建築設備
  • 機械設計
  • 法令
  • 先端技術

電気工学

電気設計エンジニアとして働く場合、電気工学の知識が重要です。電気工学とは、電荷や電圧、電流などの基礎理論をはじめ、コンデンサや抵抗といった電子部品の特性、安全な電力供給のための技術を学ぶ学問です。

電気設計エンジニアが適切な回路設計を行うためには、電気の基本原理や電子部品の動作を理解することに加え、発電や電力供給の仕組みについても熟知する必要があります。

例えば、工場では発電機の組み立てを担当し、発電施設の建設現場では工程や建設の状況を確認しながら作業員への技術指導を行うことがあります。施設を稼働させて発電を行う際には、専門的な知識に基づき安全かつ効率的に電気を供給できるような調整も求められるので、電気工学の知識が必要なのです。

建築設備

建物や設備の電気設計を行う電気設計エンジニアには、建築設備の知識が求められます。建築設備とは、建物内外の電気設備や配線システムを指し、受変電設備、幹線ケーブル、配線キャビネット、さらには太陽光発電や蓄電池の接続システムなどが含まれます。

電気設計エンジニアは、機械や製品の電気回路の設計だけでなく、こういった建築設備の電気設計にも関わることが多いため、建物の電気システム全体を理解する必要があるのです。オフィスビルや工場では、受変電設備を設計し、安全かつ安定した電力供給を確保する必要があります。また、太陽光発電システムを備えた建物では、蓄電池と電気設備を適切に接続する技術も求められます。

建築設備に関する知識は、電気設計エンジニアが習得しておくべき知識です。

機械設計

機械設計の知識も電気設計エンジニアの仕事に役立つ知識です。機械設計とは、機械の構造や機能を設計する分野であり、電気設計と密接に関係し、機械と制御システムを適切につなぐために重要です。特に、産業機械の電気設計においては、機械と制御システムをつなぐ作業が重要であり、機械設計の知識を持っていることでスムーズな設計や適切な制御が可能になります。

例えば、産業用ロボットの設計では、モーターの選定や駆動機構の配置を考慮しながら、制御システムとの連携を図る必要があります。また、自動生産ラインでは、機械設計の視点から適切な配線や配管を考え、安全かつ効率的な電気制御を実現することが求められます。

このように、機械設計の知識は電気設計に欠かせないものであり、特に産業機械の制御システムと機械をつなぐ場面で役立つでしょう。

法令

電気設計エンジニアは法令についても学んでおいたほうがよいです。電気設計の業務では国内外の法令を理解し、適切に対応することが求められます。電気設備の設計や施工においては、電気事業法、電気工事法、電気用品安全法などのような法律や規制に従わなくてはならないのです。

日本国内では電気事業法に基づく基準を満たす必要があり、海外向けの製品は各国の安全規格(UL規格、CEマーキングなど)に適合させなければなりません。仮に適切な部品を使用せずコスト削減を優先すると、漏電や火災といった重大事故につながる危険性があるので注意が必要です。

電気設計の仕事に携わる上で、国内外の基準を遵守し安全かつ信頼性の高い設計を実現するために法令の知識は欠かせません。

先端技術

電気設計エンジニアにとっては、先端技術に関する知識を学ぶことも重要です。電気・電子分野では技術が日々めざましい発展を遂げています。この技術の進歩についていくためにも、先端技術に関する知識を身に付ける必要があります。

AIを活用した制御システムや次世代の半導体技術、電気自動車向けの高効率バッテリーシステムなど、最先端の技術を理解し取り入れることで、より競争力のある設計を行うことが可能になるでしょう。専門誌を読んだり、セミナーや技術講習会に参加したりするなど、継続的に情報収集を行い、最新技術への理解を深めるのがよいです。

先端技術の知識を取り入れることでより高度な設計が可能になるでしょう。

電気設計に必要なスキル

電気設計の仕事をするには、知識だけでなく以下のスキルなどを身に付けることも大切です。

  • CADの操作
  • コミュニケーション力
  • 回路図の読み書き

それぞれどのようなスキルなのか、詳しく解説します。

CADの操作

電気設計の仕事にはCADの操作スキルが求められます。電気設計における回路図や基盤図の作成、回路のシミュレーションはCADを用いて行いますし、CADによって設計データを効率的に管理・活用します。

2DCADを使用すれば平面的な回路の設計を行えますし、3DCADを活用することで基盤の立体的な配置を確認しながら設計を進めることができます。また、回路のシミュレーション機能を用いて、設計段階で動作の検証を行うことも可能です。

多くの場合、電気設計の現場でCADは利用されますし、設計の精度向上と作業効率化のためにもCADの操作スキルは必須といえるでしょう。

コミュニケーション力

電気設計の仕事にはコミュニケーション力が必要です。電気設計の仕事は一人で完結するものではありません。複数人のチームで仕事にあたりますし、複数の部門や外部企業と協力しながら進めることが求められます。

だからこそ、円滑なコミュニケーションを取るとともに、設計意図を的確に伝え関係者との間で意思疎通を図る力が必要になります。クライアントやパートナーなどと関わることも多いので、専門知識を持っていない人にもわかりやすく伝えられるスキルも必要となります。普段からチームや他部署、関係会社とコミュニケーションを図り、信頼関係を構築しておくことで万が一トラブルが発生した際にも迅速に対応できることにもつながるでしょう。

コミュニケーション力は、電気設計において欠かせないスキルであり、プロジェクトを円滑に進めるためには関係者との連携を意識することが重要です。

回路図の読み書き

電気設計の仕事には、回路図を読み書きするスキルが求められます。これは、他者が作成した回路図の電気回路を構成する記号や電気シンボルを正確に理解するとともに、自身で設計をする際に回路図として表現する能力です。

回路の全体像の把握や詳細な設計の確認、さらには製造・保守担当者との情報共有をスムーズに進めるためにも、回路図を正しく理解し、自分の意図を正確に作成できる力が必要です。

また、回路図の作成を正確かつ精密に行えれば、製造工程でのずれやミスの防止につながります。保守作業においても、回路図を基にトラブルの原因を特定し、迅速に対応できるようになるでしょう。

電気設計におすすめの資格

電気設計エンジニアとしての就職・転職を目指すなら、資格を持っておくと選考時に有利に働くことがあります。ここからは、電気設計の仕事におすすめの資格を紹介します。

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士とは、電気工事の施工管理を行うために必要な知識と技術を証明する国家資格です。資格を取得することで、電気工事業や建設業で施工管理を担当できるようになります。特に建設業界では営業所の専任技術者や主任技術者としての役割を担えるので、転職や就職で有利になるかもしれません。

資格には1級と2級の2種類があります。2級の資格を取得すれば一般建設業における営業所の専任技術者になることができ、1級の資格を取得すれば専任技術者として特定建設業に携わることができるようになり、大規模な工事案件に関与できます。

電気工事施工管理技士は、電気工事業界や建設業界でのキャリアアップを目指す際に特に有効です。

電気主任技術者

電気主任技術者は電気事業法に定められた国家資格です。電気主任技術者は、工場などの電気設備や電気事業⽤の発電所における電気設備の工事、維持運用に関する保安の監督の役割を担います。事業所ごとに電気主任技術者の設置が必要な業種があり、そういった業種では需要の高い資格となっています。

電気主任技術者には第一種、第二種、第三種があります。第三種の資格を取得すれば電圧5万ボルト以内の設備を取り扱うことができ、第二種では電圧17万ボルト以内、第一種を取得すると電圧に関係なくすべての事業用電気工作物の取り扱いが可能となります。

一次試験では、理論・電力・機械・法規の4科目の試験があります。二次試験では、発電所や蓄電所、変電所の設計・運転、送電線路や配電線路の設計・運用・電気施設管理、電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御やメカトロニクスについての知識が問われます。

電気通信技術者

電気通信主任技術者は、通信ネットワークの施工や維持・運用を監督するために必要な国家資格です。電気通信主任技術者は、総務省令で定められた技術基準に適合した事業用電気通信設備を維持・管理する責任を有し、通信インフラの安定運用に貢献する重要な役割を担います。

電気通信設備は、日々のインターネットや通信インフラの基盤となるものであり、その設計や管理には高度な専門知識が求められますが、電気通信主任技術者の資格を取得することで高度な知識と技術を有していることを証明することができます。

電気通信技術者の資格には「伝送交換主任技術者」と「線路主任技術者」の2つがあります。どちらも電気通信システムと法規、設備管理が問われますが、伝送交換主任技術者では伝送交換設備、線路主任技術者では線路設備について出題されます。どちらもインターネットが普及した現代において重要な役割を持っているため、通信インフラに関連する業務に携わりたい場合におすすめの資格です。

電気工事士

電気工事士とは、電気工事士法によって定められた国家資格です。低圧で受電する屋内配線設備や高圧受電の小規模ビル・工場などにおいて、電気設備の設置や電気工事を行なうことができます。

電気設備の設置や工事には専門的な知識と技術が求められ、法律上も資格保有者しか作業を行うことができません。第二種電気工事士の資格を取得すれば、住宅や店舗などの一般用電気工作物の施工が可能になり、第一種を取得すれば、自家用電気工作物(最大電力500kW未満)の施工も担えるようになります。

試験では電気に関する基礎理論や配電理論、配線設計、電気工事の施工方法、配線図などの知識が必要となります。

未経験から電気設計エンジニアへの就職・転職を成功させるポイント

未経験から電気設計エンジニアへの就職・転職を目指すには、どのような方法があるでしょうか。ここからは、就職・転職を成功させるポイントを解説します。

学校で学ぶ

未経験から電気設計エンジニアを目指す場合、学校で専門的な知識・スキルを学ぶという方法があります。電気設計の仕事をするうえで、電気工学の基礎知識や回路図を作成するスキルは必須です。学校に通うことで仕事に活かせる基礎知識を効率的に習得できるでしょう。

電気工学を学べる学校には、大学や高専、専門学校などがあります。すでに社会人として働いている場合でも、夜間部や社会人課程が用意されている学校を選ぶことで、働きながら技術を身に付けることが可能でしょう。

ただし、学校に通うには一定の費用と期間がかかるということに注意が必要です。

未経験採用を行っている会社に応募する

未経験で電気設計エンジニアへの就職・転職を成功させるには、未経験者の採用を行っている会社への応募という方法もあります。

未経験可の会社は、選考において経験よりも人柄やコミュニケーション力を評価する傾向がありますし、イチから育成をすることを計画していることが多いです。基礎的な電気設計の知識や必要なスキルを学べる研修が用意されていたり、丁寧なOJTにより業務を学べる環境が整えられていたりします。そのため、未経験者でも安心して電気設計エンジニアとしてのキャリアをスタートできるでしょう。

未経験で電気設計エンジニアへの就職・転職を成功させるには、未経験者の採用に力を入れている会社を中心に応募するのがおすすめです。

エージェントに相談する

未経験で電気設計エンジニアへの就職・転職を考えている場合、転職エージェントに相談するという選択肢もあります。

転職エージェントは、豊富な求人情報を持っているので、未経験者の採用に力を入れている会社の情報を提案してくれるはずです。機電分野に特化したエージェントであれば、より業界の多くの企業とネットワークがあり、適切な求人を見つけられる確率が高まるでしょう。

また、転職エージェントの利用有無と年収に関する調査では、転職エージェントを利用した求職者の約4割が「年収が上がった」と回答しており、給与面でもより良い条件で就職できる可能性が高まります。

エージェントに相談することで、未経験からの転職をスムーズに進めることができ、希望に合った職場に就職できるチャンスが広がります。

電気設計エンジニアへの就職・転職ならベスキャリ機電で

電気設計の仕事には、電気工学や建築設備、機械設計などの知識、CADの操作やコミュニケーションスキルなど、さまざまな知識やスキルが求められます。すでに機電分野で働いている人は、すでに身につけた知識やスキルを活用することができるでしょう。ただ、イチから育成を行っている企業もあるので、未経験者でも電気設計エンジニアを目指すことができます。

ベスキャリ機電は機電分野に特化した転職エージェントです。15年以上の運営実績を有し、電気設計エンジニアに関連する求人を多数掲載しています。業界のネットワークがあることから、未経験可の求人や非公開求人なども多く保有しています。

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