電気エンジニアは、私たちの生活や産業を支える重要な職種です。電気エンジニアの仕事に興味があるという方は、電気エンジニアがどんな仕事をしているのか、年収はどれくらいなのか、将来性はあるのかと思っている方も多いと思います。
この記事では、電気・電子エンジニアの仕事内容から年収、キャリアパス、必要なスキルまでを幅広く紹介します。未経験から目指す方法や向いている人の特徴も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
電気・電子エンジニアとは
ここではまず、電気・電子エンジニアの基本的な役割や労働環境を解説します。
電気・電子エンジニアの概要
電気・電子エンジニアは、電子機器や電子部品を用いた製品の設計・開発に関わる技術者のことを指します。日常生活に欠かせない家電製品や通信機器、産業機械、自動車、インフラ設備など幅広い分野で活躍しており、現代社会の基盤を支える役割を担っています。
具体的には、電気製品の技術開発、製品設計、製造・組立、保守、修理などを行います。電気製品が電気効率よく正常に動作するように設計や開発を行うとともに、製品の完成までを主導する仕事となります。
電気・電子エンジニアはIoT機器や半導体、AIチップの開発など最先端技術を扱う機会も多く、デジタル社会の発展に欠かせない存在となっています。
労働環境
電気・電子エンジニアの勤務先には、大手を含む電子機器メーカーなどが多いです。正社員として雇用されて働く場合が多いため、労働環境は比較的安定しています。海外工場との連携や技術指導のために海外出張や駐在が発生するケースもあります。
機電系エンジニアの残業時間の調査では、月の平均残業時間は「30~40時間未満」が9.9%でもっとも多い割合となっており、比較的残業の少ない環境といえます。
研究開発の進捗に合わせて勤務時間を調整しやすいフレックスタイム制を導入している企業が多いですし、プロジェクトの納期に向けて集中的に作業するために勤務時間を調整することも可能となります。
自身の研究成果が特許として実用化された場合に報奨金が支給される制度を導入している企業などもあります。
電気・電子エンジニアの需要
近年、電気・電子エンジニアのニーズはさまざまな業界で高まっています。ここでは、電気・電子エンジニアの需給の現状を見ていきましょう。
電気・電子エンジニアは人手不足?
電気・電子エンジニアは人材が不足している職種のひとつです。
電子技術者は、職種によっては転職・就職を考えている技術者に対して4~5倍もの求人があるという記事がありますし、2030年には電気主任技術者が2,000人不足するという報告もあります。
製造業の現場では技術者の高齢化や引退が進む一方で、若手人材の育成が十分ではありません。加えて、IoT機器やEV(電気自動車)、再生可能エネルギーといった次世代製品の開発が加速することで、電気・電子分野の専門知識を持つエンジニアの人手不足が発生しているのです。
電気分野はエンジニアに需要が高い
電気分野にはさまざま職種がありますが、電気分野ではエンジニア職に今後も高い需要が見込まれます。
製造業やIT、自動車、エネルギー分野では、インフラや製品の根幹を支える技術として電気エンジニアが欠かせませんが、近年急速に発展しているAIや自動運転システム、工場を効率化するスマートファクトリーといった新しい技術が登場したことで、電気エンジニアへのニーズはさらに拡大しています。
企業の多くは中途採用や未経験者の育成にも積極的に取り組んでおり、経験の有無を問わず人材の確保を強化しています。今後も技術革新が進むなかで、電気系エンジニアのニーズはさらに高まっていくと予測されます。
電気・電子エンジニアの年収事情
電気・電子エンジニアを目指す上で、年収がどのくらいかを気にする方は多いのではないでしょうか。ここでは、平均年収や年齢による年収の違い、他のエンジニア職との比較などを通じて、収入面の実態を詳しく見ていきます。
平均年収
職業情報提供サイトによると、電気機器エンジニアの平均年収は688.2万円となっています。国税庁による令和5年度の民間給与実態統計調査で日本の給与所得者の平均年収は460万円となっていることを考えると、電気機器技術者は平均よりもかなり高い年収の職業だといえます。
また、「年齢別の年収グラフ」を見ると、25歳~29歳で500.8万円、35歳~39歳で670.21万円のように年齢とともに上昇していき、ピークは50歳~54歳の841.26万円です。65歳~69歳でも543.29万円とかなり高くなっており、高齢になっても一定の収入が得られる仕事です。
このように、電気・電子エンジニアは年収面で大きなメリットのある仕事といえるでしょう。
他のエンジニア職との比較
電気・電子エンジニアの年収は、他のエンジニア職と比較するとどれくらいの水準なのでしょうか。以下では、職業情報提供サイトの情報をもとに、他のエンジニア職と年収を比較してみました。
職種 | 年収 |
---|---|
電気・電子エンジニア | 688.2万円 |
機械設計エンジニア | 612.4万円 |
電子通信エンジニア | 558.3万円 |
半導体エンジニア | 688.2万円 |
他のエンジニア職と比較しても、電気エンジニアの年収は高いことがわかります。同じエンジニア職でも分野によって100万円以上の差が出ています。電気エンジニアは幅広い業界で需要が高いですし、専門性を求められるので年収が高くなっていると考えられます。
電気エンジニアの年収については以下で詳しく解説しています。
『電気設計エンジニアの年収とは?将来の年収、年収を上げる方法などを解説』
電気エンジニアの仕事内容
電気エンジニアの仕事は、製品やシステムの企画から開発、製造、運用に至るまでさまざまな業務を行います。ここでは、業務の流れに沿って電気エンジニアの仕事内容を詳しく解説します。
ヒアリング・調査
電気エンジニアは、クライアントや関連部署へのヒアリングと現状調査を行います。
ヒアリングを行うことで、製品に求められる性能や機能、実際にどのように使われるかといった具体的な要件を明確にすることができます。この段階で方向性が定まらないと、その後の設計や開発を適切に進めることができません。
製品を使うクライアントや社内の関連部署から、どのような用途で利用するのか、どんな場所で使われるのか、どのくらいの電圧や温度に耐える必要があるのか、あるいは既存製品のどんな点が課題になっているのかといった点を詳細に聞き取り、丁寧に調査しなくてはなりません。
ものづくりの最初の段階で行うヒアリングと調査の精度が、その後の設計や製造といった後工程の品質に大きく影響します。初期段階で正確な情報を漏れなく集めることが、プロジェクト成功の鍵を握っていると言えるでしょう。
企画・設計
ヒアリングの後には企画を行い製品のコンセプトなどの大枠を明確にするための企画や、製品の詳細な設計を行います。
企画や設計は、製品の基本方針や構造を具体化していく重要な工程です。使用部品や全体の構造、機能などの仕様を設計者が中心となって検討し、図面を描いて設計書を作成します。電気製品の動きや操作性、コスト、安全性などもこの段階で考えます。
企画と設計の精度が高まることで製品開発全体がスムーズに進行しますし、製品の出来を左右するので重要なプロセスといえます。
開発・検査・テスト
開発フェーズは電気製品の基板への実装を進め、試作機を製作する段階です。
開発業務では、必要な資材や機材の調達をするとともに、設計書をもとに製品の製作を行っていきます。電気回路の基板上への実装やソフトウェア制御、試作評価などを通じて、製品としての完成度を高めていきます。
そして、電圧や電流の値が設計通りか、異常な発熱はないか、電磁的なノイズは発生しないかなど、様々な観点から入念な検査やテストを行います。もし想定外の結果が出た場合は、原因を特定し、設計の見直しや部品の変更といった修正を加えて、品質基準を満たすまで繰り返します。
保守
電気エンジニアは、製品の出荷後、実際の使用現場で安定して動作するよう保守も行います。
どんなに優れた製品でも、実際の使用環境では予期せぬ不具合が発生する可能性があります。そんなときに、修理対応や不具合の解析、定期点検や部品交換の対応などを行うのです。保守が迅速かつ適切に対応することで、製品の品質維持やお客様からの信頼、メーカーへの評価を維持することにつながります。
また、故障を未然に防ぐために、定期点検や予防保守を行うこともあり、製品寿命や稼働率の向上に寄与します。
電気エンジニアが持っておいたほうがよい知識・スキル
電気エンジニアになるにはどのような知識やスキルが必要なのでしょうか。持っておいたほうがよい知識やスキルを解説します。
電気・電子工学の知識
電気エンジニアとしての業務を遂行するには、電気・電子工学の基礎知識が不可欠です。
電気製品やシステムの設計・開発・保守といった業務の多くは、電気・電子工学の理論に基づいています。回路設計や信号処理、電磁気学、半導体デバイスの動作原理などを理解していなければ、製品の品質や安全性を担保することは難しいでしょう。現場でのトラブルシューティングや仕様変更への対応でも、こういった知識がベースになります。
具体的には、電荷と静電気、電圧と電流の関係などに関する知識や、抵抗・コンデンサ・コイルなどの基本的な回路素子の働き、直流と交流の違い、さらにはトランジスタやダイオードの動作原理などの基礎知識は業務を行うために身につけておかなくてはなりません。
電気エンジニアとして活躍するには、電気・電子工学の知識をしっかりと身につけておくことが非常に重要です。
電気以外の知識
電気エンジニアとして働く上では電気だけでなく、機械や制御、ソフトウェアに関する知識も学んでおくのがよいでしょう。
現代の製品やシステムは、電気回路だけでなく、機械的構造や制御システム、組み込みソフトウェアといった複数の技術が融合して作られています。製品の開発に付随するこういった電気以外の要素を理解しておかなくては、製品の開発をスムーズに行うことが難しくなりますし、俯瞰的に製品の設計や開発をすることができないでしょう。また、トラブル対応などにおいても原因の特定、修理などを迅速に行うことができないかもしれません。
このように、電気以外の機械や制御、ソフトウェアなど電気以外の知識を身につけておくことは、製品の品質を高めるとともに設計や開発、保守などにプラスに働くので、学んでおくのがよいでしょう。
CADの操作スキル
電気エンジニアの業務では、CADによる図面作成スキルが必要になります。製品設計、開発の現場では、CADを用いた図面の作成・修正・共有が日常業務として発生するため、CADを使いこなせるかどうかで業務スピードや品質が大きく変わってきます。
電気エンジニアが利用するCADとしては2DCADや3DCADがあります。近年では、CADデータをそのままCAMや生産管理ソフトへ連携するケースも増えており、こういったソフトの操作スキルも身につけておくとよいでしょう。
CADの操作スキルは電気エンジニアにとって設計業務を円滑に進めるための基礎であり、業務効率と成果の質を左右する重要なスキルなので身につけておきましょう。
コミュニケーション力
電気エンジニアにはコミュニケーション力も必要です。電気エンジニアの仕事は1人で完結するものではなく、他部署や他職種と連携しながら進めることが多いです。
たとえば、機械設計担当者や製造チーム、営業や顧客との打ち合わせなど、さまざまな関係者との情報共有が必要になります。こうした場面で円滑な意思疎通ができないと、ミスや誤解が発生し、プロジェクト全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
相手の意図を的確にくみ取り、自分の考えをわかりやすく伝えるためのコミュニケーション力を身につけておきましょう。
『電気設計に必要な知識とは?就職・転職するためのポイントも紹介』
電気エンジニアに向いている人とは
電気エンジニアとして長く活躍するには、自分の特性と仕事の相性を見極めることが重要です。ここでは、電気エンジニアに向いている人の具体的な特性を紹介します。
ものづくりが好き
電気エンジニアに向いている人の特徴に、ものづくりが好きであることが挙げられます。
電気エンジニアの業務は回路の設計や機器の開発など、自らのアイデアを形にしていくプロセスが中心です。設計図をもとに機器が動作したときの達成感や、試行錯誤を経て完成させる楽しさは、ものづくりに対して興味や情熱がある人にとって大きなやりがいになるでしょう。
電気エンジニアの業務では細かい作業が続くこともありますが、アイデアを自分の手で形にしていく工程に喜びを見いだせる人、ひとつひとつ作り上げていくことが好きな人には電気エンジニアに向いているといえます。
職人気質
電気エンジニアに向いている人のひとつの特徴としては、職人気質を持っていることです。
電気エンジニアの業務は高い精度や緻密さが求められるため、細部にまでこだわり、粘り強く作業を続けなくてはなりません。製品の設計・検証・改良といった工程では、ミリ単位の調整が結果を左右する場面もあり、正確性や安定性を重視する姿勢が重要になります。まさに職人気質が活きる場面が多くあるのです。
丁寧な仕事を地道に続けられる職人気質を持つ人は、電気エンジニアとしての適性が高いといえるでしょう。
仕事にやりがいを感じたい
電気エンジニアは、仕事にやりがいを感じたい人にも適した職種です。電気エンジニアの仕事は社会インフラや先端技術の基盤を支える重要な役割を担っており、自分の手がけた技術が形となって社会に貢献する実感を得やすい職種です。設計・開発・保守など幅広い業務の中で、問題解決や技術革新に直接関わることで、大きな達成感を得ることができるでしょう。
電気エンジニアが生み出した製品が電気効率の改善や社会問題の解決などに役立つことがありますし、多くの人の生活に影響を与える可能性もあります。自身の成果が目に見える形で反映されやすい仕事であるので、やりがいを感じやすいともいえるでしょう。
このように、やりがいを大切にしながら働きたいと考える人にとって、電気エンジニアは適した職種だといえるでしょう。
未経験から電気エンジニアを目指すには
現在電気エンジニアは人材不足であり、企業のなかには未経験可の求人などもあります。未経験から電気エンジニアを目指すときには、どのような方法があるのでしょうか。
学校に通う
未経験から電気エンジニアを目指す場合、学校に通って基礎知識を身に付けてから、就職を目指すのもよいです。大学や高専、専門学校では体系的にカリキュラムが組まれており、イチから電気エンジニアに必要な基礎知識を学ぶことができます。
学校では、回路設計や制御理論、電気回路、電磁気学、電子機器の構造など幅広い分野を学ぶことで、電気エンジニアとして働くのに必要な知識を得られます。さらに、計測機器を用いた計測実習やCADやシミュレータの操作方法の実習などを行っている学校などもあり、実践的なスキルなども得ることができるでしょう。
ただし、学校に通うためには一定の期間と費用が必要になります。
エージェントに相談する
未経験から電気エンジニアを目指す際には、エージェントに相談するのも有効な方法です。
転職エージェントは電気エンジニアに関する情報を多く持っているので、未経験者向けの案件やキャリア形成に役立つ情報を提供してくれます。業界の知識や転職市場の動向を把握しており、個々のスキルや希望に合わせた最適な求人を紹介してくれるでしょう。
また、面接のアドバイスや履歴書の添削、条件交渉のサポート、内定後のフォローも行ってくれるエージェントなどもあり、未経験から電気エンジニアを目指す際の不安や疑問を解消することができるはずです。転職エージェント利用者は非利用者よりも年収が高くなるというデータもあり、年収面でもメリットが得られるでしょう。
電気エンジニアへの就職・転職ならベスキャリ機電で
電気エンジニアは、さまざまな電気製品の設計や開発、製造に携わる仕事です。やりがいも大きいですし、工学的なモノづくりが好きという人におすすめの職業といえます。電気エンジニアを目指す際には、転職エージェントを利用することでより効率的に転職をすることができます。
「ベスキャリ機電」は、電気・機械系に特化した転職エージェントです。15年以上の運営歴があり全国の企業とのネットワークを築いていることから、大手メーカーからベンチャーまで、非公開求人を含む幅広い求人を保有しています。
一人ひとりに専任のアドバイザーが付き、キャリアアドバイスや面接の指導、職務経歴書の添削など手厚いサポートを行っています。研修を行っている未経験可の求人情報なども提供していますので、電気エンジニアを目指している方はぜひベスキャリ機電にご登録ください。