半導体工場での仕事の内容とはどのようなものなのでしょうか。半導体工場の需要は高まっていることで求人なども多くなっており、半導体工場での仕事が気になっている人も多いと思います。
2024年には半導体の受託生産で世界最大手である台湾のTSMCが、
日本では初めて熊本県に半導体工場を建設しました。日本政府も半導体分野に力を入れていることがわかります。
今回は、半導体工場の仕事内容や工場における職種、年収、向いている人の特徴について解説します。未経験から半導体工場で働く方法なども解説しているので、半導体工場での仕事に興味のある人は参考にしてください。
目次
半導体工場での仕事とは
半導体工場での仕事とはどのようなものなのでしょうか。半導体工場の役割は半導体の製造です。品質がよく仕様通りの半導体を作ることが、半導体工場の仕事なのです。
半導体はパソコンやスマートフォン、家電製品、自動車など、多くの製品に組み込まれており、必要なだけの半導体が確保できなければ幅広い産業に影響が及んでしまいます。そのため、半導体工場における半導体の製造は非常に重要な役割を担っています。
半導体の製造では以下のように多くの工程が行われます。
工程 | 工程内容 |
---|---|
マスク製造 | 半導体の設計図をガラス基板に描き、素材に転写するフォトマスクをつくる工程 |
ウェーハ製造 | インゴットを薄く切断し、ウェーハをつくる工程 |
前工程 | ウェーハ上に半導体チップをつくる工程 |
後工程 | ウェーハから半導体チップを切断し、製品として組み立てる工程 |
それぞれの工程において精密な作業が求められるため、半導体工場での仕事においては高度な技術や知識が求められます。
半導体工場の仕事の需要
半導体工場における仕事の需要はどれくらいあるのでしょうか。
半導体工場の現在の需要
まず、半導体工場の需要について見てみます。総務省の「令和5年版 情報通信白書」によると、日本の半導体市場(出荷額)は、2012年から2022年の10年間で増加しており、2022年には約80億ドルにまで達しています。
さらに、この市場拡大に伴い、半導体関連エンジニアの求人数も増加しているといったデータも出ています。このデータでは、2013年から2023年の10年間で求人数が12.8倍に伸びており、半導体業界における人材の需要が急速に高まっていることがわかります。
半導体工場の需要は将来も続く?
現在、半導体工場の需要が高まっていることはわかりましたが、半導体工場の需要は将来も続くのでしょうか。総務省が発表した半導体市場の動向に関するデータによると、世界の半導体市場(出荷額)は2015年以降増加傾向にあり、2022年には12兆5,493億円(前年比32.1%増)になったとされています。
さらに、この半導体市場の内訳としては、ディスクリート半導体がもっとも多く、その次にMCU、画像センサ、MEMSセンサが続く形となっています。ダイオードやトランジスタなどに使用されるディスクリート半導体は、電気自動車の普及などによってその需要が高まっていると考えられます。
こうした状況を踏まえると、半導体工場の需要は引き続き拡大すると考えられます。
半導体工場の求人が多い地域・部門は?
半導体工場の需要は続きますが、求人も増加するのでしょうか。そして、工場の求人が多い地域や部門はあるでしょうか。
現在、国内の半導体工場の求人は増加傾向にあります。特に、北海道・東北、九州・沖縄、関東の3地域では、2022年度の求人数が大幅に増えているというデータが出ています。2017年と比較すると、北海道・東北と九州・沖縄は約5倍、関東は約4倍の伸びを記録しました。半導体工場の求人を探す場合には、これらの地域で探すのがよいでしょう。
また、部門別に見ると「材料開発」の求人が最も多く、次いで「品質管理・品質保証」「製造装置・部品開発」の求人が多くなっています。特に品質管理・品質保証の求人は2021年度から2022年度にかけて急増しており、グローバルで定められた標準化への対応が求められていることが背景にあるとされています。
このように、半導体工場関連の求人ニーズは年々高まっています。今後もこの傾向は続くと考えられ、半導体工場での仕事を考える人にとっては大きなチャンスとなるでしょう。
半導体工場における職種一覧
半導体工場にはさまざまな職種が存在します。それぞれの仕事内容、特徴を紹介します。
オペレーター
オペレーターとは、半導体製造において機器を操作、制御、管理をするとともに材料の管理などをする職種です。ウェーハの製造、回路パターンの形成、検査などで機械の操作を行います。
業務ではマニュアルに基づいて部材を機械にセットし、装置を起動させ作業を行い、装置の調整なども行います。機械の稼働中は状況を監視しながら異常がないかを監視します。
基本的にはマニュアルに沿って作業を進めるため、特別な専門知識がなくても対応できる場合が多いですが、ウェーハ加工など一部の工程では高度な技術が求められることもあります。また、機械を使用して半導体の検査業務も担当します。
組立工
組立工とは、半導体の組み立て作業を担当する職種です。
半導体製造の工程では、回路を形成するためにさまざまな部品を正確に配置する必要があります。組立工は、IC回路をウェーハと呼ばれる半導体の基盤となるパーツから切断し、IC回路から不要な部分を切り取ったり、保護用の薄い膜を貼ったりといった作業を行います。さらに、製品への半導体の組み込み作業も担当します。
組立工の業務にはマニュアルが用意されており、それに従って作業を進めればよいので、未経験者でも始めやすい職種です。ただし、手作業による工程では、経験の有無によって品質や作業スピードに差が生じることがあるため、習熟が求められます。
製造技術者
製造技術者は、製品の製造工程を設計・開発するとともに、評価や調整などを行います。半導体製品を製造する工程では使用する原材料や装置条件などを見直し、品質の改善を行うことが求められますし、製造コストを下げるために効率的な運用を行うことが求められます。
業務では製品の製造工程を設計し、そのプロセスに基づいて試作を行い、試作品の品質や性能を評価し、不具合が発生していないかを確認します。不具合が見つかった場合はその原因を詳しく分析し、製造条件の調整や工程の見直しを行います。
一方で、新製品の量産化を進める際には、製造プロセスの変更点を精査し、新技術の導入が求められる場合は研究開発を実施します。その際、最新の技術情報を収集し、研究論文などを参考にしながら、量産化に適した原材料の選定や試作・評価を行うことが重要です。
検査・検品
検査・検品は、半導体製品の品質を保証し、不良品を取り除く仕事です。ウェーハ製造時や回路作成時、半導体チップなどの検査・検品を行います。半導体の品質は実際の使用時の性能に直結するため、この工程は非常に重要となります。
検査や検品では外観検査や電気特性検査などを専用の機器を利用して行います。人間の目では識別できない微細な欠陥も、専用の顕微鏡などを用いて正確に検査します。
検品作業には詳細なマニュアルがあるものの、作業には高度な集中力と熟練度が求められます。
半導体エンジニア
半導体エンジニアとは、集積回路(IC)がどのような処理を行うかや半導体チップのレイアウト設計を行うとともに、半導体製造のプロセスの最適化などを担当します。
半導体エンジニアの業務は、回路設計を行う「設計エンジニア」、製造プロセスの最適化を担う「プロセスエンジニア」、機器の保守・管理を行う「メンテナンスエンジニア」など、役割ごとに専門性が異なります。
半導体の性能向上や省エネルギー化が求められる中で、専門的な知識と高度な技術が必要とされます。半導体エンジニアの仕事内容については、以下の記事で詳しく紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
『半導体エンジニアってどんな仕事?仕事内容、やりがい、必要な知識を紹介』
半導体工場の仕事の平均年収
半導体工場の需要や仕事内容について解説してきましたが、半導体工場で働く場合にはどれくらいの収入が得られるのでしょうか。
職業情報提供サイトによると、半導体工場での半導体組立設備オペレーター、 半導体組立工などの平均年収は約414万円となっています。令和5年賃金構造基本統計調査によると、製造業全体の平均年収の約397万円(平均賃金306,000円×12+賞与1カ月分=3,978,000円)と比較すると若干高いことがわかります。
ただし、半導体工場の職種にはさまざまなものがあり、職種によっては年収には大きな差があります。たとえば、半導体エンジニアの平均年収は約688万円となっています。この差は、半導体エンジニアは高度な専門知識と技術を必要とするからでしょう。
半導体工場でより高い年収を目指すのであれば、専門スキルを身につけてエンジニア職につながるキャリアを重ねるのがよいでしょう。
『半導体エンジニアの年収とは?将来性や高収入を目指す方法、必要な能力を解説』
半導体工場で働くのが向いている人の特徴
半導体工場はどのような人に向いているのでしょうか。向いている人の特徴を紹介します。
長時間勤務の代わりに休日増が希望
長時間勤務をしてもよいけれども、休日の日数を増やしたいという人は半導体工場への就職が向いている可能性があります。
半導体工場は24時間稼働していることが多く、スタッフはシフト制で交代しながら工場を稼働させ続けています。工場に勤務する場合には、8時間勤務の3交代制や12時間勤務の2交替制で働くことが多いです。
8時間勤務の場合は、他の工場やサラリーマンと同程度の休日数となりますが、12時間勤務などでは1日の労働時間が長くなる代わりに年間の休日数が多くなります。1日あたりに働く時間は増えますが休日数を増やすことができますし、まとまった休日を確保しやすいでしょう。体力に自信がある人や、1日の勤務時間の長さよりも休日を重視する働き方を希望するなら半導体工場が向いているかもしれません。
ものづくりが好きな人
半導体工場の仕事は、ものづくりが好きな人にも向いています。
半導体は精密機器を用い、複雑な工程を経て作られます。こういった高度な製品をイチから作り上げるということは、ものづくりの楽しさを感じられるはずです。自分が作った製品が世の中で広く使われることに喜びを感じるような、モノづくりを好きな人はやりがいを感じられるでしょう。
また、半導体工場での仕事では多くの工程が必要であり、地道な作業の繰り返しが必要になります。根気よく試行錯誤を繰り返すことが求められるので、モノを作ることに情熱を持てるような人でなくては負担に感じてしまうかもしれません。多くの知識も必要になるので、モノづくりが好きで努力をいとわない人でなくては務まらない可能性があります。
このように、ものづくりが好きという人は半導体工場で働くのに向いているでしょう。
ルーティンワークが得意
半導体工場の仕事は決められた作業を正確に繰り返すことが求められるため、ルーティンワークが得意な人にも向いています。
半導体工場の生産ラインにおけるオペレーターや組立、検査などの仕事は、マニュアル化された単純作業が多くなります。ウェーハ製造やパターン形成、検査などでは、多くの半導体に対してマニュアルによって決められた作業を繰り返していきます。
このように同じ作業を繰り返すことが基本となるため、黙々と作業を進めるのが好きな人や、ルーティンワークの中で効率的な進め方を工夫することを楽しめる人は働きやすいでしょう。また、半導体工場での業務は正確性が求められるため、細部までこだわることが得意な人や、つい作業に没頭してしまうような人には適した環境です。このように、ルーティンワークが得意で長時間の作業にも集中力を維持できる人に向いているでしょう。
細かい作業が得意
半導体工場の仕事は、細かい作業が得意な人にも向いています。
オペレーターや組立、検査・検品の作業はもちろん、エンジニアや製造技術者など、半導体工場での業務においては、細かな調整や確認作業が欠かせません。半導体は精密機器ですし、その回路は微細なものとなっています。
だからこそ、ウェーハのパターン形成や配線のレイアウト設計などにおいては、細かな作業が必要ですし、微細な異常でも見逃さない検査などを行わなくてはなりません。専用の機器を使う場面もありますが、手作業での調整や確認が必要な場合もあり、細かな作業が得意な人が求められるでしょう。
未経験から半導体工場で働く方法
半導体工場での仕事に向いている特徴に該当する人は、ぜひ検討してみてください。半導体工場での仕事は未経験でも目指すことが可能です。ここでは未経験から働く方法を紹介します。
学校に通う
未経験から半導体工場で働く方法のひとつに、大学や専門学校などの学校に通うという方法があります。
半導体工場の仕事は資格や学歴がなくても採用してもらうことが可能ですが、半導体エンジニアなどのように知識やスキルが求められる職種でのキャリアを考えるなら、大学や専門学校に通うのがよいでしょう。
こういった学校では、半導体の基礎知識や電子回路、材料工学、製造プロセスなどを体系的に学ぶことができます。クリーンルームでの作業方法や最新の半導体製造装置の操作を学ぶ実習がある学校もあり、実践的なスキルを身につけることが可能です。
さらに、企業との共同研究やインターンシップの機会がある学校も多く、業界とのつながりを持つことができる点もメリットです。未経験からでも学校に通い、専門的な知識やスキルを学ぶことで、エンジニアや製造技術者としてのキャリアを築きやすくなるでしょう。
求人サイトに登録する
未経験から半導体工場への転職を目指すなら、求人サイトを利用するのもよいでしょう。求人サイトには多くの半導体工場の求人が掲載されていますし、未経験可の正社員・派遣の求人を扱っているものも多いです。
こういったサイトを利用すれば未経験からでも半導体工場で経験を積みスキルを身につけることができます。正社員へのハードルが高いと感じる場合には、まず派遣求人からスタートするのもよいでしょう。
ただし、求人サイトでは応募や面接の調整、企業とのやりとりを自分で行わなくてはなりません。半導体工場の採用で評価される面接の対応や職務経歴書の書き方などは自分で考えないといけません。サポートが少ない分、情報収集や対策をしっかり行いながら進めることが重要です。
転職エージェントに相談する
未経験から半導体工場の仕事を探す際は、転職エージェントの利用がおすすめです。転職エージェントは多くの求人を扱っており、キャリアアドバイザーが履歴書の添削や面接対策をサポートしてくれる場合もあります。転職エージェントによっては、多くの半導体工場の求人情報を持っていることがあり、未経験可の求人なども紹介してもらえる可能性があります。
また、年収交渉などを行ってくれるのもおすすめできる理由です。実際に、転職エージェントを利用した人は利用しなかった人と比べて、転職時の年収アップ平均額が9.2万円高いというデータもあります。未経験から半導体工場に就職したいという人は、エージェントに相談してみてください。
半導体工場への就職・転職はベスキャリ機電で
半導体工場での仕事には様々な職種がありますし、求められる能力も様々です。ただ、マニュアルに沿って行う仕事など未経験可の求人も多いですし、研修を行ってイチから育成をしている企業も多いです。半導体工場の仕事に興味がある人は、未経験でも応募をしてみることをおすすめします。
機電分野に特化した転職エージェントである「ベスキャリ機電」では、未経験可の半導体工場の求人を豊富に取り扱っています。15年以上の運営実績があり、研修付きの求人や非公開求人など、幅広い選択肢を提供しています。
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