生産技術職の年収はどの程度になるのでしょうか。生産技術職は、就職する企業の規模や業界によって年収が変わってきます。だからこそ、これから生産技術を目指そうかと考えている人のなかには、生産技術職の年収について具体的なイメージを持つことができないという人も多いはずです。
この記事では、生産技術職の仕事内容や労働環境を解説するとともに、年収について詳しく解説します。他の職業との年収の比較や、高い収入を得るために必要なスキルなども紹介します。生産技術職への就職や転職を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
生産技術とは
まずは生産技術職の仕事内容と労働環境について解説します。
仕事内容
生産技術職は製造業におけるエンジニア職のひとつであり、製品の生産を円滑に進めるために生産計画の立案や生産体制の企画・設計、生産工程の最適化などを行う職種です。
製造業では、市場調査の結果や営業情報をもとに、顧客ニーズおよび製品の生産数、生産スケジュールが決定されます。生産技術者はこれらの決定に沿ったうえで、高い生産性を確保するために、関係部署と連携しながら設備の導入や資材の確保、予算の調整を行います。導入設備の費用対効果の検討や、生産工程が生産計画に沿っているかどうかの管理も行います。
生産技術職は、効率的な生産体制の構築と品質管理を担う重要な職種であり、企業の競争力を高める役割を担います。
労働環境
生産技術者の勤務先は各メーカーの工場などです。勤務時間をはじめとする労働条件は、勤務先の企業の規程により異なります。厚生労働省の職業情報提供サイトを見ると、就業形態としては正社員が多いですが、派遣社員やパートタイマーなども働いています。
生産技術者は製品の生産工程を管理する役割を担うため、トラブルが発生した際には迅速に対応しなければなりません。そのため、予期せぬ残業が発生することもあります。
また、製品の納入後に品質について顧客から指摘を受けた場合、原因調査や改善策の検討に対応する必要があります。その際は、関係部署と連携したうえで迅速な対応が求められます。
生産技術の年収
次に、生産技術職の年収についてみていきましょう。
平均年収
職業情報提供サイトのデータによると、生産技術職の2023年度の平均年収は688.2万円となっています。国税庁が発表した日本人の給与所得者全体の平均給与は460万円なので、生産技術職は給与水準が高い仕事であるといえるでしょう。
また、職種別の平均年収ランキングでは、「機械・メカトロ・自動車」分野の生産技術職が760.2万円で13位にランクインし、「素材・化学・食品・バイオ」分野の生産技術職は649.2万円で28位です。これらのデータから、あらゆる職種のなかでもこれらの分野の生産技術職は高い年収を得られる職業といえるでしょう。
他のエンジニア職との比較
生産技術職の年収は、製造業の他のエンジニア職と比較した場合にはどれくらいの水準なのでしょうか。職業情報提供サイトによると生産技術職の平均年収は688.2万円ですが、他のエンジニア職は以下のような年収となっています。
機械設計技術者 | 612.4万円 |
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電気通信技術者 | 558.3万円 |
半導体技術者 | 688.2万円 |
電子機器技術者 | 688.2万円 |
生産技術職の年収は、機械設計技術者や電気通信技術者よりも高く、半導体技術者や電子機器技術者の平均年収688.2万円と同じ水準となっています。生産技術職は、他のエンジニア職と比較しても、同程度の年収もしくは高い年収を得られる職種といえるでしょう。
年齢別の年収
次に職業情報提供サイトの「年齢別の年収グラフ」をもとに、年齢別の年収を見ていきます。生産技術職の年収は年齢とともに上昇し、50~54歳で最も高くなり、平均年収は841.26万円までになります。また、65~69歳でも543.29万円であり、高齢になっても高い年収が期待できることがわかります。
さらに、職種別平均年収ランキングを見ると、20代ではランク外ですが30代では9位になっていることから、20代から30代で大きく年収が上がることがわかります。40代や50代でも17位に位置しており、長期的に高い収入を維持できる職種といえるでしょう。
給与分布
次に、「所定内給与額別の人数割合」のグラフをもとに、どれだけの給与をどれくらいの人が得ているかをみていきます。
この生産技術職の給与分布をみると、月給40万円~44.9万円の層が最も多く全体の13.1%を占めています。次いで45万円~49.9万円の層が8.39%、50万円~54.9万円の層が6.09%となっています。60万円~69.9万円以上の月給を得ている人も6.7%存在しています。
生産技術職の給与は40万円台がボリュームゾーンですが、経験やスキル次第でさらに高い収入を目指せることがわかるでしょう。
将来の生産技術の年収は?
安定した収入を確保するためには、将来を見据えることが大切です。生産技術職の将来性について解説します。
将来の生産技術の重要性
製造業において生産技術はどれほど重要なのでしょうか。製造基盤技術実態等調査によると、「競争力の源泉として重視しているもの」として、「生産技術・生産管理・品質管理」を挙げる企業がもっとも多い結果となりました。つまり、生産技術職は企業が重要視している部門であるということがわかります。これは企業規模別で見ても同じなので、大企業や中小企業でも変わらず重要な分野とされているとわかるでしょう。
というのも、製造業ではブランドやビジネスモデルだけでは高い利益率を確保しづらいですし、同じようなものを同程度の価格で販売しながらも利益率を高めるには、生産性の高い設計や購買・調達を含めた生産技術の強化が必要になるからと考えられるからです。
さらに、製造業の調達実態調査では、「近年経営インパクトが大きくなっている部門について」のアンケートでは、「購買・調達」が29.4%、「生産管理」が25.4%、「設計・開発」が22.9%と、生産における上流工程の役割が増していることがわかります。
生産技術の将来の年収
生産技術の将来の年収はどのようになるのでしょうか。経済産業省の調査によれば、製造業の94%の企業が人手不足を認識しており、3割以上の企業ではビジネスに影響が出ていることが明らかになっています。この状況は今後も続くと予想され、優秀な人材を確保するために報酬は高まるでしょう。
実際、経営者を対象とした調査では、人手不足の対策として「給与や待遇の見直し」を実施すると答えた割合が39.1%で最も高い結果となっています。特に製造業では人材確保のために賃金の引き上げや労働環境の改善が進められており、生産技術者の年収にもプラスの影響を与えると考えられます。
このような結果から、将来の生産技術職の年収は高まることが期待できるでしょう。
生産技術で高収入を得るために必要なスキル
生産技術職として高い収入を得るためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。ここからは、生産技術職の価値をさらに高めるスキルを紹介します。
デジタルの知識・スキル
生産技術職として高い収入を得るためには、デジタル技術に関する知識とスキルが重要です。経済産業省の調査でも、「特にデジタル人材を必要とする部門」として、「製造技術・生産管理」は61.3%ともっとも高くなっています。
現代の製造業においては、デジタル技術を活用して生産の合理化を行うことが重要ですし、新しいビジネスモデルの構築などでデジタルの知識やスキルが必要とされると考えられます。AIやIoTなどの活用、ビッグデータの分析などが重要になっているとも考えられます。
このように、デジタルの知識やスキルを備えた人材は生産技術において高く評価されるはずです。
工学の知識
生産技術職として高い収入を得るためには、工学の機械工学や電気工学、経営工学などの知識も必要です。
多くの企業は、生産技術職に工学の分野における基礎知識を求めています。これは、製造工程の設計や改善において、専門的な工学知識が求められるためです。生産技術の仕事においては、効率的な生産ラインを構築するために機械工学や電気工学の知識が必要ですし、生産効率や利益率向上、調達、ロジスティクスまで踏まえるためには経営工学の知識などがあったほうがよいのです。
このように、工学の知識を身につけることで生産技術職として高い収入を得ることにつながるはずです。
コミュニケーション力
生産技術職として高い収入を得るためには、他部門と円滑に連携できるコミュニケーション力も必要になります。
生産技術者は、製品を安定的かつ効率的に生産するため、設計や品質管理、製造部門など多くの関係者と連携しながら業務を進めます。そのため、適切な情報共有や円滑な意思疎通ができるコミュニケーション力が求められるのです。例えば、新しい生産設備を導入する際などは、設計部門と設備要件を調整し、現場のオペレーターと運用上の問題点を擦り合わせる必要なども出てくるでしょう。
このように、関係者と連携しながら効率的に業務を進めるためのコミュニケーション力は、生産技術職にとって重要なスキルです。
マネジメントスキル
生産技術職として高い収入を得るためには、マネジメントスキルの習得もおすすめです。生産技術の仕事は、製造業における生産プロジェクトを滞りなく進めることが仕事となります。そのために、スタッフの配置や工程のマネジメント、スケジュール管理やリスクマネジメントなど、全体を見て管理をするスキルが必要になります。
生産技術のマネジメントスキルに関連する資格として、「生産技術者マネジメント認定」があります。こういった資格の取得により、マネジメントスキルを証明することができ、年収アップのチャンスを広げることができるかもしれません。
生産技術職として高い収入を目指すなら、マネジメントスキルを身につける必要があるでしょう。
生産技術の年収を上げる方法
最後に、生産技術者として年収を上げるための方法を解説していきます。
リスキリングを行う
生産技術で年収アップを目指すには、リスキリングを行うのがおすすめです。
工学の知識やマネジメントのスキルについて学ぶのもよいですし、安全衛生やコスト管理のスキルを習得するなどもよいでしょう。生産技術者は製造現場の作業や生産工程に関わる業務を担当します。その際、安全衛生の管理が求められることが多いです。また、効率的な生産システムを設計するには、コスト管理などの知識も必要になります。
製造現場での安全対策を強化すれば労働環境の向上につながりますし、コスト管理のスキルを磨くことで利益率の向上に貢献できます。これらの能力が評価されれば、昇給や昇進の可能性も高まるでしょう。リスキリングでこういった知識やスキルを学ぶのが有効でしょう。
資格を取得する
生産技術者として年収を上げるためには、資格の取得も有効です。企業のなかには資格の取得に報償を与えるところがあります。また、資格の取得により特定の知識やスキルを持っていることを証明でき、企業からの評価が高まり昇給することも期待できます。
生産技術者としての知識やスキルを証明する資格には、以下のようなものがあります。
- 機械保全職種(特級、1級~3級)
- プレス機械作業主任者
- 電気主任技術者(第1種~第3種)
- IE士・IE士補
これらの資格の取得により、設備の保全や生産工程の改善、品質管理の分野における専門性を高めることができるでしょう。生産技術職として年収アップを目指すなら、こういった資格の取得を検討してみるのがおすすめです。
技術部門で経験を積む
生産技術職として年収を上げるためには、技術部門での経験を積むことも効果的です。
生産技術職には、製造現場や生産設備の設計など、多様な知識と経験が求められます。特に、生産システムの開発や工程の設計、設備の保全・改良などは、実務を通じて習得する必要があります。そのため、企業は設計部門などの技術職を経験した人材を生産技術に配属することが多いです。
例えば、金属プレス加工の分野では、設計部門が開発した製品を効率的に量産するため、生産技術者が工程や設備を最適化します。この際、設計に関する知識や加工技術の理解が必要になります。だからこそ、設計職などの技術部門で一定の経験が必要になるのです。
技術部門での経験を積むことで、専門知識を高め、より高い収入を得るチャンスを広げられるはずです。
転職する
生産技術者として年収を上げるためには、転職も視野に入れてみてください。特に現在の職場で昇給の見込みがない場合は、より良い条件の企業を探すことで年収アップを実現できるかもしれません。
また、転職でより年収を高めるためにはエージェントの活用がおすすめです。エージェントは転職希望者と企業の間に立ち、スムーズなマッチングを支援してくれます。エージェントは多くの転職者を見ているので適正な年収を知っていますし、年収の交渉も行ってくれます。転職エージェント利用者は、非利用者と比べ転職時の年収アップ平均金額が9.2万円高いとのデータもあるので、ぜひ利用してみてください。
エージェントを利用することで、より良い条件の企業を見つけられるかもしれません。年収アップを目指すなら転職を検討してみましょう。
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生産技術者の年収は他の職種と比べて高い傾向にありますが、さらなる年収アップを望む場合は、リスキリングや資格取得、実務経験の積み重ねが重要です。現在の職場での昇給が難しい場合は、転職が有効な選択肢となるでしょう。
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