「自動車エンジニアって年収はどれくらい?」「将来性はある?転職する価値はある?」などのように疑問を持っている人もいると思います。実際、自動車業界はEV化や自動運転技術の進展により大きく変化しており、それに伴いエンジニアの年収や需要も変化しています。将来性や収入面をしっかり把握しないままキャリア選択をしてしまうと、思っていたものと違うと後悔をしてしまうかもしれません。
そこでこの記事では、自動車エンジニアの平均年収や将来の年収、年収における注意点、年収アップの方法を詳しく紹介していきます。
目次
自動車エンジニアとは
自動車エンジニアとはどのような仕事なのでしょうか。仕事内容と需要をまずは説明しておきます。
仕事内容
自動車エンジニアの仕事は、自動車の設計・開発・製造・評価に関わる技術的な業務を担当することです。自動車エンジニアの仕事内容は多岐にわたりますが、大きく分けると以下のように分けられます。
分野 | 仕事内容 |
---|---|
設計・開発 | エンジン、トランスミッション、シャーシ、車体構造、電装部品など、車の各パーツを設計・開発する仕事です。特に近年は、電気自動車(EV)や自動運転技術の進化により、電子制御やソフトウェア開発の重要性も高まっています。 |
生産技術 | 設計された車両を効率よく大量生産するための工程設計や生産設備の導入・改善を行います。コスト削減と品質向上を両立させるための技術的な工夫が求められます。 |
品質管理 | 完成した製品が設計どおりに動作するか、また安全性や耐久性などが基準を満たしているかをチェックする業務です。不具合の原因究明や改善提案も含まれます。 |
研究開発 | 未来の自動車技術を生み出すための基礎研究や応用技術の開発を行います。燃料電池やAIによる走行制御、次世代モーターの開発などがこの分野に含まれます。 |
自動車エンジニアの需要
自動車エンジニアの需要はどのような状態なのでしょうか。日本自動車工業会のデータによると、自動車製造業は全製造業の製造品出荷額のうち17.4%を占めており、日本の産業のなかで重要な位置を占める産業となっています。そのため、自動車の開発・生産を支える自動車エンジニアの役割も重要になっています。
令和2年の国勢調査をもとにしたデータでは全国の自動車技術者は137,470人とされていますが、有効求人倍率は1.95と高く業界全体としては依然として人材不足の状況が続いていることがわかります。
特に、EVや自動運転、コネクテッドカーなどの新技術の登場により、専門知識やスキルを持つエンジニアの需要は年々高まっています。技術革新が加速する中で、自動車エンジニアは今後さらに多様な分野で活躍が期待される職種といえるでしょう。
自動車エンジニアの年収
自動車エンジニアの年収はどれくらいなのでしょうか。
平均年収
まず、自動車エンジニアの平均年収について解説します。
令和6年の賃金構造基本統計調査をもとにした厚生労働省のサイトでは、自動車エンジニアの平均年収は700.6万円とされています。国税庁が発表している令和6年の平均給与の461万円と比較すると、自動車エンジニアの平均年収は高水準であることが分かります。
これは、自動車業界が高度な専門知識や技術力を求められる分野であり、特にEVや自動運転技術といった最先端技術の開発が進む中で、エンジニアの需要が高まっていることが背景にあります。自動車エンジニアは今後も高い年収を得られる職種といえるでしょう。
企業別年収
自動車メーカーは、開発・生産・販売といった工程に莫大なコストがかかる産業であるため、一定の資本がなければ安定的な経営を維持するのは困難です。そのため、自動車メーカーの数は限られており、特に日本国内では大手数社が市場の大部分を占めています。
ここでは、「上場企業における自動車業界の平均年収ランキングTOP10」をもとに、自動車メーカーの上場企業の年収を紹介します。ランキングデータは以下です。
順位 | 企業名 | 平均年収(万円) |
---|---|---|
1位 | トヨタ自動車株式会社 | 895.4 |
2位 | 日産自動車株式会社 | 850.9 |
3位 | 本田技研工業株式会社 | 822.1 |
4位 | ヤマハ発動機株式会社 | 812.2 |
5位 | デンソー株式会社 | 811.4 |
6位 | 株式会社豊田自動織機 | 792.9 |
7位 | いすゞ自動車株式会社 | 777.0 |
8位 | NOK株式会社 | 744.6 |
9位 | 三菱自動車工業株式会社 | 743.7 |
10位 | 川崎重工株式会社 | 736.5 |
このように、自動車業界の上場企業における平均年収は、全体的に700万円を超えており、他業種と比較しても高水準であることがわかります。特にトヨタや日産、本田技研工業といった大手企業は、800万円台の年収を誇っており、業界内でも頭ひとつ抜けた待遇といえます。
なお、これらの数値は全職種の平均年収であるため、職種や経験年数、勤務地などによって実際の年収には差があります。ただし、開発や設計といったエンジニア職は専門性が高く、企業にとって重要なポジションであることから、比較的高い年収が期待できる傾向にあります。
出典:SalesNow DB(https://salesnow.jp/db)
自動運転エンジニアの年収
自動運転の開発が加速する中で、自動運転エンジニアの需要は引き続き非常に高く、年収面でも他の技術職と比較して優遇される傾向にあります。
「日本国内における自動運転関連求人数の最新調査(2019年2月末時点)」では、「30代で年収700万〜800万円程度のエンジニア採用の案件が目立ちました」とされています。同調査によると、自動運転エンジニアの年収は従来の自動車開発エンジニアと比較して高い傾向があり、特にAIや画像認識、センサー制御といった先端技術を扱うポジションでは、より高い報酬が提示されるケースが増えているとのことです。
実務経験や専門スキルに応じて、年収900万円を超える案件も珍しくなく、マネジメント経験やプロジェクトリードの実績により、1,000万円以上のオファーが出ることもあるはずです。
将来の自動車エンジニアの年収は?
では、将来の自動車エンジニアの年収はどのようになるのでしょうか。
将来も高収入が期待できる
将来的にも、自動車エンジニアは高収入が期待できる職種といえるでしょう。まず大前提として、車というプロダクト自体が私たちの生活から完全になくなることは考えにくく、一定の需要が今後も安定して存在し続ける点が挙げられます。特に、次世代モビリティの開発が進む中で、従来の自動車開発とは異なる専門性が求められることから、技術者の価値はさらに高まると見られています。
また、日本国内では労働力人口が年々減少しており、特に製造業や工学系人材の確保が課題になっています。経済産業省の「ものづくり白書(2024年版)」でも、人手不足が自動車業界全体における深刻な問題として挙げられており、その対策として賃金の引き上げや待遇改善が検討されています。こうした背景から、技術者に対する報酬が上昇する可能性は高く、特に高スキル人材にはこれまで以上の評価が与えられることが期待されます。
実際に、トヨタ自動車では2027年に平均年収が1,000万円を超えるという予測もあり、大手企業を中心に給与水準が大きく見直される動きが出てきています。将来の自動車エンジニアは、専門性と実務経験を積むことで、高収入を得る可能性が高いといえるでしょう。
自動運転・EV分野で高収入が期待できる
将来の自動車エンジニアの年収は、自動運転やEV分野において高収入が期待できるでしょう。
近年、自動運転技術やEVの開発は、世界中の自動車メーカーやIT企業が競って取り組む成長領域となっています。こうした分野に対応できる高度な専門スキルを持つエンジニアの需要は急速に高まっており、とりわけAIや制御ソフトウェア、バッテリー開発、センサー技術に精通した人材は市場価値が非常に高く、高年収での採用が進んでいます。
経産省による「未来人材ビジョン」でも、「自動車業界でも、自動運転やコネクテッド技術といった次世代技術の開発競争が激化しており、これらの領域に携わるエンジニアの引き合いが、今後さらに増していくことが見込まれる」とされています。
自動運転やEV分野は、未来のモビリティ社会を支える中核技術であり、今後も持続的な成長が見込まれます。これらの分野での知見や実務経験を持つエンジニアには、将来的にも高報酬が支払われる傾向が強まっていくでしょう。
組み込みエンジニアは年収が上がる可能性がある
将来の自動車エンジニアの年収に関しては、組み込みエンジニアの年収が上がる可能性が高いといえます。
現在、自動車業界では自動運転技術やEVの普及に伴い、車載システムの高度化・複雑化が進んでいます。これにより、制御系ソフトウェアやハードウェアに深く関わる「組み込みエンジニア」への需要が急増しています。特に、リアルタイム制御や通信プロトコル、センサー連携といった専門性の高いスキルを持つ人材は希少価値が高く、企業側も高年収での採用を積極的に行う傾向があります。
また、「2023年度 職種版 決定年収レポート」によると、決定年収の増加幅がもっとも大きかったのは「技術職(組み込みソフトウェア)」でした。これは、組み込みエンジニアに対する採用ニーズの高まりを反映しており、その背景には「自動車産業の進化」があると報告されています。
このように、自動車業界の技術革新とともに、組み込みエンジニアの市場価値も高まっており、今後も年収の上昇が期待できるでしょう。
自動車エンジニアの年収における注意点
自動車エンジニアは高収入が期待できる仕事ですが、注意しておいたほうがよいこともあります。
他の業界よりも年収が低い可能性がある
自動車エンジニアとしてのキャリアは魅力的ですが、他業界と比べて年収が劣る可能性もある点に注意が必要です。
自動車業界の給与体系は、急成長中のIT業界などと比べて保守的である傾向があります。特に日本の大手自動車メーカーでは、年功序列型の昇給制度や固定的な給与体系が根強く残っており、たとえ高度なスキルを有していても、それが報酬に直結しないケースが少なくありません。
例えば、IT業界ではAI、IoT、クラウド技術などの先端分野に強みを持つエンジニアが、実力主義に基づく高額な報酬を得ているケースが多く見られます。一方で、自動車関連メーカーでは、こうした柔軟で競争力のある給与制度の導入が遅れている企業も多いでしょう。
さらに、自動車業界では製品開発に長い時間がかかるため、短期間で成果を出して評価されるような仕組みが浸透しにくいという特徴もあります。これにより、報酬の上昇スピードは比較的緩やかになる傾向があります。
配属部署で変わる
自動車エンジニアの年収は、配属される部署によって大きく変わることがあります。
自動車業界では開発・設計・生産・品質管理など、さまざまな部署が存在し、それぞれに求められる専門性や業務の負荷が異なります。たとえば、最先端の技術開発を行う部署では高いスキルや知識が求められるため、相応の報酬が設定されている傾向があります。
例えば、車両制御ソフトウェアの開発部門に配属されれば、AIや自動運転に関わる高度な技術を扱うため、年収は比較的高くなります。一方で、生産管理部門などではそれらよりも年収が低い可能性があります。。
このように、自動車エンジニアの年収は配属される部署によって変わるため、転職や就職の際には配属先の業務内容や市場価値をよく確認することが重要です。
外部の影響を受ける
自動車エンジニアの年収は、業界を取り巻く外部要因によって大きく左右される可能性があります。自動車産業は、為替の変動、環境規制、EVシフトなどの外部トレンドに影響を受けやすいです。企業の業績がこうした外部環境に影響されることで、社員の給与や賞与にも波及効果が生じるのです。
例えば、円安が進行すると海外での売上が伸び、業績が改善することで、ボーナスが増額されるケースがあります。一方で、EV市場への対応が遅れたり、グローバル競争で後れを取ったりすると、業績の悪化により賞与の減額や人員削減が行われる可能性もあります。
このように、自動車業界の外部環境はエンジニアの年収に直接影響を与えるため、経済動向や技術革新、国際情勢といった広い視点を持ちながらキャリアを築いていくことが重要です。
自動車エンジニアが高収入を目指す方法
自動車エンジニアが高収入を目指すにはどのようなことをすればよいのでしょうか。
ソフトウェア系の知識・スキルを身につける
自動車エンジニアが高収入を目指すためには、ソフトウェア系の知識・スキルを身につけるのが効果的です。
自動車産業では、自動運転技術やコネクテッドカーの進化により、ソフトウェア開発の重要性が急速に高まっています。ハードウェアだけでなく、制御システムやセンサー連携、通信機能などのソフトウェア開発に対応できるエンジニアは、企業にとって不可欠な存在となっており、高待遇で採用される傾向があります。
将来的にも自動車エンジニアとして高収入を実現するには、ソフトウェア系の知識とスキルを積極的に学び、成長領域である自動運転や電動化技術の開発に関わることが重要かもしれません。
先端技術のスキル・知識を得る
自動車エンジニアがキャリアアップや高収入を目指すには、AIや自動運転、カーボンニュートラルなどの先端技術に関するスキル・知識を習得することが重要です。
自動車業界は現在、100年に一度の大変革期にあるとも言われており、従来の機械工学だけでは対応しきれない状況となっています。特に、AIを活用した自動運転技術や、環境規制に対応するためのカーボンニュートラルへの取り組みが急速に進んでおり、これらの分野に精通したエンジニアの需要が高まっています。
こうした先端分野に対応できるエンジニアは、新規プロジェクトへの抜擢やグローバル開発拠点での活躍が期待されており、高年収での採用や昇進のチャンスも広がるでしょう。
役職に就く
役職に就くことは、自動車エンジニアとして収入を高める有効な手段のひとつです。
企業では、役職に就くことで基本給に加えて役職手当が支給されるほか、業績評価の対象範囲も広がるため、総合的な収入が大きく増加する傾向があります。さらに、マネジメントやプロジェクトリーダーといった責任ある立場を担うことで、昇給のスピードが速まり、待遇面でも優遇されやすくなります。
例えば、課長や部長クラスに昇進すると年収が100万円以上アップするケースもあり、グローバルプロジェクトのマネージャーやテクニカルリーダーに選ばれた場合は、海外手当や成果報酬が加算され、年収1,000万円を超えることもあります。このように、自動車エンジニアが役職に就くことで、より高い収入を実現しやすくなるのです。
海外の企業に転職する
自動車エンジニアが高収入を目指すうえで、海外企業への転職は有効な選択肢となります。
海外の先進国では、自動車エンジニアに対する給与水準が日本よりも高い傾向があり、同じスキル・経験であっても収入面で大きな差が出ることがあります。特に欧米を中心としたグローバルメーカーでは、高度な技術力を持つエンジニアに対して高額な年収を提示することが一般的で、プロジェクト単位での成果報酬制度やストックオプション制度が整備されている企業も少なくありません。
さらに、現地の給与体系に基づいて年収が設定されるため、日本よりも好待遇となるケースが多く見られます。ただし、生活費や税制などの違いもあるため、事前のリサーチと準備が必要です。給与水準が高い海外の企業に転職することで、自動車エンジニアとしての収入を大きく伸ばすことが可能でしょう。
収入の良い会社に就職・転職する
自動車エンジニアが高収入を目指すためには、国内の収入の良い会社に就職・転職するのも効果的です。
同じ職種・スキルであっても、企業ごとに給与体系や待遇には大きな差があります。特に業績の良い大手自動車メーカーやグローバル企業では、基本給が高いだけでなく、賞与や各種手当、福利厚生なども充実しており、トータルの年収が大きくなりやすい傾向にあります。また、技術力を重視する企業ではスキルに応じた報酬が支払われやすく、専門性の高いエンジニアは高く評価されます。
ただし、収入が高い企業ほど、求められるスキルや経験も高くなる傾向があるため、キャリアアップのための学習や実績作りが重要です。語学力やプロジェクトマネジメント経験が評価されるケースもあるため、事前に企業のニーズを調査し、自身のスキルセットと照らし合わせることが大切です。
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自動車エンジニアの年収は全体的に高水準で、今後も成長が見込まれる分野です。しかし、電動化や自動運転、ソフトウェア開発などの技術革新が急速に進む現在、企業ごとの待遇差や求められるスキルの違いも大きくなっています。そのため、将来的に高い年収やキャリアの充実を目指すには、現状にとどまらず、より良い環境への転職を視野に入れることが重要です。
そして転職をするときには、自動車業界に精通した転職エージェントを利用するのがおすすめです。業界特有の採用動向や企業文化、各社の待遇や評価制度に精通しているため、希望やスキルに合った求人を的確に紹介してくれるでしょう。
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