品質管理のキャリアプランを考えたとき、どんな役職に就けるのか、どうやって収入を上げていくのかといった点が気になる人も多いと思います。はたして、品質管理は働くなかで順調にステップアップができ、十分なキャリアを築くことができるのでしょうか。

本記事では、品質管理の仕事内容やキャリアプランの選択肢、年収、キャリアを高めるための具体的な方法などを詳しく紹介します。品質管理職を目指す方や、今後の働き方に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

品質管理の仕事とは

はじめに、品質管理の仕事について解説します。

品質管理の仕事内容

品質管理の仕事は、製品やサービスの品質を維持・向上させるための業務を行います。

具体的には品質管理は、原材料のチェック、生産工程の監視、製品検査、不良品の原因分析、品質改善の提案などが主な業務です。品質に関わるデータの記録・分析を行い、常に品質水準を一定以上に保つことが求められます。

ほかにも、品質保証部門や製造現場、外部発注先と連携しながら業務を進めることが多く、コミュニケーション力が求められます。製造現場に深く関わりつつも、部門横断的な視点が必要になるため、全体最適を考える姿勢が求められます。

品質管理の重要性

品質管理は、企業の製品やサービスの信頼性を守り、ブランド価値を高めるために非常に重要な役割を担っています。

経済産業省の「 ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」では、製造業における競争力の源泉として「品質管理・生産技術・生産管理」を1位に挙げた企業が最も多い結果となりました。それだけ品質管理が重要と認識されていることがわかります。

製品の品質は企業の信頼やブランド価値に直結するため、品質管理の徹底は企業競争力の維持・向上に欠かせません。品質管理を徹底することで、不良品の流出を防ぎ、顧客からの信頼を獲得することができます。さらに、クレームやリコールといったリスクを未然に防ぐことで、企業の損失を大きく減らすことが可能です。

企業にとって、品質管理部門は競合との差別化要因であるとともに、将来の利益にまで影響を与える重要な仕事なのです。

品質管理と生産管理の違い

品質管理に似たポジションに生産管理があります。これらはどのように異なるのでしょうか。

品質管理と生産管理はどちらも製造現場の安定運用に欠かせない業務ですが、目的や役割に違いがあります。品質管理は製品やサービスの品質を維持・向上させることを目的とし、不良品の防止や顧客満足度の向上に直結する部門です。一方、生産管理は製造工程全体の効率を高めたり、工程において品質を維持することが主な目的であり、納期遵守や在庫管理、生産スケジュールの最適化などが中心となります。

たとえば、品質管理では検査や監査、品質改善活動がメインとなり、製品の正確さや基準達成が重視されますが、生産管理は部品の手配やラインの稼働率、生産性の管理など、工程全体の流れを円滑にすることに注力するのです。

品質管理のキャリアプランとは

品質管理のキャリアプランには、どのような選択肢があるのでしょうか。

他部署への異動

品質管理で経験を積み、キャリアを高めていこうという場合には、他部署に異動するという選択肢があります。

品質管理の仕事では製品やサービスの品質に関わる広範な知識と現場の理解を得るので、それを活かして開発、製造、営業など他部署への異動を目指すことができます。品質管理に加え、製品やサービスに関わる新たな業務スキルや視野を広げる経験を得ることができるでしょう。単一分野だけでなく複数分野に精通する人材として市場価値を高めることができるはずです。

また、自身の価値を高めるだけでなく、品質管理で培った論理的思考や問題解決力は他部署でも活かすことができるので、総合的なキャリアアップにつながるでしょう。このように他部署に異動することでキャリアを形成していくことができます。

グループリーダー

品質管理のキャリアプランとしては、グループリーダーを目指すというものもあります。

グループリーダーは、少人数の品質管理チームを現場でまとめる役割です。グループリーダーに昇格することで、マネジメントスキルやリーダーシップ力を実践的に磨くことができ、組織運営や人材育成に関する知見が深まるでしょう。特に、部門全体の品質向上に向けた施策を推進する立場となることで経営視点なども身につけることができるはずです。

グループリーダーは単に現場を管理するだけでなく、作業標準の見直しやメンバーの育成にも深く関わるため、リーダーとしての判断力や周囲との信頼関係を築く力が養われるでしょう。グループリーダーとして経験を積んだあとには、次のステップとして中間管理職や部門責任者を目指すことができます。

主任

品質管理職においては、主任に昇進することでキャリアを高めることができます。

主任は現場の中心的な存在として実務とマネジメントの両面を担うポジションです。主任は現場の業務を深く理解しながら、メンバーの指導やチームマネジメントなど組織運営に関わる役割を担うため、実務力とリーダーシップの両方を鍛えることができます。会社内での評価や次の昇進に直結しやすいポジションでもあります。

主任は、目の前の作業だけでなくチームや部門単位で成果を上げる視点が求められるポジションです。自らの判断に責任を持ち、改善提案や人材育成に一歩踏み込んで関わることがキャリアアップにつながるでしょう。

管理職

品質管理におけるキャリアプランを考える際には、管理職への昇進を目指すことが重要な選択肢となるでしょう。主任としての経験を積んだ後に、課長や部長などの管理職に昇進するのが一般的です。

管理職になることで、品質管理部門全体の方針を策定したり、部署の数値目標を設定したりするとともに、チームマネジメントやプロジェクト推進、経営層との連携など、より広範で高度なスキルを磨くことができます。

管理職になることで影響力が広がり、組織全体の品質向上に寄与できる存在となることができます。管理職として組織や製造現場の向上を行っていくことで、マネジメント力と組織運営力が評価され、さらなるキャリアの選択肢が広がっていくでしょう。

工場長

品質管理のキャリアプランにおいて、工場長を目指すことは最終的なキャリアゴールのひとつとなり得るでしょう。

工場長は品質管理のみならず、生産管理、労務管理、コスト管理、安全管理など工場運営全体を担うポジションであり、幅広い知識とマネジメント力を活かして組織を牽引する役割です。現場に根ざした経験と総合的な経営感覚の両方を兼ね備えた工場長は、企業内で大きな評価を得られるでしょう。

品質管理出身者が工場長に抜擢されるケースも多く、その専門性を生かして工場全体の品質向上をリードすることが求められています。

品質管理の年収

ここでは、品質管理の年収に関する情報をまとめます。

平均年収

品質管理職の平均年収はどれくらいなのでしょうか。

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、品質管理職の平均年収は688.2万円とされています。国税庁による令和5年度の民間給与実態統計調査で日本の給与所得者の平均年収は460万円となっていることを考えると、品質管理の年収の水準が高いことがわかります。

また、「年齢別の年収グラフ」を見ると、品質管理の年収は25歳~29歳で500.8万円、35歳~39歳で670.21万円のように年齢とともに上昇していき、ピークは50歳~54歳の841.26万円となっています。キャリアを積むことで大きな年収が期待できる仕事といえるでしょう。

将来の年収

品質管理の将来の年収はどのようになるのでしょうか。

品質管理の年収は将来にかけて上昇していくと考えられます。製造業においてはAIやIoTなどのような技術の向上によって、製造工程の複雑化、製品の品質の向上が起こると考えられます。それにともない、製品品質への要求レベルが高まっていくと考えられます。品質管理に求められるスキルや知識、専門性も高くなるでしょう。

また、少子高齢化やベテラン社員の引退などによって需要が高まることで、品質管理の年収は高まっていくと考えられます。

業種によって年収も異なる

品質管理の年収は業種によって変わってきます。 一般的に、高度な技術や精密性が求められる業種では年収が高めに設定されるためです。

職種別平均年収ランキングによれば、品質管理職のなかでも「機械・メカトロニクス・自動車」分野の平均年収は760.2万円とされており、品質管理全体の平均を上回る水準となっています。他にも、半導体や医療機器などの業種でも、求められるスキルの水準は高く、品質基準が厳しい分だけ担当者への期待が大きく、処遇にも反映されやすくなっているといえるでしょう。

どの業界で経験を積むかによって、キャリアの広がりや収入の上限も変わります。自身の志向や強みを考慮した上で、将来性のある分野へのチャレンジを検討してみるとよいでしょう。

品質管理に必要な能力

品質管理の仕事を進めるには、一定の専門知識以外にも実務を支える能力も求められます。 ここでは、品質管理としてキャリアを築いていくのに重要な能力を紹介します。

リスクマネジメントスキル

品質管理においては、リスクマネジメントスキルを身につけることが重要です。

品質管理の現場では、製品やサービスに不具合が発生するリスクを抱えています。そのため、問題が発生する前にリスクを予測し、適切な対策を講じるリスクマネジメントスキルが必要となります。工程や製品に潜むリスクを洗い出し、影響の大きさや発生頻度を見極めた上で対策を講じなくてはなりません。 このスキルが高いほど、不良品の発生防止やクレーム対応の迅速化が可能になり、企業の信用維持に大きく貢献できます。

実際の現場では想定外のトラブルや、新たなリスクが日々発生します。たとえば、原材料の品質変動や製造工程の微細なズレなど、マニュアルだけでは対応できない問題が起こる可能性があるのです。こうした場面でリスクマネジメントスキルを発揮できる人材は企業から高く評価され、キャリアを高めることができるでしょう。

コミュニケーションスキル

品質管理としてキャリアを築いていくためには、コミュニケーションスキルが重要です。

品質管理の業務では、製造部門や開発部門、営業部門など、さまざまな部署と連携を取る必要があります。情報共有や問題点の早期発見、対策のすり合わせをスムーズに行うためには、相手にわかりやすく伝え、相手の意見も正確に理解するコミュニケーションスキルが大切になります。コミュニケーションスキルが高ければ、課題や問題を早期に発見し、関係者と協力して迅速に対策を講じることができるでしょう。

たとえば、不具合の原因が明らかになった場合、関係部門へ状況を整理して共有し、再発防止策を一緒に検討することも行いますが、単に報告するだけでなく相手の立場に配慮した伝え方ができる人は現場で信頼を得られるでしょう。

論理的思考力

品質管理の仕事では、論理的思考力も重要です。

品質管理の現場では、不具合やトラブルの原因を追求し、適切な対策を講じる必要があります。そのためには、感情的な判断に頼るのではなく、事実を整理し、論理的に因果関係を分析する力が必要になります。論理的思考力があれば、複雑な要素が影響している問題でも冷静に要因を特定し、効率的かつ再発防止に向けた改善策を立案することが可能になるでしょう。

たとえば、不良品が発生した際にも「なぜその現象が起きたのか」「どの段階で問題が生じたのか」を工程ごとに分解し、再発防止の対策を行うことができます。品質管理の精度を高め、組織全体の品質向上を実現するためには、論理的思考力を磨くことが不可欠なのです。

品質管理がキャリアを高めるための方法

品質管理がキャリアを高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。

マネジメントスキルを磨く

品質管理の分野でキャリアを高めるためには、マネジメントスキルを磨くことが重要です。

品質管理においては、単なる現場対応だけでなく、チームをまとめプロジェクト全体を円滑に進めるマネジメント力が求められます。マネジメントスキルが高いと、作業工程の効率化や問題解決のスピード向上に加え、部下の育成や他部署との連携強化にもつながり、結果として自分自身の評価やキャリアアップの可能性が高まります。役職を高めていくためにもマネジメントスキルは必須でしょう。

品質トラブルが発生した場合にも、各部門と連携を取りながら迅速に問題を解決できますし、ISOなどの品質マネジメントシステムの運用などもマネジメントスキルが高い人材であればスムーズに推進できるはずです。

品質管理でキャリアを高めるためには、マネジメントスキルを意識的に磨いていくようにしましょう。

資格を取得する

資格の取得も品質管理としてのキャリアアップにつながります。

品質管理に関連する資格を持っていることで、専門知識やスキルを客観的に証明でき、企業やクライアントからの信頼や評価が向上します。資格を通じて体系的な知識を身につけることは、現場での実践力にも直結しキャリアアップの後押しになるでしょう。

品質管理が取るべき資格の例としては、「品質管理検定(QC検定)」や「技術士(経営工学部門)」「技能検定(鋳造)」「作業環境測定士」「作業主任者」などがあります。業界や業務領域に応じて資格を取得するようにしましょう。

転職する

品質管理のキャリアを高めるためには、転職を検討するのも有効な手段です。

転職によってより高いレベルの品質管理体制を持つ企業や、新しいスキルを得られる分野に移ることができる可能性があります。現在の職場にとどまるだけでは得られない経験や知識を、転職先で積み重ねることが可能になるのです。また、大手企業や外資系企業では品質管理に対する要求レベルが高く、最新の品質保証手法やグローバルスタンダードに触れることができるでしょう。

転職エージェントを利用した人は非利用者に比べて年収が上がりやすいというデータもあります。転職をするときにはエージェントを利用するのがよいでしょう。

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品質管理の仕事は、さまざまなキャリアプランを描くことができる仕事です。業務を通じて専門性を高めながら、将来的にはグループリーダーや管理職、工場長といった上位のポジションを目指すこともできるでしょう。年齢や業界によって年収に差は出てきますが、経験やスキルの積み重ねにより収入アップも狙いやすい分野といえるでしょう。キャリアアップをする場合には転職をするのもおすすめです。

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