品質管理の年収はどのくらいなのか、キャリアアップしたらどのくらい収入が増えるのかなど、収入について気になっている人も多いと思います。品質管理職の年収は、業種や企業規模、経験年数によって大きく異なります。
この記事では、製造業の品質管理の平均年収や年齢別の傾向、業種ごとの違い、今後の年収の見通しについて詳しく解説します。年収アップのための具体的な方法も紹介しているので、品質管理の仕事に関心のある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
品質管理とは
はじめに、製造業の品質管理の仕事がどのような仕事かについて解説しておきます。
仕事内容
製造業における品質管理とは、製品が設計通りの仕様・性能を満たしているかを確認し、品質の安定と向上を図る部門です。企業が製造する製品が市場に出るまでの各段階である、原材料の調達、製造工程、完成品の出荷など、あらゆる工程で品質をチェックし、トラブルを未然に防ぐことが求められます。
主な仕事内容としては、原材料や部品の受け入れ検査、製造中の工程管理、完成品の品質検査、不良品の分析、改善策の提案・実施などがあります。また、品質基準の策定や、品質マニュアルの整備、ISOなどの品質マネジメントシステムの運用管理も重要な業務です。
品質管理の重要性
品質管理は製造業において重要な役割を果たします。製品の品質が安定していなければ、顧客からのクレームや返品が増加し、ブランドイメージの低下や売上の減少にもつながりかねません。特に近年ではSNSなどを通じてネガティブな情報が拡散しやすいため、一度の品質トラブルが大きな損害を引き起こすリスクも高まっています。
また、品質管理はコスト削減にも貢献します。製品不良が発生してから対応するのではなく製造段階で問題を発見することで、修理や廃棄にかかる無駄なコストを削減できます。さらに、製品の品質を安定させることで生産効率も高まり、全体の業務効率化も実現できるでしょう。このように、品質管理は顧客からの信頼やコストに直結するので重要なのです。
実際、「令和4年度製造基盤技術実態等調査」では、製造業の競争力の源泉として「生産技術・生産管理・品質管理」を重視する企業が最も多異結果となっており、品質の安定が企業経営の中核に据えられていることがうかがえます。
品質管理の年収の特徴
ここからは、品質管理の年収の特徴を解説します。
平均年収
厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、品質管理の平均年収は688.2万円とされています。国税庁の調査によると、日本の給与所得者の平均給与は460万円なので、品質管理の年収の水準は高いといえるでしょう。
製造業をはじめとしたものづくりの現場では、製品の品質が企業の信頼や売上に直結するため、品質管理の役割は極めて重要視されています。そのため、一定の知識や経験を持つ人材は高く評価され、年収にも反映されやすくなっていると考えられます。
年齢別の年収
品質管理では、年齢別の年収はどうなっているのでしょうか。
職業情報提供サイトに掲載された「年齢別の平均年収データ」を見ると、20~24歳では356.5万円となっていますが、それ以降は年収は大きく上がっていき、30~34歳では600万円を超え、50~54歳ではピークとなる841.26万円に達します。その後、年収は下がっていきますが、比較的高い水準を保っています。
品質管理の仕事は、経験を重ねることで大きく給与を上げることができる職種であるということがわかります。これは、年齢とともに知識やスキルが蓄積され、品質管理体制の構築や改善提案、トラブル対応など、より高度で責任のある業務を任されるようになるからと考えられます。こうした役割の変化に応じて、年収も着実に上昇していくことが期待できるでしょう。
給与額別の人数割合
品質管理の仕事では、給与の額ごとにどのような割合になっているのでしょうか。
職業情報提供サイトに掲載されている「所定内給与額別の人口割合」によると、品質管理職において最も割合が多いのは、月額20万円〜29.9万円で全体の27.8%となっています。次いで月額30万円〜39.9万円で27.5%、月額40万円〜49.9万円が21.5%となっています。
さらに、月給60万円〜69.9万円が6.7%、70万円〜79.9万円が1.78%、80万円以上を得ている人も0.82%存在しており、高い収入を実現している人も一定数いることが分かります。
このように、品質管理の仕事は月給30万円以上の層が全体の半数以上を占めており、一般的な職種と比べても比較的高い水準にあるといえるでしょう。また、品質管理職は努力や経験に応じて着実に収入を伸ばしていける、将来性の高い職種であると考えられます。
品質管理は女性の年収が低い?
品質管理の仕事では、女性の年収の水準はどのような傾向にあるのでしょうか。「大卒年収調査2023年版 職種別編」によると、「生産技術・品質管理(機械・メカトロ・自動車)」の年収は男性が平均775.0万円であるのに対し女性は472.1万円と、302.9万円の差があります。「生産技術・品質管理(素材・化学・食品・バイオ)」でも、男性712円、女性474万円となっています。
ただし、他職種における女性平均と比べると、品質管理の女性の年収は低いわけではないことがわかります。これは、品質管理という職種自体が専門性とスキルを要する業務であり、女性であっても一定の知識や経験を積むことで安定した収入を得られるためと考えられます。
また、品質管理の分野では年功序列や属人的評価だけでなく、成果やプロセスに基づいた評価が行われやすいため、性別に関係なく実力次第で年収アップを目指せる環境が整っているといえるでしょう。
年齢を経てからも年収が高い
品質管理の仕事は、年齢を経ても高い年収を維持しやすい職種です。現に、上の年収データでも、60~64歳で568.3万円、65~69歳で543.2万円、70歳以上で438.8万円と高い水準となっています。
品質管理では年齢を重ねても専門性や経験が重宝されるため、高収入を維持しやすい傾向があります。品質に関する知識やトラブル対応の実績、業界・製品に関する深い理解は一朝一夕で身につくものではなく、長年の現場経験によって培われるものです。そのため、定年が近づいても、ベテランとして重要なポジションを任されることもあります。
また、品質管理の仕事は体力よりも判断力や管理能力が求められるため、年齢を重ねても活躍しやすいといえ、他の職種と比較しても高収入を維持しやすい職種だといえるでしょう。
年収が高い品質管理の業種とは
品質管理はさまざまな業種で求められますが、どの業種において年収が高いのでしょうか。ここでは、上の「大卒年収調査2023年版 職種別編」をもとに解説します。
機械・メカトロ・自動車
機械・メカトロニクス・自動車の業種は、品質管理の年収が高い傾向にあります。
「大卒年収調査2023年版」でも、「機械・メカトロ・自動車関連」の品質管理職の平均年収は760.2万円で13位となっています。自動車産業では、安全性や耐久性が製品の信頼性に直結するため、品質管理の重要性が非常に高く責任も大きくなります。そのため、品質管理職には高いスキルと専門性が求められ、それに見合った報酬が支払われていると考えられます。
また、大手メーカーやグローバル展開している企業が多いことも、年収が高水準で推移する要因のひとつでしょう。これらの企業では、品質に対する投資も積極的であり、品質管理部門に対する評価が高い傾向があります。
素材・化学・食品・バイオ
「素材・化学・食品・バイオ」における品質管理の平均年収は649.2万円となっており、高い収入が期待できる分野です。これは、「素材・化学・食品・バイオ」の業種は人の健康や安全、環境への影響と密接に関わる製品を多く扱っており、品質管理の重要性が非常に高いためと考えられます。
また、厳しい法規制や業界基準に対応する必要があるため、品質管理職には高い知識と専門的なスキルが求められます。その分、責任の重さに見合った待遇が用意されており、年収も比較的高めに設定されていると考えられるのです。
品質管理として高収入を求める場合には、これらの業種を志すとよいでしょう。
将来の品質管理の年収は?
品質管理の年収は、将来どうなっていくのでしょうか。
将来の品質管理
将来の品質管理の仕事や需要はどのように変化するのでしょうか。
経済産業省の展望によると、品質保証体制の強化のために「ロボット、IoT、AIなどを活用した、検査結果のデータ化・見える化などを含めた検査工程の自動化」が有効と考えられています。また、「個別の製品に紐づいた各種データをもとにその原因の特定を実施できるようなトレーサビリティシステムを導入・構築することも有効な対応策」とされています。
このように、品質管理においてはAIやシステムによってより自動化が進んでいくと考えられます。それによって、品質管理においても人間が必要とされなくなるリスクを懸念する声もありますが、実際には人間の役割がなくなるわけではありません。
むしろ、AIやIoTなどの先端技術を使いこなせる人材のニーズが高まると予測されます。自動化によって定型的な作業やデータ収集・解析の部分は効率化されますが、最終的な判断や異常時の対応、システムの設計・改善といった「考える力」や「現場を理解する力」は、依然として人間に求められるでしょう。
品質管理の将来の年収
では、品質管理職の将来の年収はどのように変化するのでしょうか。
「2018年版ものづくり白書」によれば、現在では製造業の「94%の企業が人材確保に課題があり、さらに3割強の企業においてはビジネスに影響が出ている」と回答しています。
また、品質に関するアンケートの「品質に関する力について落ちていると感じていますか」という質問において、「落ちている」が39.5%となりました。そして、品質が「落ちている」とした理由で最も多かったのが「人材不足」でした。つまり、品質を管理するための人材が不足していることが伺えます。
少子高齢化によって今後も人材不足は続くと考えられますので、品質管理における人材においても需要は高まるでしょう。それに伴って品質管理の年収は高まることが予想されます。
品質管理が年収を高めるための方法
品質管理がより年収を高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。
先端技術の知識・スキルを身につける
品質管理職として年収を高めるには、先端技術に関する知識やスキルを身につけることが重要です。
近年では、IoTやAI、ビッグデータ解析、画像認識技術などが製造業における品質管理にも導入され始めています。国内企業のAI利用率の高い業種としても、品質管理はもっとも高い結果となっています。
これらの技術を理解し、業務に活かせる人材は企業から高く評価され、高年収ポジションへのキャリアアップも見込めるでしょう。上のアンケートでも、「品質についての悩みごとや困りごとはありますか」という質問において、「品質におけるDXやIoTの推進方法」について困っている人が多い結果となりました。
先端技術の知識やスキルを持った人材の需要は大きいので、年収を高めるためにこういった能力を身につけることが有効でしょう。
資格を取得する
資格の取得も品質管理の年収を高める方法のひとつです。資格を取得することで、品質管理に関する専門性やスキルを客観的に証明でき、企業からの評価が高まりやすくなります。また、企業としても資格保有者を採用・登用することで品質体制の信頼性を高めることができるため、昇進・昇給の対象になりやすい傾向があります。企業によっては資格手当を支給している場合もあり、直接的に年収アップにつながるケースもあります。
例えば、「品質管理検定(QC検定)」や「統計検定」、「技術士(経営工学部門)」などは品質管理職で役立つ資格です。品質管理職が年収を高めたいと考えるなら、資格を取得することを積極的に検討してみてください。
昇進する
品質管理職として年収を高めるためには、昇進を目指すことも効果的です。役職が上がることで基本給や役職手当が増えるだけでなく、管理職としての裁量が広がり、業績や改善成果に応じた評価・報酬を得やすくなります。
多くの企業では、品質管理職に一般職からグループリーダー、主任、管理職といった段階的なキャリアパスが用意されており、ポジションに応じて報酬水準も段階的に上がります。昇進を目指すには、リーダーシップ能力や部下育成、品質マネジメントに関する知識や経験が求められますが、着実にキャリアを積むことでそれらを身につけることが可能です。
品質管理職として年収を上げたい場合には、昇進によってより高い報酬を得られるキャリアパスを意識して働くことが重要です。
『品質管理のキャリアプランとは?キャリアを高める方法も紹介します』
転職をする
品質管理職として年収を高めるためには、転職をするというのも有効な手段のひとつです。
今までの経験やスキルを活かすことで、より高い報酬で採用をしてくれる企業に転職することが可能です。特に品質管理の分野では、業界を問わず人材需要が高まっており、経験者を好待遇で迎え入れる企業も増えています。そのため、現在の職場で年収の伸びに限界を感じている場合には、自身の市場価値を見直し、他社での待遇と比較してみることが大切です。
また、同じ職種であっても、企業規模や業種、勤務地域によって年収水準には差が生まれます。より報酬が高い企業を探して転職をすることで年収を高めることができるでしょう。
エージェントに相談する
品質管理の年収を高めるためには、エージェントへの相談がおすすめです。転職エージェントは市場の動向や企業ごとの年収水準、求められるスキルなどに精通しており、あなたの経験や強みをもとに最適なキャリアプランを提案してくれます。さらに、年収交渉や非公開求人の紹介といった、個人では得にくい情報やチャンスにもアクセスできるでしょう。
エージェントは企業との強固なパイプを持っていることが多く、企業側が求める人物像や選考のポイントを事前に把握したうえで応募者を推薦してくれるケースもあります。これにより、内定獲得の可能性が高まるだけでなく、希望年収に見合うポジションへのマッチングが実現しやすくなるはずです。
転職エージェントの利用者のほうが非利用者よりも年収が高いというデータもあり、転職において年収を高めるにはエージェントを利用したほうがよいかもしれません。
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品質管理の年収水準は比較的高く、年齢を重ねても安定して高い年収が見込める職種です。近年では、AIやIoT、DXの進展により、品質管理の重要性はさらに高まり、今後も需要の拡大が期待できるでしょう。
異業種から品質管理への転職を目指す場合や、より良い条件の企業へ転職したいと考えている方には、転職エージェントの活用がおすすめです。エージェントを利用することで、自分に合った企業や年収アップのチャンスに出会える可能性が高まります。
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