機械設計の仕事に転職したいけどどんなスキルが必要なのか、異業種からでも機械設計に転職できるのか、転職で年収アップは目指せるのか、などの疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
機械設計の分野は専門性が高いため、業界の動向や企業のニーズを正しく理解していないと、転職活動で思うような成果を得られないことがあります。特に、職種ごとの必要スキルや設計ツール、年収相場、転職方法などは押さえておいたほうがよいでしょう。
この記事では、機械設計への転職を検討している方向けに、近年の転職事情や年収事情、必要なスキルや資格、転職を成功させるためのポイントについて詳しく解説していきます。
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目次
機械設計エンジニアの転職事情
まずは機械設計エンジニアの転職事情について解説しておきます。
機械設計エンジニアは不足している
経済産業省の「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」によると、「5年後技術者が不足すると予想される分野」において機械工学が12.4%でもっとも高くなりました。
この結果から、機械設計エンジニアも今後さらに人材不足が深刻化することが予想できます。そのため、機械設計エンジニアとしてのスキルや実務経験を持っている人にとっては、転職市場で有利に立ち回ることができるタイミングといえるでしょう。これまでのキャリアを活かして転職を行い、年収アップや労働条件の改善を目指すにはよいかもしれません。
求人は増加傾向
機械設計エンジニアに対する求人は、ここ数年で着実に増加傾向にあります。エンジニアの求人推移をまとめた資料によると、機械系設計職の求人が拡大していることがわかります。
2024年の「モノづくりエンジニア中途採用マーケットレポート」においても、「機械設計エンジニア」を含む設計職の求人数は、製造業を中心に増加傾向が続いていると報告されています。
このように、機械設計エンジニアの求人は今後もしばらく堅調な伸びを見せると考えられ、経験者はもちろん、設計補助やCADオペレーターからステップアップしたい方にとっても、絶好の転職タイミングといえるでしょう。
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女性も機械設計エンジニアに転職ができる
厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、機械設計エンジニアとして働く就業者の多くは男性が占めているのが現状です。しかし、近年ではその状況にも変化が見られます。
たとえば、2023年の「機械設計に関する特集記事」では、「STEM領域に転職する女性エンジニアは約10年で6.38倍に」なっていると報告されており、女性の機械設計エンジニアも増加していると考えられます。これは、働き方改革や企業によるダイバーシティ推進、設計業務のデジタル化による環境改善などが進んだことが大きな要因とされています。
今後も、ジェンダーに関係なく実力で評価される職場づくりが求められる中で、女性が機械設計エンジニアとして転職・活躍できるチャンスは広がっていくと考えられるでしょう。
機械設計エンジニアの年収
機械設計エンジニアは転職することで年収を高めることができるのでしょうか。機械設計エンジニアの年収事情と転職で年収が上がるのかについて解説します。
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平均年収
「職業情報提供サイト」の「機械設計技術者」のページを見ると、令和6年時点での平均年収は669.4万円となっています。国税庁によると、令和5年の日本の平均給与は460万円なので、機械設計は専門性が高く、給与も高い職種であることがわかります。
「年齢別の年収」グラフを見ると、機械設計で最も年収が高くなるのは55~59歳で769.58万円に達しています。30代後半から40代でも600万〜700万円前後と高水準で、スキルや担当業務の内容によっては、若いうちから高収入を得られる可能性も十分にある仕事であるといえるでしょう。
転職で年収は上がる?
機械設計エンジニアは転職によって年収アップを実現できる可能性が十分にあります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和5年)」によると、機械設計技術者の年齢階層別の平均年収は以下の通りです。
| 年齢層 | 平均年収 |
|---|---|
| 30~34歳 | 約545万円 |
| 35~39歳 | 約599万円 |
| 40~44歳 | 約635万円 |
| 45~49歳 | 約682万円 |
| 50~54歳 | 約726万円 |
| 55~59歳 | 約769万円 |
これらのデータからもわかる通り、年齢とともに年収は上昇していく傾向があります。現在の年収がこれらの平均値よりも明らかに低い場合には、転職によって同等以上の水準を狙える可能性があるでしょう。
また、機械設計エンジニアの年収は企業規模によっても大きく変わる傾向があります。厚生労働省のデータによると、「男女計では大企業346.0千円、中企業311.4千円、小企業294.0千円」となっており、企業の規模によって給与の水準が変わります。一般に、従業員数が多い大手企業ほど待遇が良く、ボーナスや福利厚生も充実しているため、結果として年収も高くなる傾向があります。現職が中小企業であれば、より規模の大きな企業へ転職することで年収アップが期待できるでしょう。
機械設計エンジニアが転職するのに有利なスキル
機械設計エンジニアが転職を成功させるためには、単に経験年数や実績だけでなく、企業が求める実践的なスキルを持っているかどうかが大きなポイントになります。ここでは、転職市場で評価されやすいスキルについて解説します。
ハード・ソフトの操作スキル
機械設計エンジニアにとって、ITツール(ハードウェアおよびソフトウェア)を自在に使いこなせる能力は重要です。厚生労働省の機械設計に関する資料でも、ITスキルは設計業務を円滑に行ううえで必須とされています。
また、実際の設計現場では、3D CADやCAEといった設計支援ツールを正確かつ効率的に扱えることが求められます。これらのツールを使いこなせるかどうかは、設計のスピードや品質に直結するため、多くの企業が重視するポイントです。
近年では、PDMやPLMといったシステムとの連携も必要とされる場面が増えており、設計スキルと情報管理スキルをあわせ持つエンジニアが重宝される傾向にあります。さらに、Excelやマクロ、簡単なプログラミングを用いた業務効率化のスキルも、周囲との差別化要素として強みになります。
コミュニケーション力
機械設計エンジニアが転職を成功させるためには、コミュニケーション力を高めることが大事です。
設計職は技術力が重視される一方で、プロジェクトメンバーや他部署、クライアントと円滑にやりとりする場面が多いため、コミュニケーション力が求められます。特に製造現場とのやり取りや、営業・品質部門との連携において、設計意図や仕様の説明、調整が必要になることが多くあります。
どれだけ優れた設計スキルを持っていても、要件の食い違いや、図面の意図が正しく伝わらない場合、製品の品質や納期に影響が出るリスクがあります。逆に、円滑な意思疎通ができれば、仕様変更にも柔軟に対応でき、信頼されるエンジニアとして評価されやすくなるでしょう。転職市場での機械設計エンジニアとしての評価を上げるためにはコミュニケーション力は欠かせないポイントといえます。
語学力
機械設計エンジニアは、語学力を身につけておくことで転職を有利に進められる可能性があります。
グローバル展開している製造業では、設計仕様書や技術資料が英語で書かれているケースが多く、語学力があることで業務の幅が広がります。また、海外の拠点や取引先とのやり取りが発生するポジションでは、英語でのコミュニケーションが必須となるため、語学スキルがある人材は企業から重宝されます。
さらに、最新の技術情報や論文、製品マニュアルなどは英語で発信されることが一般的です。英語を理解できることで、技術トレンドをいち早くキャッチし、自身のスキルアップにもつなげやすくなります。語学力は、単なるコミュニケーション手段としてだけでなく、技術者としての成長を加速させる武器にもなり得るのです。
法律の知識
機械設計エンジニアが転職を有利に進めるためには、法律に関する基本的な知識を身につけておくことが有効です。
実際の設計業務では、知的財産権や製品安全基準、品質表示法、電気用品安全法、電波法、有害物質規制法、さらには契約関連など、さまざまな法的知識が求められる場面があります。こうした法律を正しく理解しておくことで、設計上のリスクを未然に防ぎやすくなり、企業からの信頼や評価を得やすくなります。
例えば、新製品の設計において、既存の特許を侵害しない構造にするためには、特許調査の基本や法的判断が必要です。さらに、PL法(製造物責任法)や各種安全規格への対応なども求められるため、法的な視点を持っている設計者は重宝されるでしょう。
マネジメントスキル
機械設計エンジニアが転職を成功させるためには、マネジメントスキルを身につけておくことも有効です。
マネジメントスキルを持つことで、設計業務だけでなくチームの進行管理や部門間の調整など、より広い視野でプロジェクトを推進することが可能になります。企業側にとっても、技術者でありながらマネジメントもこなせる人材は重宝され、採用時の評価も高くなるでしょう。
マネジメントの経験が浅くても、社内研修やeラーニングなどで基本を習得しているだけでも、転職時のアピール材料になる可能性があります。マネジメントスキルを身につけておくことで、機械設計エンジニアとしての市場価値を高め、転職活動をより有利に進めることができるはずです。
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機械設計エンジニアの転職を成功させるポイント
機械設計エンジニアの転職を成功させるために抑えておいたほうがよいポイントがあります。
エージェントに相談する
機械設計エンジニアとして転職を成功させるには、転職エージェントに相談することがおすすめです。
エージェントを活用すれば、一般には出回っていない非公開求人の紹介を受けられるほか、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策まで、転職活動全体をトータルでサポートしてもらえます。また、応募企業との年収交渉や労働条件の調整なども代行してくれるため、自分では伝えづらい要望も反映しやすくなり、より良い待遇での転職が期待できます。
特に機械設計エンジニアのように専門性の高い職種では、業界に詳しいエージェントのアドバイスが転職成功の大きな後押しとなります。自分に合った職場やキャリアパスを見つけたい方にとって、エージェントの活用は心強いサポートとなるでしょう。
リスキリングを行う
機械設計エンジニアが転職を成功させるためには、リスキリングによって知識やスキルの幅を広げておくことが重要です。現代の設計現場では、単一分野だけでなく、材料、流体、電気・制御、さらにはAIやIoTなどの複数の領域にまたがる知識が求められるケースが増えてきています。
経済産業省の資料によれば、大学で学んだ専門分野と現在の業務に必要とされる専門分野が一致していないという声も多く、常に新しい技術や知識を吸収し続けることが実務とのギャップを埋めるために必要ということがわかります。
また、リスキリングを行うことは、他の候補者との差別化にもつながります。多くのエンジニアが学び直しを行っているため、リスキリングをしていないと転職市場では不利に働くこともあります。市場価値を保つだけでなく上げるためにも、今のうちからリスキリングに意識的に取り組んでおきましょう。
経験やスキルの整理をする
機械設計エンジニアとして転職を成功させるには、まず自分自身の経験やスキルを整理することが重要です。
これまでどのような業務に携わってきたのか、自分の強みは何かを明確にすることで、応募先企業に対して説得力のある志望動機や自己PRを伝えることができます。また、自分の得意分野や関心のある業務領域を理解しておくことは、ミスマッチのない転職先を見つけるためにも欠かせません。そして、具体的な実績やエピソードを整理しておくことで、面接での回答にも一貫性と説得力が生まれるはずです。
転職活動を始める前に自身の経験やスキルを棚卸しし、強みや志向性を明確にすることが、希望する企業への内定獲得につながる第一歩となるはずです。
資格を取得する
機械設計エンジニアの転職を成功させるには、資格を取得することが有効な手段のひとつです。
機械設計の分野では、資格は技術力や専門知識を客観的に証明するものとなり、企業に対して自身のスキルを強くアピールできます。特に中途採用では即戦力が重視されるため、資格の有無が評価に大きく影響する場合があります。また、同じような経験やスキルを持つ応募者がいる中で、資格は差別化のポイントとしても有効です。
実務経験に加えて資格も保持していれば、より幅広い業務への対応力があると判断され、年収アップや希望職種への転職の可能性も高まるでしょう。自身の業務領域に関わる資格を戦略的に選んで取得することで、転職市場における競争力を一層高めることができるはずです。
機械設計エンジニアの転職に役立つ資格
機械設計エンジニアの転職に役立つ資格は以下のようなものです。
技術士
「技術士」は、技術分野における高度な専門知識と応用能力を有するエンジニアに与えられる国家資格であり、文部科学省が認定しています。とくに機械設計エンジニアの場合は、「機械部門」での取得が一般的です。この資格は「技術士補(一次試験)」と「技術士(二次試験)」の2段階に分かれており、最終的に技術士に合格することで正式な称号を得ることができます。
技術士の資格を取得することで、機械設計や製造技術、構造解析、品質管理などに関する自身の技術力や専門性を客観的に証明することができ、転職市場においても評価されるでしょう。
とくに大手企業や公共性の高いプロジェクトでは、技術士の資格保有者を優先的に採用するケースもあり、選考を有利に進めることができるはずです。また、資格手当が支給される企業や、昇進・昇格の条件に技術士取得が含まれる場合もあります。
機械設計技術者
「機械設計技術者」は、一般社団法人日本機械設計工業会が認定する民間資格で、機械設計に関する基礎知識から応用技術までの習得度を評価する資格です。
1級・2級・3級の3段階があり、2級・3級は設計業務の実務経験が浅い技術者や学生でも受験可能で、1級はより高度な実務経験と応用力が求められます。この資格によって、機械設計に必要な製図、材料力学、機械要素、加工法、CAD操作などの幅広い分野の知識を体系的に学び、証明できます。
特に中途採用では、設計実務を基礎から理解しているかどうかが重視されるため、資格取得によってスキルの裏付けとして評価されやすくなります。また、設計未経験からキャリアをスタートした技術者にとっても、この資格を取得することで、基本的なスキルの習得だけでなく、転職活動時のアピールとすることができるでしょう。
CAD利用技術者
「CAD利用技術者」は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施する資格試験で、CADの操作スキルや設計知識を客観的に証明できる民間資格です。主に2次元CADを対象とした「2級」「1級」や、3次元CADに特化した「3次元CAD利用技術者試験」が用意されています。
この資格では、図面の読解力や作図ルールの理解、CADソフトの基本操作から応用的な機能の活用まで、幅広い能力が問われます。設計現場での実践的なスキルが重視されるため、特に1級や3次元CADの資格は転職活動時に評価されやすくなるでしょう。
機械設計エンジニアの業務においては、CADスキルを用いて製品の構想設計や部品図、組立図の作成などを行うことが日常的であり、正確かつ効率的な操作スキルが業務の質やスピードに直結します。そのため、CAD利用技術者の資格を取得しておくことで、単なるCAD使用経験者ではなく、基礎理論と実践力を備えた技術者であることをアピールすることができ、転職を有利にすることができるでしょう。
『機械設計エンジニアにおすすめの資格9選!メリットや注意点も解説します』
機械設計の転職ならベスキャリ機電で
機械設計エンジニアは、需要の高まりと人手不足を背景に、転職市場で有利な立場にあります。とくに、これまでのスキルや経験を的確にアピールできる人や、より大規模な企業や好待遇の職場へのステップアップを目指す人にとっては、年収アップのチャンスが十分に期待できるタイミングといえるでしょう。
転職を成功させるためには、自分のスキルや志向にマッチした企業と出会うことが不可欠です。そのためには、転職エージェントの活用がおすすめです。転職エージェントでは、専門のキャリアアドバイザーがあなたの経歴や希望条件を丁寧にヒアリングしたうえで、適性に合った求人を紹介してくれます。
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