未経験でも組み込みエンジニアになれるのか、文系出身だけど組み込みエンジニアに転職できるのかと疑問を持っている人も多いと思います。また、未経験から組み込みエンジニアを目指すには何が必要なのでしょうか。

この記事では、未経験でも組み込みエンジニアを目指せる理由を解説するとともに、必要なスキル、就職する方法、求人の探し方や転職成功のコツについて詳しく解説していきます。

組み込みエンジニアとは

まず、組み込みエンジニアとはどのような仕事なのかを解説しておきます。

仕事内容

組み込みエンジニアは、家電製品や自動車、産業用機器などに内蔵された専用コンピューター(マイコン)向けに、ソフトウェアやシステムの設計・開発を行う技術者です。これらの機器は、OSを搭載していないか、リアルタイムOS(RTOS)などの軽量なシステム上で動作することが一般的であり、限られたリソースの中でも高い信頼性と正確な動作が求められます。

組み込みエンジニアの具体的な業務内容には、次のようなものがあります。

  • センサーやモーターと連携するファームウェアの開発
  • Bluetooth、Wi-Fi、CANなどを用いた通信制御の実装
  • マイコンの仕様に最適化したプログラミング
  • ハードウェアとの動作確認やデバッグ

このように、ソフトウェア開発だけでなくハードウェアとの密接な連携が求められるのが特徴です。

組み込みエンジニアの年収

組み込みエンジニアの年収はどれくらいなのでしょうか。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、組み込みエンジニアの全国平均年収は約574.1万円とされています。国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は約458万円ですので、組み込みエンジニアの給与の水準が高いことがわかります。

そして、「年齢別の年収グラフ」を見ると、組み込みエンジニアは年齢が上がるにつれて年収が増加し、55~59歳でピークの約732万円に達することがわかります。その後、60歳以降は年収が減少する傾向が読み取れます。ただ、65~69歳で607.68万円と、高齢でも大きな年収が得られる傾向にあります。

このように、組み込みエンジニアは年齢・経験を重ねるごとに着実な収入アップが見込める職種であり、技術力の向上や専門領域での実績が高年収への鍵となると考えられます。

組み込みエンジニアの年収を徹底解説!将来の年収、年収を上げる方法も

未経験でも組み込みエンジニアを目指せる理由

組み込みエンジニアは未経験でも目指すことができます。その理由をまとめておきます。

人手不足

未経験から組み込みエンジニアを目指せる理由のひとつに、業界全体で深刻な人手不足が続いていることが挙げられます。組み込みシステムを扱う分野は、IoT機器や自動車、家電、産業機器など多岐にわたり、年々その需要が増加しています。一方で、それに対応できるエンジニアの供給が追いついていないのが現状です。

2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」では、「事業の課題」として「人材の確保・強化」が68%で最も高くなっています。また、厚生労働省の職業情報提供サイトでも、「システムエンジニア(組込み、IoT)」の有効求人倍率は5.88と高い状態です。

人手不足を背景とした企業の採用の強化があるので、組み込みエンジニアは未経験からキャリアを築きやすい分野といえるでしょう。

採用枠が広い

組み込みエンジニアを未経験から目指せる理由には、採用枠が広く設けられているからというものがあります。組み込みエンジニアは多くの業界で求められている職種であり、人材のニーズが高まっています。そのため、企業は「経験者優遇」にとどまらず、「未経験可」「ポテンシャル採用」といった形で採用枠を拡大しています。特に、中小企業やベンチャー企業では、育成前提での採用が一般的になっており、未経験者にもチャンスが多く用意されています。

現に、組み込みシステム技術協会の「新入社員に求める組込み技術知識と人物像」の「採用枠」の項を見ると、文系でも一定数が採用されていることがわかります。また、「AI・IoTなど成長が見込まれる分野には新たな発想が必要であることから、多様な人材を確保したい企業は、文系や高卒まで対象を広げる動きも続いている」とされています。

このように、さまざまな業界で多様な人材を受け入れる体制が広がっているため、組み込みエンジニアの未経験者でも十分に採用のチャンスがあるといえるでしょう。

産業の変化

産業構造の変化により、未経験からでも組み込みエンジニアを目指しやすい時代が到来しています。現代では、IoTの普及や自動車業界での自動運転技術の進化、さらには製造現場のスマートファクトリー化など、産業全体の急激な変化が起こっています。これにより、組み込み技術のニーズが爆発的に増加しており、企業側はこれまで以上に多様な人材を受け入れる姿勢を強めているのです。

実際、「2023年度 職種版 決定年収レポート」でも、組み込みエンジニアの採用ニーズ高まっている理由として、『「IoT(Internet of Things)の拡大」「自動車産業の進化」「スマートファクトリーと産業自動化」「医療技術の進歩」「エネルギー効率と環境への配慮」の5つ』が挙げられています。

このように、産業の変化が追い風となり、未経験者にとっても組み込みエンジニアへの転職が現実的な選択肢となっているのです。

転職が活発な職種

組み込みエンジニアは転職が活発な職種であり、未経験からでも参入しやすい分野といえます。

組み込み開発の現場では、製品ごとに使用するハードウェアやソフトウェアの環境が大きく異なります。そのため、ひとつの企業に長くとどまるよりも、さまざまな開発現場を経験することでスキルの幅を広げられると考えるエンジニアが多く、転職を前向きに捉える傾向があるのです。

さらに、組み込みエンジニアのスキルは、家電・自動車・医療機器・産業機器など、さまざまな業界で応用が可能です。そのため、業界をまたいだキャリアチェンジもしやすく、転職を後押しする要因のひとつとなっています。

このような背景から、企業による引き抜きやキャリアアップを目的とした転職が盛んに行われており、組み込みエンジニアは人材の流動性が高い職種といえるのです。

未経験から組み込みエンジニアに就職するメリット

未経験であっても組み込みエンジニアに就職することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

将来性が高い

組み込みエンジニアに就職する大きなメリットのひとつは、将来性が高いことです。組み込み技術はあらゆる分野で活用されており、今後も技術革新とともにその需要は増加し続けると見込まれています。特に、これらの技術は社会インフラや日常生活に深く関わっているため、一時的な流行にとどまらず長期的に必要とされるスキル領域といえます。

エンベデッドシステム・ソリューション市場の 現状と展望 2023年度版」を見ると、エンベデッドシステム・ソリューション市場は2022年度で3.8%増の1兆561億円となっており、順調に拡大しています。そして、2027年度まで年平均成長率5.3%で推移すると予測されています。

このように、組み込み技術は多様な分野で成長を続けており、それを支える組み込みエンジニアの将来性は非常に高いと言えるでしょう。

組み込みエンジニアの将来性は?将来に対するよくある不安、活躍する方法も解説!

賃金が上がりやすい

未経験からでも組み込みエンジニアに就職するメリットのひとつは、賃金が上がりやすい職種であることです。

組み込みエンジニアは、自動車・家電・医療機器・産業ロボットなど幅広い製品に組み込まれるソフトウェアを開発するため、高度な専門性と実務スキルが求められます。そのため、実務経験を積めば積むほど市場価値が高まりやすく、企業側からの評価も上がるのです。さらに、組み込み系は慢性的なエンジニア不足が続いているため、スキルを習得すれば転職市場でも優位に立ちやすく、昇給や条件アップが見込めるでしょう。

実際、「2023年度 職種版 決定年収レポート」を見ると、2022年度から2023年度の1年間の「技術職(組み込みソフトウェア)」の決定年収上昇幅は14万円でもっとも大きくなっています。

このように、組み込みエンジニアはスキルや実績に応じて賃金が上がりやすいため、成長志向のある人にとって非常に魅力的な職種といえるでしょう。

スキルを身につけられる

未経験からでも組み込みエンジニアに就職することで、実務を通じて専門的な技術スキルを身につけることができます。

組み込みエンジニアは、製品の制御や通信などを担うソフトウェアをハードウェアに組み込む役割を果たしており、C言語やC++などのプログラミング言語、マイコン制御、リアルタイムOS(RTOS)、IoT関連技術など、他の分野では得られにくい実践的なスキルを習得することが可能です。多くの企業では、未経験者向けに研修制度やOJTを整備しており、段階的に成長できる環境が用意されています。

組み込みエンジニアとして働くことで、未経験からでも着実に技術力を高め、エンジニアとしての市場価値を向上させることができるのです。

未経験から組み込みエンジニアを目指すのにあるとよいスキル

未経験から組み込みエンジニアを目指す場合には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。上でも紹介した「新入社員に求める組込み技術知識と人物像」を参考に、需要が高いとされているスキルを解説します。

C言語

未経験から組み込みエンジニアを目指すのであれば、C言語の習得は欠かせないスキルです。

C言語は組み込み開発の現場で最も多く使われているプログラミング言語であり、ハードウェア制御や低レベルな処理に特化しているため、効率的かつ安定したプログラムを作成するのに適しています。特に組み込みシステムはメモリやCPUの制約が大きいため、リソースを意識したプログラミングが求められ、それに最適化されたC言語が主流となっているのです。

調査データの「言語スキル」の項でも、C言語は60%以上でもっとも高くなっています。このように、C言語のスキルは未経験から組み込みエンジニアを目指すうえで重要な要素となります。

OS知識

未経験から組み込みエンジニアを目指すには、OS(オペレーティングシステム)に関する知識を身につけておくとよいでしょう。

組み込みエンジニアの仕事では、リアルタイムOSやWindows、LinuxなどのOSを扱う場面が多くあります。OSの知識があることで、スレッドの制御、メモリ管理、割り込み処理など、組み込みシステムの動作に関わる基本的な仕組みを理解しやすくなり、効率的かつ正確な開発が可能になります。

調査データでは、OSのなかでは「Windows」が最も高く80%以上の回答を集めています。このように、組み込みエンジニアを目指す未経験者にとっては、OSに関する基礎知識を習得しておくことが、スキルアップや実務での活躍に大きく役立つでしょう。

フローチャート

未経験から組み込みエンジニアを目指すには、フローチャートを理解して作成できるスキルを身につけておくとよいでしょう。

フローチャートは、プログラムやシステムの処理の流れを視覚的に表現する手段であり、論理的思考を整理するのに役立ちます。組み込み開発では、処理の順序や条件分岐を明確にすることが重要であり、フローチャートを使って設計や仕様を視覚化できると、開発効率やチーム内のコミュニケーションも向上させることができます。

フローチャートを活用できるスキルは、未経験者が組み込みエンジニアとして論理的に設計・実装を進める上で大いに役立つので身につけるのがよいでしょう。

ネットワーク知識

未経験から組み込みエンジニアを目指すには、ネットワーク知識を身につけておくとよいでしょう。

組み込み機器は単独で動作するものだけでなく、ネットワークを介して他のシステムや機器と連携するケースが増えています。そのため、IPアドレスやプロトコル、通信の仕組みといった基本的なネットワーク知識を持っていると、設計・開発・テストの各工程でスムーズに対応できるようになります。

逆に、実際の現場ではIoT機器や通信モジュールとの連携を行う場面が多くあり、TCP/IPやHTTP、MQTTといった通信プロトコルの基礎知識がないと、トラブル対応やシステムの理解に時間がかかってしまいます。ネットワーク知識を備えておくことは、組み込みエンジニアを目指す上での重要なスキルのひとつとなるでしょう。

コミュニケーション力

未経験から組み込みエンジニアを目指すには、コミュニケーション力を身につけておくことが重要です。

組み込みエンジニアは一人で完結する仕事ではなく、ハードウェア担当、ソフトウェア担当、品質管理、営業などさまざまな職種と連携しながら開発を進めます。そのため、スムーズな情報共有や認識のすり合わせを行うためのコミュニケーション力が求められるのです。

具体的には、仕様変更の確認やバグ報告のやりとり、チームでの進捗管理など、日常的に会話やメール、チャットでのやりとりなどの業務があります。未経験者であっても質問を的確にする力や、相手の意図をくみ取る力があることで、周囲と良好な関係を築きやすく、仕事も円滑に進められるようになるでしょう。

英語能力

未経験から組み込みエンジニアを目指すためには、英語能力を身につけておくとよいでしょう。

組み込みエンジニアの業務では、英語で書かれた技術ドキュメントや仕様書を読む機会が多くあります。さらに、海外製の開発ツールやライブラリを使用する場面も少なくありません。英語に慣れていれば、必要な情報をスムーズに理解・活用できるため、技術習得のスピードが上がり、対応できる業務の幅も広がります。

例えば、組み込み開発で用いられるリアルタイムOSやマイコン向けのSDKは、公式ドキュメントが英語のみというケースが一般的です。こうした資料を読み解ける力があれば、実装やトラブルシューティングも効率的に行えるようになるはずです。

このように、英語能力は未経験から組み込みエンジニアを目指す際の強い武器となります。まずは基礎的な技術英語に取り組むことから始めてみましょう。

未経験から組み込みエンジニアに就職する方法

未経験から組み込みエンジニアに就職するためには、どのような方法を取ればいいのでしょうか。

未経験採用企業に応募

未経験から組み込みエンジニアに就職するには、未経験者を積極的に採用している企業に応募するのが効果的です。

組み込みエンジニアの分野では、未経験者を採用して育成しようとする企業が増えています。こうした企業では、入社後に基礎から学べる研修制度やOJTが整っており、専門知識がなくてもスムーズに現場に入っていける可能性があります。

これらの企業では、学歴や職歴よりも「組み込みエンジニアとして成長したい」という熱意や、基礎的なITスキル、C言語などへの関心が重視される傾向にあります。そのため、志望動機やポートフォリオ、独学での学習経験をしっかりとアピールすることが重要です。

エージェントを利用する

未経験から組み込みエンジニアに就職するには、転職エージェントを利用するのも有効な手段です。

エージェントは、未経験者でも応募可能な非公開求人の紹介や、企業とのマッチング、履歴書・職務経歴書の添削、面接対策など、転職活動を総合的にサポートしてくれます。特に組み込みエンジニアという専門性の高い職種では、業界に精通したエージェントの支援があることで、希望に合った企業と出会いやすくなります。

また、転職市場の動向や企業が求める人物像を詳しく教えてくれるため、選考に向けた準備も具体的に行えるでしょう。未経験から組み込みエンジニアに就職を目指す際には、転職エージェントを積極的に活用することで、より効率的に内定獲得へと近づけるはずです。

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組み込みエンジニアは、IoTや自動運転、ロボット開発など多くの先端分野を支える重要な職種であり、将来性や収入面でも魅力のあるキャリアです。現在は人手不足が続いており、未経験者でも積極的に採用して育成する企業が増えているため、これからエンジニアを目指す方にも大きなチャンスがあります。未経験であっても、興味のある人はぜひ目指してみましょう。

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