組み込みエンジニアの将来性について不安を抱いている人も多いと思います。IoT技術の発展に伴い、組み込みエンジニアは高い需要がある職業です。しかし、AIをはじめとする先端技術の台頭があり、今後も高い需要が続くのか不安を感じるかもしれません。

そこでこの記事では、組み込みエンジニアの将来性について詳しく解説します。組み込みエンジニアの現況やよくある不安、将来にわたって長く活躍する方法などを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

組み込みエンジニアの現況

まずは組み込みエンジニアの現況について解説します。

市場は成長中

組み込みエンジニアが活躍する組み込みソフトウェアの市場は拡大を続けており、今後も成長が期待されています。

日本におけるエンベデッドシステム(組み込みシステム)の市場に関する調査データによると、同市場は2027年度まで年平均成長率5.3%で推移すると予測されています。

さらに、世界の組み込みシステム市場規模は、2022年に947億7000万米ドルと評価されており、市場は2023年の1,000億4000万米ドルから2030年までに1,618 億 6000 万米ドルに成長すると予測されています

このように、組み込みシステムの市場は現在成長しており、今後も大きく拡大することがわかります。

人材への需要が高い

組み込みソフトウェア業界では人材への需要が高まっており、多くの企業が人材の確保・強化を重要な課題としています。

組み込み/IoT産業の動向把握等に関する調査では、組み込みソフトウェア開発を手掛ける企業の68%が、現在の事業における課題として「人材の確保・強化」を挙げました。

また、同調査では、人材確保・強化への具体的な取り組みとして「不足人材の雇用」という対処方法を挙げた企業の割合が55%と最も高く、多くの企業が組み込みエンジニアの採用を進めていることがわかります。

このように、組み込みソフトウェア業界では人材の確保・強化が重要な課題となっており、人材に対する需要が現在高いことがわかるでしょう。市場が拡大するので、人材への需要は将来も続くでしょう。

組み込みエンジニアの将来性が高い理由

組み込みシステムの市場が拡大しており、組み込みエンジニアは高い将来性が期待できる職業です。ここでは、組み込みエンジニアの将来性が高い他の理由も解説します。

IoTの普及

IoTの普及によって組み込みエンジニアの需要が高まることも、将来性が期待できる理由として挙げられます。組み込みエンジニアは、ネットワークや家電などのIoTに組み込まれるアプリケーションやソフトウェアも開発します。

国内のIoT市場について調査したデータによると、2023年のIoT市場の規模は6兆4,672億円であり、2028年には9兆4,818億円に拡大すると予測されています。IoTに関連する市場が発展することで、組み込みエンジニアの需要も増加するでしょう。

また、総務省が公開している令和4年度版情報通信白書では、2021年度の世界のIoTデバイス数は292.7億台でしたが、2024年には398.5億台にまで増加するとの予測がされています。特に「産業用途」のデバイスが最も増加し、「コンシューマー」や「医療」分野でも拡大が期待されており、組み込みエンジニアが携わる領域が多様化すると考えられます。

IoT市場は今後の拡大が予測されるため、組み込みエンジニアが活躍する場が増え、将来の需要が高まっていくと考えられます。

AIの発達

組み込みエンジニアの将来性の高さには、AIの発達も関係しています。

令和5年度版情報通信白書によると、日本のAIシステムの市場規模は、2022年時点で3,883億6,700万円でしたが、2027年には1兆1,034億7,700万円にまで拡大すると予測されています。

このようなAIの発達により、家電製品や産業機器、車両などのさまざまな機器に「組み込みAI」が搭載されるようになるでしょう。従来は特定のタスクしか実行できなかった機器が自律的な判断・最適化を行うようになります。そして、製品に組み込むAIシステムの開発、実装を行うエンジニアが必要とされるので、AIに関わる組み込みエンジニアの役割はさらに重要になると考えられます。

AIの発達が進むことで、組み込みエンジニアの活躍の場が広がり、今後もその需要が高まり続けるでしょう。

将来的にも人材不足

組み込みエンジニアの人材は今後不足すると考えられており、そのことも高い需要につながる理由となります。

厚生労働省の職業情報提供サイトによると、令和5年度の組み込みエンジニアの有効求人倍率は5.88であり、1人あたり5件以上の求人がある状態が続いています。

また、経済産業省のIT人材育成の状況等に関するレポートでは、2030年までに40万人~80万人規模のIT人材が不足すると試算されており、この傾向は組み込みエンジニアにも影響を及ぼすと考えられます。

このように、将来において人材不足が続くと予想されるため、組み込みエンジニアの需要は今後も高まり続けると考えられます。

組み込みエンジニアの将来性に関するよくある不安

組み込みエンジニアには高い将来性が期待できますが、さまざまな観点から不安を抱いている人もいるはずです。ここからは、組み込みエンジニアの将来性に関してよくある不安を紹介します。

仕事がなくならないか

将来組み込みエンジニアの仕事がなくなるのではないかと懸念している人もいるのではないでしょうか。

しかし、組み込みエンジニアの仕事は今後もなくならないと考えられます。というのも、組み込みシステムは自動車や家電製品、医療機器、通信機器、ゲーム機など幅広い製品において必要とされています。そのため、それらの製品の製造が減少することによって組み込みエンジニアの仕事がなくなるということはないでしょう。

AIなどの新しい技術の発展によって組み込みエンジニアの仕事が奪われるという懸念もありますが、システム設計や要件定義、コードのチェックやテストなどの開発の全工程をAIのみで対応するのは難しい状況です。そのため、AIの発達により組み込みエンジニアの仕事がなくなることはないでしょう。

このように、組み込みエンジニアは今後も必要とされ続けるため、仕事がなくなることは考えにくいといえます。

新しい技術についていけないのではないか

組み込みエンジニアの将来に関連して、新しい技術についていけないのではないかといった不安を感じる人もいます。しかし、組み込みエンジニアの仕事では、従来から使われている技術を使う場面も多く、新しい技術を身に着けなければ仕事がなくなるというわけではありません。

組み込みエンジニアの仕事にはAIやIoTなどの新しい技術や製品を扱うこともありますが、新しい技術ばかりを取り入れて仕事をしているわけではありません。ハードウェアの制御には、C言語やアセンブリ言語といった昔から使われている言語が適しており、長年使われている技術やプログラミング言語を使うことも多いです。

また、組み込みソフトウェアの開発はチームで作業を分担して行われることが多く、それぞれの役割が決まっているため、エンジニアは特定の技術に集中しながら経験を積むことができます。1つの製品を開発する際には、チームごとにハードウェアの制御、通信機能の実装、UIの設計など異なる作業が割り振られ、全員が最先端の技術を用いて開発を行うわけではありません。

このように組み込みエンジニアの仕事では長年使われている技術も重視されており、開発作業をチームで分担して行うことが多いため、新しい技術を身に着けなければ仕事がなくなるというわけではないのです。

業務の負担が大きくなりすぎるのではないか

組み込みエンジニアの将来に関する不安として、業務の負担の増加が挙げられます。需要の増加と人手不足などによってひとりあたりの業務量が大きくなってしまうと、過酷な働き方をしなくてはならないかもしれません。

職種別「残業時間」の調査によると、2020年4月~6月における組み込みエンジニアの平均残業時間は月25.2時間であり、ほかの職種と比べても残業時間は多くありません。

さらに、近年ではAI技術を活用したコーディングやデバッグ作業の自動化が進んでおり、業務の効率化が進み、今後は残業時間が短くなると考えられます。技術革新による効率化が進むことで、将来の組み込みエンジニアにおいては負担が軽減される可能性が高いと考えられます。

将来活躍できる組み込みエンジニアになる方法

将来活躍できる組み込みエンジニアになるためには、今からどのようなことを考えておけばよいでしょうか。ここからは、将来活躍できる組み込みエンジニアになる方法について解説します。

最先端テクノロジーを学ぶ

最先端テクノロジーを学ぶことで、組み込みエンジニアとしての活躍の幅を広げることができます。

組み込み/IoT産業の動向把握等に関する調査によると、企業が将来的に強化、または新たに獲得したい技術としては「AI技術」「クラウド技術」「ビッグデータ」「IoTシステム構築技術」が挙げられています。そのため、これらの技術を身につけることで、組み込みエンジニアとして活躍の幅を広げられるでしょう。また、最先端テクノロジーの知見を持っていることを証明するのには、資格の取得も役立ちます。

例えば、エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、IoTを含む組み込みシステムの知識・スキルが問われる国家試験です。この試験では組み込みシステムの設計や開発、保守だけでなく、IoTに関する知識も身につけられます。さらに、RustやKotlinなどの新しい開発言語を習得することで、より幅広いプロジェクトに対応できるようになるでしょう。

このように、最先端テクノロジーを学ぶことは、組み込みエンジニアとしての成長につながり、将来的なキャリアの選択肢を広げる大きな強みとなります。

コミュニケーション力を高める

コミュニケーション力を高めることで、組み込みエンジニアとしての業務が円滑になり、活躍の幅を広げることができます。

組み込みソフトウェアの開発には、各専門分野のエンジニアや関係者との連携が必要であり、正確な情報共有や円滑な意思疎通が求められます。また、クライアントにプロジェクトの内容を説明する際には専門用語をわかりやすく伝える力が求められます。組み込みエンジニアとしてキャリアを築いていくときにはマネジメントなども必要になってきますが、マネジメントおいてもコミュニケーションスキルは必要になるでしょう。

このようなコミュニケーション力を高めることで、組み込みエンジニアとしてさらなる活躍が期待できるでしょう。

英語力を高める

将来活躍できる組み込みエンジニアを目指すなら、英語力を高めるのもよいでしょう。

組み込みエンジニアに関する最新の技術情報は英語で発信されることが多く、日本語に翻訳されるまでに時間がかかるため、英語を読むことができると最新情報をいち早く得られます。

加えて、海外企業との共同プロジェクトやリモート会議の機会も増えており、英語でのやりとりが求められる場面が多くなっています。海外拠点に所属するスタッフとリモートで連携する際、英語でコミュニケーションをとることができると、プロジェクトをスムーズに進められるでしょう。

このように、英語力を高めることで最新技術に素早く対応でき、海外企業とスムーズにやりとりできるようになるため、活躍の場がさらに広がります。

将来も活躍できる組み込みエンジニアに就職・転職する方法

将来にわたって長く活躍できる組み込みエンジニアとして就職・転職するには、どのような方法があるのでしょうか。ここからは、組み込みエンジニアが就職・転職する方法を紹介します。

大学に通う

組み込みエンジニアを目指している場合、大学に通って専門的な知識を身につけておくと、長く活躍できる組み込みエンジニアとして就職しやすくなるでしょう。

組み込みエンジニアにはソフトウェアとハードウェアの両方の知識が求められますが、特にハードウェアの理解には高度な専門知識が必要となります。大学では電気工学や電子工学、機械工学、プログラミングなどを学ぶことができるので、そういった学部・学科を専攻するとよいでしょう。また、大学にある就職支援制度の活用により、組み込みエンジニアとしてのキャリアをスムーズにスタートさせられる可能性もあります。

大学に通い、組み込みエンジニアに必要な知識を体系的に学ぶことで、将来にわたって長く活躍できる組み込みエンジニアとして就職できるようになるでしょう。

講座・研修に参加する

組み込みエンジニアに就職・転職する方法として、講座・研修に参加するという選択肢があります。団体や企業が行っている講座や研修を活用することで、ソフトウェアとハードウェアに関する知識を短期間で効率的に習得できる可能性があります。

例えば、組込みシステム産業振興機構の組込み適塾では、実際の開発現場を想定したケーススタディを通じて、ハードウェアの基礎やネットワーク技術を学ぶことができます。また、オンラインで受講可能な講座も多く、仕事をしながらでもスキルを身につけることができます。

特に、未経験者や異業種からの転職を目指す場合には、このような学習の機会を確保するのがよいでしょう。将来にわたって長く活躍する組み込みエンジニアに就職・転職するためには、講座・研修の活用が有効な手段となります。

エージェントに依頼する

将来も活躍できる組み込みエンジニアに就職・転職する方法として、転職エージェントに依頼するのもおすすめです。

転職エージェントは、求職者に対するヒアリングを通じて適性を把握し、未経験者可の求人や公開されていない非公開求人など、より多くの選択肢を提供してくれます。また、給与交渉や面接対策などのサポートにも対応しています。

実際、転職エージェントの利用有無と年収に関する調査では、転職エージェントを利用した求職者の約4割が「年収が上がった」と回答しています。転職エージェントに依頼することで、将来も活躍できる組み込みエンジニアとして、自分に合った転職先を見つけるチャンスを広げることができます。

組み込みエンジニアの就職・転職はベスキャリ機電で

組み込みシステムの市場規模は今後拡大することが予測されている一方で、人材不足が続くため、組み込みエンジニアは将来性のある仕事といえます。将来も活躍できる組み込みエンジニアとしてキャリアを築くには、自分に合った企業に就職・転職をしましょう。

「ベスキャリ機電」では、エンジニア1人ひとりに合った求人情報や案件を紹介しています。運営実績は15年以上で、上場企業も含む豊富な取引実績があることから、未経験可の求人や非公開求人なども紹介しています。また、専任のアドバイザーが求人情報の提案だけでなく、面接や職務経歴書のアドバイス、キャリアパスの相談に対応するため転職について不安を抱いている人も安心です。組み込みエンジニアとして転職を考えている人は、ベスキャリ機電にぜひご登録ください。

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