エンジニアとしてキャリアを積んでいくなかでフリーランスエンジニアという選択肢を検討する人も多いと思います。フリーランスエンジニアは会社に属さなくてもよいですし、さまざまなメリットを得ることができます。ただ、フリーランスエンジニアになるときには、案件が得られるのか、安定的に収入が得られるのかなど、不安もあると思います。

そこで今回は、フリーランスエンジニアの働き方、職種、年収事情を紹介します。フリーランスエンジニアのリスクや仕事を獲得する方法などについても解説するので、参考にしてください。

フリーランスエンジニアとは

Wikipediaでは、「特定の企業や団体に所属したり、特定の組織の活動に専従したりしておらず、したがって雇用契約や労働契約の関係を結んで労働力を提供するのではなく、業務委託などにより自らの技能をサービスや成果物を通じて提供することによって生活する、社会的に独立したライフスタイルの個人事業主を指す総称」とされています。つまり、フリーランスエンジニアとは、企業に属さずクライアントから業務委託などの契約で仕事を行い、自身のスキルを提供するエンジニアのことです。

フリーランスエンジニアは、自らのスキルに合った案件を探し、自ら期間や報酬などの条件を交渉して仕事を行います。1日の勤務時間や勤務日数、休日も自分で決めることができ、仕事内容や量もある程度自分で決めることができます。ただし、企業に属しているわけではないので、エンジニア自身で仕事の全責任を負わなくてはならないという特徴もあります。

日本のフリーランスエンジニア

フリーランスの事情は日本ではどのような状況なのでしょうか。その人口や属性などから解説します。

フリーランスエンジニアの人口

令和2年のフリーランス実態調査によれば、日本のフリーランス人口は465万人(本業214万人/副業248万人)とされています。

さらに、ITフリーランスに関する市場調査によると、2021年のITフリーランスの人口は23.1万人とされています。ITフリーランスにはWebディレクターやWebデザイナーなども含まれますが、多くはエンジニアであると考えられます。

2021年におけるフリーランスエージェント業界の市場規模は1,039億円であり、2021年の869億円から比べると19.6%も増加しているというデータもあり、フリーランスエンジニアの人口は今後も増えていくと予想されます。

フリーランスエンジニアの属性

日本のフリーランスエンジニアの属性はどのような状況なのでしょうか。「フリーランス白書2023」によると、エンジニア・技術開発系のフリーランスの男女比率は、男性が82.5%、女性が15.9%となっています。多くは男性であることがわかります。

また、「フリーランスITエンジニア動向調査」によると、フリーランスエンジニアの年齢層で最も多いのは25~29歳とされています。10~20代の若手人材の登録も増えており、フリーランスエンジニアの若年化が進んでいることがわかります。

さらに、「2024年版フリーランスエンジニア白書」では、フリーランスエンジニアの働き方に関する調査において、半数以上は専業で活動していると回答しています。

フリーランスエンジニアの現状については以下の記事で詳しく解説しています。

フリーランスエンジニアの実態とは?客観的データから調査します!

フリーランスエンジニアの職種

フリーランスエンジニアにはさまざまな職種がありますが、その職種は主に開発エンジニアとインフラエンジニアに分けられます。それぞれの職種を解説します。

開発エンジニア

開発エンジニアは、Webサイトやスマホアプリ、業務システムなどの開発に従事する職種です。クライアントの要望に基づき、ソフトウェアやシステムの設計・開発を行うエンジニアのことを指します。

システムエンジニア

システムエンジニア(SE)は、クライアントへのヒアリングなどから仕様を決定し、システムやソフトウェアの設計・開発を行う職種です。システムエンジニアはシステム開発の中心的な役割を担い、豊富な知識と技術力、マネジメント能力を活かしてシステム開発を成功に導くことが求められます。

システムエンジニアはプログラミングなども行う場合もありますが、要件定義や設計、構築、管理などの上流の仕事を主に行います。システムエンジニアの仕事内容としては、ヒアリングや要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、テスト、保守・運用などがあります。

Webエンジニア

Webエンジニアは、WebサイトやWebアプリの開発を担当し、フロントエンドからバックエンドまでの設計・開発を担う職種です。

ユーザーが見るフロントエンドを開発するエンジニアと、裏側のシステム部分を開発するエンジニアが存在します。それぞれに、仕様決定から設計、プログラミングでの実装、運用までを行います。

Webエンジニアには、Webサイトやアプリの表部分を構築するスキルだけでなく、サーバーや通信、ECシステムや決済システム、WordPressなどのCMS、クラウドなどに関する知識も求められる場合があります。

プログラマー

プログラマーは主に、システムエンジニアが作成した仕様書に基づき、プログラミング言語を用いて実装をする職種です。システムやWebサイト、アプリケーションなどの開発において、プログラミングを担当します。プログラミング以外にも、テストやバグの確認なども行います。

クライアントの要望や機能を実現するために、あらゆるプログラミング言語のなかから最適なものを用いて素早く的確に実装作業を行うことが求められるので、プログラマーには幅広い技術知識と高いコーディングスキルが必要になります。

インフラエンジニア

インフラエンジニアとは、ネットワークやサーバー、データベースなどの情報システム基盤(ITインフラ)の設計・構築に関わる職種です。ITシステムが円滑に運用されるよう、設計・構築だけでなく、運用監視や保守、障害対応まで幅広い業務を担当します。

サーバーエンジニア

サーバーエンジニアはサーバーの設計・構築・運用を担当し、物理的なサーバーやWebサーバー、メールサーバーなど、さまざまなサーバー環境の構築、維持管理を行う職種です。

サーバーの導入や運用時に、システムが安定して稼働するようサーバー内の設計やメンテナンス作業を行うとともに、ハードウェアの選定やOSの設定、セキュリティ対策、定期チェックなど幅広い業務を担います。

サーバーエンジニアには、コストや通信速度、セキュリティに配慮しながら、顧客のサーバーを設計し、物理サーバーの構築作業などを行うことが求められます。ネットワークやOS、セキュリティなど、幅広い知識が求められる職種です。

データベースエンジニア

データベースエンジニアは、データの格納や管理を効率的に行うデータベースの設計・構築・運用を担当する職種です。

クライアントの要件に応じて、どんなデータをどのような順序で保存するかの設計や、データを取り出しやすいような仕組みの構築を行います。データの整合性を維持しながら、迅速な検索や更新ができるように最適化を行うことが求められます。データのセキュリティ対策やバックアップ管理などの運用も行います。

OracleやMicrosoft SQL Serverなどのサーバーの知識と、MySQLなどのようなデータベースを操作するための知識とスキルが必要になります。

ネットワークエンジニア

ネットワークエンジニアは、社内ネットワークやインターネットなど、企業や組織内のネットワーク環境の設計・構築・運用を行う仕事です。

クライアントが求めるネットワークを実現するための要件定義を行い、安全で快適なネットワークの設計・構築作業を行います。ネットワークを構築するためのケーブルやサーバーなどの物理的な機器の設置も行うとともに、回線速度や負荷のチェック、セキュリティ対策なども行います。

システムの安定性を維持するための、トラブル対応やセキュリティ対策、メンテナンスの知識も必要とされる仕事です。

セキュリティエンジニア

セキュリティエンジニアは、情報セキュリティに特化し、ネットワークやシステムをサイバー攻撃から守る役割を担います。

クライアントの機密情報や個人情報を守るために、システムやアプリケーション、ネットワークの設計・構築を行うとともに、脆弱性診断、監視、ポリシー策定などを行います。サイバー攻撃が発生した場合には、分析やインシデント対応なども行います。

高度なセキュリティ対策の知識やスキル、最新のサイバー攻撃の知識、インシデント対応のスキルなどが必要になります。

セキュリティエンジニアとは?仕事内容や年収、必要なスキルまとめ

クラウドエンジニア

クラウドエンジニアは、クラウド環境上のサーバーやインフラの設計・構築・運用を行うエンジニアのことです。

AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドプラットフォームを用いて、クライアントの要件に応じた柔軟なインフラを構築し、最適なシステム環境を提供します。安全にクラウドサービスを運用するため、セキュリティ対策の設計や監視、リスク管理にも対応することが求められます。

クラウドサービスの仕様や利用方法、サーバーやネットワークの知識、ミドルウェアの知識が求められますし、設計だけでなく開発のスキルも必要な職種です。

このような多くの職種でフリーランスエンジニアとして働くことができます。

フリーランスエンジニアの年収

フリーランスエンジニアになるにあたって、特に不安となるのは収入面ではないでしょうか。ここでは年収事情について解説します。

フリーランスエンジニアになると年収は上がる?

会社員からフリーランスになることでエンジニアの年収は上がるのでしょうか。

フリーランスエンジニア働き方調査では、フリーランスエンジニアになって収入に変化があったかという質問に対して、会社員のときに年収400万円以上だったエンジニアの約73%が年収が上がったと回答しています。

また、フリーランスエンジニアになって収入は上がったかという質問に対して、約6割が上がったと答えていうデータもあります。これらのデータを見ると、フリーランスエンジニアになることでだいたい6割程度は年収が上がることがわかります。

フリーランスエンジニアの年商

では、フリーランスエンジニアの平均年商はどの程度なのでしょうか。フリーランスエンジニア白書を見ると、フリーランスエンジニアの2024年の年商は以下のような結果となっています。

年商 割合
200万円未満 5.9%
200~300万円未満 10.5%
300~500万円未満 25.8%
500~800万円未満 27.1%
800~1,000万円未満 16.5%
1,000~1,200万円 6.3%
1,200万円以上 7.6%

これを見ると、「500万円以上800万円未満」がもっとも多く27.1%であり、次に多い「300万円以上500万円未満」が25.8%という結果になっています。そして、フリーランスエンジニアの平均年商は約632万円でした。

前回調査と比べると、200万円未満と200~800万円未満の割合が減少し、800~1,200万円以上の割合が増加しており、より高収入が稼げるようになっていることがわかります。このように、フリーランスエンジニアの平均年収は増加傾向にあり、今後もエンジニアの需要拡大とともに増加していくことが予想されます。

高収入を稼いでいるフリーランスエンジニアについては、以下の記事で詳しく解説しています。

フリーランスエンジニアで年収2000万円稼げる?稼ぐ方法や必要なスキルも解説

フリーランスエンジニアになる時に知っておきたいリスク・注意点

フリーランスエンジニアは魅力的な働き方である一方で、リスクがあることも理解しておきましょう。フリーランスエンジニアになる前に知っておきたいリスク・注意点を紹介します。

社会的信用

フリーランスエンジニアは、会社員と比べて社会的信用が低くなりやすい点に注意が必要です。フリーランスエンジニアは企業に属しているという信頼や、役職などの肩書がないので信用が低くなる傾向にあります。

実際、上の調査でも、フリーランスエンジニアになって感じたデメリット・不満な点として社会的信用が低いことは25.7%で最も高くなっています。

社会的信用が低いと、クレジットカードやローンの審査で不利になってしまう可能性があります。クレジットカードの作成やローンの申請は、独立する前に済ませておくと良いでしょう。

将来設計

フリーランスエンジニアにおいては将来設計に注意が必要です。フリーランスは会社員と違い、長期的な雇用や安定した給与といった保証がないため、年齢を経てからのキャリアについて考えておかなくてはなりません。

会社員であれば勤務歴が長くなると給与は上がりますし、役職などにつくことでも給与が高くなっていきます。フリーランスの場合には年齢を重ねると、若い人材と同じような案件は得られなくなるかもしれません。年齢を重ねると体力の低下などにより、これまでの働き方を維持するのが難しくなる可能性もあります。

より高度な知識や経験が必要な案件やキャリアを活かした仕事を獲得できるように、キャリア戦略をあらかじめ考えておかなくてはなりません。法人を起業して信用を高め、長期的に仕事を得続けられるような仕組みを作っておくのもよいでしょう。

フリーランスエンジニアの寿命については、以下の記事で詳しく解説しています。

フリーランスエンジニアとして働ける寿命は短い?何歳まで働けるかを解説

顧客確保

フリーランスエンジニアになるときには、顧客確保のリスクについて理解しておいたほうがよいです。フリーランスエンジニアは自分で顧客を確保しなくてはなりませんし、安定した収入を得るためには継続的な顧客確保が不可欠ですが、営業の経験のあるエンジニアは少ないでしょう

実際、中小企業庁の調査データによると、「フリーランスになる際に直面した課題」として最も多いのは「顧客の確保」でした。

顧客を獲得するためにフリーランスエンジニアには営業力や交渉力、プレゼン力なども必要になってきます。ただし、フリーランス専門のエージェントなどを利用することで、案件の紹介などをしてもらえるので、そういったサービスを知ることが大事かもしれません。

フリーランスエンジニアとしてキャリアを始める方法は以下の記事で詳しく解説しています。

フリーランスエンジニアの始め方とは?始めた後に成功するためのポイントも解説

フリーランスエンジニアが安定的に仕事を獲得する方法

フリーランスエンジニアとして収入を得ていくには、安定的に仕事を獲得することが大切です。以下では安定的に仕事を得ていく方法を紹介します。

エージェントに相談

フリーランスエンジニアが安定して仕事を獲得するには、エージェントに相談するのもおすすめです。フリーランス向けのエージェントは、保有する多くの案件のなかからエンジニアに合った案件を紹介してくれるというサービスです。

案件を選定・提案してくれるため自分で案件を探す必要がなく、効率的な仕事の獲得が可能になります。転職エージェント利用者は、非利用者と比べ転職時の年収が上がりやすいというデータがあることからも、エージェントを利用することでより高い報酬を得ることができる可能性があります。

また、エージェントは業界の動向やクライアント企業の内部情報なども持っているので、フリーランスエンジニアの悩みや不安に対して的確なアドバイスをもらえるのも魅力です。面接対策など、案件を獲得するためのサポートも行ってくれます。

紹介

フリーランスエンジニアが安定して仕事を獲得するためには紹介が有効です。友人や知人、既存の顧客などからの案件を紹介してもらうことで、イチから営業するよりも確度高く仕事を得ることができます。

中小企業庁の調査データのフリーランスが顧客を獲得するための方法についてのアンケートでは、既存顧客からの紹介が47.1%、友人・知人からの紹介が35.6%、同業企業・経営者からの紹介が23.5%となっています。このように、紹介はフリーランスが仕事を獲得するために有効な手段であることがわかります。

紹介してくれる人脈を増やすためにも、交流会やコミュニティに参加するなどもよいでしょう。

求人サイト

フリーランスエンジニアが安定的に仕事を得るためには、求人サイトを活用することが有効です。求人サイトのなかにはフリーランスに特化したサービスがあります。こういったフリーランス向けの求人サイトには多数の案件が掲載されています。

求人サイトでは、職種や言語、OS、報酬額など、さまざまな条件で検索することができるので、希望する条件に合った仕事を見つけやすく、効率的に案件に応募することができます。

ただし、求人サイトの案件によっては競争率が高いことがあり、経験やスキルが不足していると、希望する案件を獲得しにくいこともあります。スキルや実績を積み重ね、ポートフォリオを充実させることで案件の獲得率を高めましょう。

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フリーランスエンジニアは自由な働き方が魅力ですが、収入の不安定さや社会的信用の低さといったリスクもあるため注意と対策が必要です。安定的に収入を得るためには、求人サイトやエージェントなどをうまく活用しましょう。

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