設備保全の仕事に役立つ資格には何があるのか、転職やキャリアアップに資格は有利なのか、未経験でも取得しやすい設備保全の資格を知りたい、といった疑問を持つ人は多いと思います。

設備保全の資格を取ろうと思っても、自身の業務やキャリアプランと関係ない資格や、難易度が合っていない資格を受験してしまうと、後悔する結果となってしまうかもしれません。また、他にも資格取得において抑えておかなくてはならない注意点などもあります。

この記事では、設備保全が資格を取得するメリットを紹介するとともに、おすすめの資格を紹介します。また、資格取得における注意点や資格取得以外のキャリアの高め方も解説しますので、資格取得を考えている人は参考にしてください。

設備保全が資格を取得するメリット

設備保全が資格を取得するメリットには何があるのでしょうか。

収入アップにつながる可能性がある

設備保全の仕事で資格を取得することは、収入アップにつながる可能性があります。

資格を保有していることは専門性や知識・技術の証明となり、企業からの評価が高まりやすくなります。企業としても、保全スキルの高い人材は設備トラブルの防止や生産性向上に貢献する存在とみなされ、待遇面での優遇を行うケースが多くあります。

また、社内に「資格手当制度」や「報奨金制度」を設けている企業も多く、特定の資格を取得することで毎月の給与に加算されたり、一時金が支給されたりすることもあります。こうした制度がある職場では、資格を取ることがそのまま収入アップにつながるため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

工場の設備保全の年収については以下で解説しています。

工場の設備保全の年収は?年収を上げる方法、将来求められる能力も紹介します

信頼性が高まる

設備保全の仕事においては、資格を取得することでクライアントからの信頼が高まりやすくなります。

資格は、一定の専門知識と技術を持っていることの客観的な証明となるため、クライアントに対して「この人になら任せられる」という安心感を与えられます。特に、設備の安定稼働や緊急対応が求められる場面では、信頼できる技術者の存在が重要視されます。

例えば、電気主任技術者や機械保全技能士といった資格を持っていれば、法令遵守や高度な点検・保守作業にも対応できるとクライアントに判断されやすくなるでしょう。結果として、継続的な契約や新たな案件の受注につながる可能性があるのです。

キャリアの選択肢が広がる

設備保全職が資格を取得することで、キャリアの選択肢を大きく広げることができます。

資格を保有していることは、知識やスキルの証明になるだけでなく、その分野への適性や熱意をアピールする材料にもなります。企業によっては、管理職への昇進条件や、入社後に資格取得が義務付けられている場合もあり、早い段階で資格を取得しておくことで、将来的なキャリア形成がしやすくなります。

転職活動においても、資格があることで採用担当者に即戦力としての印象を与えることができ、選考を有利に進められる可能性があるでしょう。また、設備保全の経験と資格を活かして、将来的に独立を目指す道も考えられます。

このように、資格取得は設備保全職にとって単なるスキルアップにとどまらず、昇進・転職・独立といった多様なキャリアパスを広げる助けとなるかもしれません。

設備保全におすすめの資格6選

設備保全におすすめの資格を紹介します。

1.機械保全技能検定

「機械保全技能検定」は、製造現場における機械設備の点検・整備・修理などの保全作業に必要な技能を評価する国家資格です。この資格は「機械系保全作業」と「電気系保全作業」に分かれており、それぞれ1級~3級までの等級が設けられています。実務に即した内容が多く、保全の基礎から応用までを体系的に学べるのが特徴です。

機械保全技能検定が設備保全におすすめな理由は、現場での実践力を証明できる点にあります。機械保全技能検定には学科試験だけでなく実技試験もあるため、机上の知識だけでなく、実際に手を動かして機械を扱う能力も身につけられます。特に製造業などでは、機械トラブルへの対応力が重視されるため、機械保全技能検定を取得していることは大きな信頼につながるはずです。

2.自主保全士

「自主保全士」は、製造現場の第一線で働く作業者が、設備の異常にいち早く気づき、自ら点検・清掃・給油などの基本的な保全活動を行えるようにするための認定資格です。一般社団法人日本プラントメンテナンス協会が認定しており、TPM(Total Productive Maintenance)の理念に基づいて、現場力の底上げを目的とした実践的な資格です。レベル1とレベル2の2段階に分かれており、段階的にスキルを高めることができます。

単なる保全担当者だけでなく、現場の作業者自身が「設備を守る主体」として行動できるようになる点が設備保全に有効な理由です。設備トラブルの未然防止や、ダウンタイムの削減といった効果も期待でき、全体の保全レベルを高めることにもつながります。現場の自主性を高めたい企業や、日常点検の質を向上させたい方にとって有効な資格です。

3.電気工事士

「電気工事士」は、電気設備の工事や点検、修理などを安全かつ適切に行うために必要な国家資格で、「第一種電気工事士」と「第二種電気工事士」の2種類があります。第一種は主にビルや工場などの大規模な電気設備工事を扱うのに対し、第二種は住宅や小規模施設の電気工事を対象としています。試験は学科と実技に分かれ、法令や電気理論の知識、配線作業の技術が問われます。

工場やプラント、ビル管理の現場においては、電気設備の保守・点検業務が必須だからこそ、設備保全の資格は重要です。電気トラブルは生産ラインの停止や事故にもつながるため、設備保全担当者が電気工事士の資格を持っていることで、迅速かつ的確な対応が可能になります。また、現場での電気作業には有資格者しか従事できないケースも多く、業務の幅が広がることで、キャリアアップや収入増にもつながるでしょう。

4.電気主任技術者

「電気主任技術者」は、工場やビルなどに設置されている高圧電気設備の保守・点検・管理を行うために必要な国家資格で、「第三種」「第二種」「第一種」の3つの区分があります。扱える電圧の上限や設備の規模に応じて区分されており、第三種は比較的取得しやすく、ビル管理や中小規模の工場などで活躍できます。試験では電気理論、法規、機器の構造など専門性の高い内容が問われ、合格には高度な知識が求められます。

一定規模以上の電気設備を有する事業所では、法令により電気主任技術者の選任が義務づけられています。この資格を持っていれば、設備保全において法的にも不可欠な存在となり、企業内での評価や待遇も向上しやすくなります。また、電気トラブルのリスク低減や保守の精度向上にもつながるため、現場の信頼性を高めるうえでも有効な資格といえるでしょう。

5.QC検定

「QC検定(品質管理検定)」は、日本規格協会が実施している、製品や業務プロセスの品質を継続的に改善するための知識と手法を問う検定試験です。検定は1級から4級まであり、品質管理の基礎から統計的手法、マネジメントスキルまで幅広い内容が段階的に学べます。現場作業者から管理職レベルまで、業種を問わず幅広い人材が対象となる資格です。

保全業務の中で発生する設備トラブルや品質不良の原因を論理的に分析し、再発防止や効率改善に役立てられます。特に、トラブルの傾向分析や保全計画の立案に統計的手法を取り入れることで、保全活動の精度が向上します。また、チームでの改善活動やPDCAサイクルの実践にも直結する知識が得られるため、現場全体のレベルアップにもつながる重要な資格といえるでしょう。

6.危険物取扱者

「危険物取扱者」は、消防法に基づき、引火性や爆発性のある危険物を安全に取り扱うために必要な国家資格です。資格区分には「甲種」「乙種(第1類~第6類)」「丙種」があり、扱える危険物の種類や範囲が異なります。なかでも、設備保全の現場で多く使用されるのは「乙種第4類」であり、これによってガソリン・灯油・軽油・潤滑油などの引火性液体の取り扱いが可能になります。

この資格が設備保全におすすめな理由としては、工場やプラントなどの現場では、潤滑油や洗浄剤、溶剤などの危険物を日常的に使用・管理する場面が多いためです。万が一の漏洩や火災を防ぐためにも、危険物の性質や取り扱い方法、保管・管理に関する知識は重要です。

資格を取得することで、安全管理意識が高まり、現場のリスク低減や法令遵守の徹底につながります。また、有資格者であることが企業の安全体制の強化にも寄与し、信頼性の高い人材として評価されやすくなるでしょう。

設備保全の資格取得における注意点

設備保全が資格を取得するときには、以下のポイントに気をつけましょう。

受験資格があるものがある

設備保全の資格の中には、受験資格が設けられているものがあるという点に注意しましょう。これは資格の信頼性や実務との関連性を保つために、一定の実務経験や学歴などを受験条件としているケースがあるためです。

例えば、「機械保全技能士」や「電気主任技術者」などの資格では、実務経験や学歴などの条件が必要になることがあります。そのため、受験を検討する際には、まず自分の経歴や現在の職務内容が受験資格を満たしているかどうかを確認することが重要です。

また、同じ資格でも等級や区分によって条件が異なる場合があるため、公式な試験要項や認定機関の情報をよく確認するようにしましょう。不明点があれば、早めに問い合わせを行っておくことがおすすめです。

目的に合った資格を選ぶ

設備保全の資格を取得する際には、自分の目的に合った資格を選ぶことが大切です。

設備保全の業務は幅広く、機械系・電気系・安全管理など、分野ごとに求められるスキルや知識が異なります。そのため、目指すキャリアや現在の職務に直結する資格を選ばないと、せっかく取得しても活かしきれない可能性があります。

たとえば、将来的に電気主任技術者として活躍したい場合には「第三種電気主任技術者」などの国家資格が有効ですが、現場での日常点検や軽微な修理を行うことが中心であれば「機械保全技能士」などの技能系資格のほうが即戦力として評価されやすい可能性があります。逆に、興味だけで無関係な資格を取得しても、実務との関連性が薄く評価されにくいことがあるので注意しましょう。

資格だけでなく実務が重要

設備保全の分野では、資格の取得だけでなく実務経験も同様に重要です。

現場では、設備の構造や過去のトラブル事例、使用状況などを総合的に判断し、状況に応じた柔軟な対応が求められます。こうした対応力は、日々の業務を通じてしか身につけることができませんので、資格はあくまで基礎知識を証明するものであり、実際の現場で必要とされるスキルや判断力とは別のものであると理解しておきましょう。

実務を積むことで、設備ごとの特性やトラブルの傾向を把握できるようになり、突発的な不具合にも的確に対応できる力が養われます。資格取得はもちろん有効ですが、それだけに依存せず実務経験を積み重ねることが重要です。

設備保全がキャリアを高める方法

設備保全がキャリアを高める方法は資格を取得すること以外にもあります。

転職する

設備保全としてキャリアを高めたいのであれば、転職を選択肢のひとつとして検討するのもおすすめです。現在の職場で携われる業務や設備に限りがある場合などは、スキルや経験が限定されてしまいます。より高度な設備や先進的な生産環境に関わることで、新たな知識や技術を習得し、市場価値を高めることができるでしょう。

たとえば、中小企業で基本的な保全業務しか経験していなかった人が、大手製造業に転職することでIoT設備の保守や予防保全体制の構築といった高度な業務に関わり、キャリアの幅を大きく広げられるような場合もあります。

設備保全としてのキャリアを高めたい場合は、より成長できる環境を求めて転職を検討してみてもよいでしょう。

部署異動する

設備保全としてキャリアを高めるには、部署異動も有効です。

部署異動によって新たな業務領域や設備に触れる機会が増えるため、これまでにない知識やスキルを習得できる可能性があります。保全業務といっても、その内容は配属先によって大きく異なり、多様な経験を積むことでキャリアの幅を広げることができるのです。

例えば、製造現場のライン保全から生産技術部門や設備設計部門に異動することで、設備の構造的な理解が深まり、より高度な視点で保全業務に取り組めるようになるでしょう。設備保全としてのキャリアを高めるためには、部署異動によって多様な経験を積むことを視野に入れてみてください。

マネジメントを学ぶ

設備保全としてキャリアを高めるためには、マネジメントを学ぶのも有効な方法です。

企業は現場力だけでなく、組織全体を動かせる人材を求めています。現場の第一線でのスキルや知識に加えて、チーム全体の進行管理や人材育成、コスト管理などのマネジメントスキルを習得することで、管理職やリーダー職へのキャリアアップが目指せるようになるでしょう。

日々の保全業務をこなすだけでなく、設備トラブルの発生頻度を分析し、再発防止のための仕組みを整えるといった視点は、マネジメント的なアプローチの一例です。また、チームメンバーの業務割り振りや育成計画を考える力も、現場責任者として求められる重要な要素です。現場での技術力に加えてマネジメントを学ぶことで、設備保全職としてのキャリアの選択肢が広がるでしょう。

設備保全の就職・転職はベスキャリ機電で

設備保全の仕事において、資格取得は収入アップや信頼性向上、キャリアの選択肢を広げるうえで大きなメリットがあります。ただ、資格を選ぶ際には「目的に合っているか」「受験資格を満たしているか」などの確認をするようにしましょう。

さらに、設備保全のキャリアを高めるためには、資格の取得だけでなく転職も有効な手段です。ただ、どのようなキャリアプランが自分にとって最適なのか、どの企業が本当に自分のスキルや希望に合っているのかを見極めるのは簡単なことではありません。特に設備保全の分野では、業界ごとの技術レベルや働き方、求められる知識・経験が大きく異なるため、悩む人は多いと思います。

そんな方は、ぜひ「ベスキャリ機電」をご利用ください。「ベスキャリ機電」は、機械・電気・設備系職種に特化した転職支援サービスです。設備保全に精通したキャリアアドバイザーが1人ひとりにつき、保有資格や経験、今後のキャリアビジョンを丁寧にヒアリングしたうえで、最適な企業やポジションを紹介してくれます。

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