製造業への就職を考えているけれど、どんな職種があるのか、年収はどれくらいか、自分に向いているのかと不安を感じている人も多いと思います。製造業にはさまざまな職種、会社がありますが、事前に情報収集をして就職しなければ、入社後に「思っていた仕事と違った」と感じてしまうこともあり得ます。

そこでこの記事では、製造業の最新動向や平均年収、主な職種の特徴、向いている人の傾向について解説します。未経験からでも就職を成功させるポイントも紹介しますので、製造業に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。

製造業の近況

はじめに、製造業の近況について解説します。

製造業の売上

製造業は日本経済を支える重要な産業のひとつです。「2023年経済構造実態調査」によると、製造業の売上は453兆8466億円で、全産業のうち25.0%を占めています。そして、製造業の中で特に売上高の多い業種としては、輸送用機械器具製造業、化学工業、食料品製造業となっています。

さらに「2023年版ものづくり白書」では、製造業の1人当たり名目労働生産性が2011年以降上昇を続け、2021年には1,077万円に達したと報告されています。これは全産業平均の約1.3倍に相当し、製造業が高い付加価値を生み出す産業であることを示しています。

このように、製造業は日本のなかで重要な産業であるとともに、売上や給与の面でも好調といえるでしょう。

製造業への就職状況

製造業への就職状況はどのような状況なのでしょうか。「2024年版ものづくり白書」によれば、製造業の従業員数過不足DI(業界の人手不足感を示す指標)は、2017年第4四半期から2019年第1四半期までマイナス20.0台と人手不足でしたが、2020年には一時プラスとなりました。

ただ、コロナ禍を経て再び人手不足が拡大し、2024年第1四半期時点ではマイナス18.9と、感染拡大以前の水準に戻っています。つまり、現在の製造業では安定した需要がありますが労働力の確保が追いついていないということがわかります。

また、就業者数の推移を見ると、2022年で1,044万人、2023年で1,055万人とわずかに増加しています。全産業に占める割合でも、2022年が15.5%、2023年が15.6%と微増しており、学生や若手の就職先としての関心が戻ってきていることが伺えます。

このように、製造業は依然として高い経済的意義と就業機会を持ち、安定したキャリアを築きたいと考える人にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。

製造業の職種

製造業における職種には、どのようなものがあるのでしょうか。

企画

企画職は事業戦略や市場のニーズをもとに、新商品やサービスのコンセプトを立案し、ターゲット市場や価格設定、販売戦略などを決定する職種です。市場や競合製品、トレンドの調査・分析を行い、「どんな商品を、誰に、どの価格帯で提供するか」といった設計思想をまとめ、社内の研究開発・設計部門・営業部門と連携します。

製造業の企画職は、製品開発の起点となる重要なポジションです。市場ニーズの把握から商品化までを橋渡しする役割を担うため、論理的思考・分析力・コミュニケーション力などの多様なスキルが求められます。また、企画職には市場の洞察から具体的な開発への道筋を見つけ、さらには事業の成功までを見据える経営的視点も不可欠です。

研究・開発

製造業では市場のニーズや技術革新のスピードに対応するため、新しい技術や製品を生み出すことが求められます。研究・開発職は、新しい素材や構造、製造方法の開発や製造プロセスの改善などを通じて、企業の技術的優位性を確立する役割を担います。

研究・開発職では、材料の特性を調べる基礎研究から、製品化を目指した応用研究、さらに実際の製造に向けた試作・検証までを担当します。製造プロセスの効率化や品質向上、コスト削減といった目標に貢献しながら、市場のニーズに応える製品を生み出す原動力となるので重要です。

研究・開発職には論理的に物事を考える力や探究心、何度も試行錯誤を重ねる粘り強さや忍耐力が求められます。

設計

製造業における設計職とは、製品の仕様や構造を図面や3Dデータとして具体化する重要な役割を担う職種です。顧客のニーズを正確に把握し、技術的な要件やコスト面、量産化のしやすさなどを考慮しながら、最適な設計を行うことが求められます。

製品を製品の形にする役割を担うため、設計ソフトの操作スキルや製図の知識はもちろんのこと、機械工学や材料工学といった専門的な知識が求められます。さらに、製造部門や営業部門と連携して要件を調整するためのコミュニケーション能力や、複雑な条件を整理して最適解を導き出す論理的思考力も必要です。

生産技術

製造業における生産技術職は、製造プロセスの設計や改善、設備の導入、品質管理体制の構築などを行う仕事です。

製造工程においてはコストを抑えるとともに、生産効率を最大化しながら製品の品質を安定化することが求められます。生産技術において量産体制の構築、生産設備の選定・導入、作業標準の作成、工程改善、品質トラブルの原因分析などを行い、製造プロセスを最適化します。

生産技術職は製造業における生産活動の円滑な運営を支える要であり、品質の維持やコスト削減、納期遵守において欠かせない存在です。

生産管理・品質管理

生産管理職は、製品を安定して納期通りに届けるための計画と調整を行う職種です。資材の調達や在庫管理、パートナーとのやり取り、生産進捗の把握など、工程全体を俯瞰してコントロールする力が必要です。

品質管理職は、製品の不良を防ぐための検査や工程分析、トラブル発生時の原因調査と再発防止策の立案などを担います。顧客の信頼を守る最後の砦ともいえるポジションで、技術と論理的思考力、そして関係部門との調整力が不可欠です。

生産管理職は効率的な計画と調整によって製品の安定供給を実現し、品質管理職は厳格な検査と分析によって製品の信頼性を保証します。両職種はそれぞれ異なるアプローチから製造プロセスを支え、企業の競争力と顧客満足度を高める上で、重要な役割を果たしています。

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営業

製造業における営業職は、企業と顧客をつなげ、製品やサービスの販売を促進する職種です。営業は顧客のニーズをヒアリングし、自社製品の提案・見積もり・納期調整・フォローアップまでを行います。

顧客との信頼関係を築く力に加えて、製品や技術への理解も欠かせないため、技術営業(セールスエンジニア)として働くケースも多く見られます。また、顧客からのフィードバックを社内に伝えることで、次期製品の改善にも貢献するなど、社外との橋渡し的な存在でもあります。

営業職は単に製品を販売するだけでなく、顧客と企業を繋ぐ最前線の架け橋として、市場の声を製品づくりに活かし、企業の持続的な成長と顧客満足の向上を直接的にけん引する、欠かせない存在といえるでしょう。

製造業の年収事情

製造業への就職を考えている人にとって、年収水準や職種ごとの給与体系は関心の高いテーマでしょう。以下では、製造業全体の平均年収、役職別の給与、そして分野ごとの年収について解説します。

製造業就職者の平均年収

令和5年賃金構造基本統計調査」によると、製造業に就職した正社員の平均年収は324.7万円でした。性別で見ると、男性は345.0万円、女性は251.5万円となっており、男女間で90万円以上の差が生じています。製造業の平均年収は全15産業中10番目の水準にあることから、年収の水準としては中程度といえます。

また、この平均年収は製造業の幅広い職種を含みますが、機械設計や電気設計、半導体のエンジニアなどのような専門知識が必要な仕事だと、以下のように年収は大きく上がります。

半導体エンジニアの年収とは?将来性や高収入を目指す方法、必要な能力を解説

2023年版中小企業白書」によると、大企業・中小企業ともに年収水準はやや低下しています。ただし、年収水準の低下は他の産業でも共通して見られる傾向であり、製造業のみの傾向ではないと考えられます。

役職ごとの給与

製造業では役職に応じて給与水準が大きく変わる傾向があります。「令和5年民間給与実態調査」に基づく、技術系職種の4月分の平均支給額は以下の通りです。

役職 平均支給額
工場長 731,657円
技術部長 704,930円
技術部次長 646,766円
技術課長 606,279円
技術課長代理 533,093円
技術係長 511,739円
技術主任 439,393円
技術係員 363,416円

役職が上がるにつれて支給額が大きくなる傾向があり、マネジメント層になると月収70万円以上となるケースも珍しくないということがわかります。製造業に就職して年収を高めるには、昇進をすることでより高い役職を得ることが重要です。

分野ごとの年収

製造業の中でも、職種や業界、分野によって年収に違いが生まれます。「職種別平均年収ランキング」によると、製造業の中では「研究・開発・設計(電気・電子・半導体)」の平均年収が823.6万円、「生産技術・品質管理(機械・メカトロ・自動車)」の平均年収が760.2万円と高い水準となっています。

また、分野別では以下の順に年収が高い傾向にあることもわかります。

  • 電気・電子・半導体分野
  • 機械・メカトロニクス・自動車分野
  • 素材・化学・食品・バイオ分野

このように、同じ製造業であっても分野によって年収には差があります。これは、それぞれの分野で求められる専門性や技術力、市場の成長性、製品単価の違いなどが影響しているためと考えられます。こういった背景を理解したうえで、自身のキャリアプランやスキルセットに合った分野を選ぶことが、将来的に収入を高めるポイントといえるでしょう。

製造業が向いている人とは

ここでは、どのような人が製造業に向いているのかを解説します。

モノづくりが好き

製造業に向いている人の特徴のひとつは、モノづくりが好きであることです。

製造業では、製品や部品を企画・設計し、形にしていく工程に深く関わるため、モノづくりへの情熱が仕事のやりがいや成果につながる重要な要素となります。また、製造業の仕事では細かな作業が多いですし、完成まで試行錯誤を続けなくてはならないことも多いので、モノづくりが好きでなくてはモチベーションを保って仕事を続けられない可能性もあります。

日々の業務の中で自らのアイデアが形になり、製品として世の中に出ていく過程に喜びを感じることができるようなモノづくりが好きな人は製造業に向いているといえるでしょう。

工学や図面に苦手意識がない

工学や図面に苦手意識がない人も製造業に向いているといえます。

製造業では、製品の構造や仕様を理解するために図面の読解力が必要ですし、基本的な工学的な知識が求められる場面が多くあります。特に、設計や開発、品質管理、生産技術などの職種では、図面の内容を正確に把握し、技術的な判断を下すことが日常的に行われます。そのため、こういった工学や図面に対して苦手意識がない人は業務への適応が早く、スムーズに成果を出しやすいといえるでしょう。

理系出身者でなくとも訓練や経験によってこれらは習得できますが、最初から苦手意識がない人のほうが習熟も早く、業務への適応力も高くなります。逆に、工学や図面に抵抗がある人は初期段階でつまずく可能性があるかもしれません。

コツコツとした作業が得意

製造業に向いている人の特徴として、コツコツとした作業が得意であることが挙げられます。製品が完成するまでには多くの工程が必要ですし、製造業では細かな作業を繰り返し行うことが多く、正確性と継続性が求められます。

設計・開発に限らず、生産管理や品質保証、保守点検などにおいても、細かな確認や継続的な作業の積み重ねが不可欠です。だからこそ、製造業ではひとつひとつの工程を丁寧にこなせる人が評価される傾向があります。

完成までに時間がかかる場合が多いので、短期的な成果や変化を求めるタイプの人にとってはストレスになる可能性がありますが、逆にコツコツとした作業に没頭しやすい人は製造業に向いているでしょう。

製造業に向いている人とは?適性や職種別の特徴などから解説

製造業への就職を成功させるポイント

製造業への就職を成功させるためのポイントを解説します。

業界研究・企業研究をする

製造業への就職を成功させるためには、業界研究・企業研究をすることが重要です。

製造業は企業や業種、製品、工程ごとに求められるスキルや社風が大きく異なります。したがって、自分に合った就職先を見極めるためにも、業界全体の構造や主要プレイヤー、各企業の特徴などを把握しておく必要があります。また、業界や企業研究をすることで、志望動機に説得力が増し面接で好印象を与えられる可能性もあります。

企業ごとの事業内容や社風、将来性などを調査し、自分の価値観やキャリアプランに合致する企業を見つけることでミスマッチを回避しましょう。

口コミをチェックする

製造業への就職を成功させるためには、事前に企業の口コミをチェックすることも大事です。

口コミには実際にその企業で働いた人の生の声が反映されており、求人情報や企業サイトだけでは分からない職場の雰囲気や労働環境、社風、待遇の実態を知る手がかりになります。それらを知ることで、就職したあとのミスマッチを防ぐことができるでしょう。

口コミを調べる際には、口コミサイトやSNS、掲示板などを調べたり、企業説明会やOB・OG訪問をしたり、エージェントに相談したりといった方法があります。口コミを調べるときには、複数の情報源を活用して企業の実態を多面的に把握することが大切です。

製造業に特化したエージェントを利用する

製造業への就職を成功させるためには、製造業に特化したエージェントを利用するのが効果的です。製造業に特化したエージェントであれば、業界の求人動向や企業ごとの特徴、社風、採用基準などを深く理解していますし、求職者一人ひとりに合った企業を提案してくれます。専門性が高いため、業界未経験者でも自分に合った求人を見つけやすいでしょう。

また、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策、給与交渉といったサポートも行ってくれるエージェントなどもあり、より就職の成功率を高めてくれるでしょう。

特に製造業では、非公開求人の情報を保有していたり、大手企業とのつながりを持っていたりするエージェントを利用することで、より条件の良い職場に出会える可能性が高まるでしょう。

エージェント利用者のほうが非利用者よりも年収が高くなるという調査もありますので、収入の面でもエージェントを利用することにはメリットがあります。

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製造業へ就職することで、自動車や船舶、機械、電気、半導体などの製造に携わることができます。モノづくりが好き、工学に関心があるという人は製造業を目指してみてはいかがでしょうか。ただし、自分に合った企業への就職を成功させるためには、業界や職種の理解、適性の見極め、就職活動の戦略が欠かせませんので、エージェントの利用がおすすめです。

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