生産技術職からの転職や生産技術職への転職を考えている人のなかには、転職は難しいのではないかと考えている人も多いと思います。製造業にはさまざまな職種がありますが、生産技術職というのは専門性が高く他の職種と業務内容も異なるので、転職が難しいと不安を抱くかもしれません。
そこでこの記事では、生産技術職からの転職が難しいのかどうか、おすすめの転職先、転職を成功させる方法などを解説します。また、未経験での生産技術への転職は難しいのかどうかについても説明します。生産技術の分野での転職を考えている人は参考にしてください。
目次
生産技術とは
はじめに、生産技術の仕事について解説します。
仕事内容
生産技術の主な仕事内容は、製造現場の効率化と品質向上を図るための技術的な支援を行うことです。
具体的には、生産ラインの設計・構築、設備の選定と導入、作業手順の標準化、コスト削減や品質向上のための工程改善などを行います。また、現場のトラブル対応や新製品の量産立ち上げ支援など、幅広い業務に関わります。
単なる製造の裏方でなく、製造現場の改善を主導するとともに、企業の利益に直結する戦略的な役割を担います。生産技術職は、製造現場と開発部門、品質管理部門などとの橋渡し役になることもあり、技術力や現場対応力だけでなく調整力も求められる仕事です。
生産技術の人口
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、日本における生産技術職の従事者数は305,190人とされています。
また、「生産技術者の未来実態調査」を見ると、全社における生産技術部門の人数は3%未満がもっとも多い結果となっています。業種分類で見ると、装置系でも「3%未満」がもっとも多く、約50%の企業の回答があり、加工・組立系では「3%〜5%」がもっとも多く約30%の企業が該当しました。
このように、企業内での生産技術部門の人口は少ないですが、加工・組立系の業種では若干人口が多くなっていることがわかります。
生産技術の重要性
生産技術は製造業においてどれだけ重要なのでしょうか。上の生産技術者の未来実態調査では、「企業の持続的成長にはイノベーションが不可欠で、ものづくり機能の中核を担う生産技術部門がその核になる」と述べられています。
また、大企業の31.6%、中小企業の38.1%が「生産技術・生産管理・品質管理」を重要な競争力要素として挙げているという調査もあります。さらに、「『生産技術職の未来』調査」では、63.8%の回答者が、生産技術部門の「社内認知度が高い」と答えており、生産技術は他部署からの重要と認識されている職種であることが分かります。
このように、生産技術部門は企業にとって重要で、製造業の競争力や収益力を根幹から支える存在であるといえるでしょう。
生産技術からの転職は難しい?
生産技術職からの転職は難しいのでしょうか。生産技術は高い専門性と知識を備えることになるので、転職は難しくないと考えられます。ここでは、どんな職種に転職がしやすいのか、異業種へも転職しやすいのかなどを解説します。
製造業の別職種に転職しやすい
生産技術職は、製造業の別職種に転職しやすいといえます。というのも、生産技術で培った知識やスキルは、製造業の他職種でも高く評価されやすいからです。
生産技術では、生産計画の立案や進捗管理、資材調達、在庫管理など、製造業の全体像を把握しながら業務を行うため汎用的な知識やスキルが得られます。他職種でもそれらを活かして活躍することが期待されるのです。
例えば、生産技術で培った工程や在庫管理の知識は、購買や物流、品質管理などの業務でも重宝されます。また、製造現場と営業部門との調整経験がある人材は、営業技術職やカスタマーサポートなど、社外対応が求められる職種への転職で評価されやすいでしょう。
このように、生産技術で得られるスキルや知識は汎用性が高く、製造業内の他職種へ転職する際の強みとなるのです。
生産技術の知識と経験は異業種でも活かせる
生産技術の知識と経験は、製造業以外の業種でも活かせます。
生産技術職では、工程設計、品質改善、コスト削減、設備導入、トラブル対応など、多様な業務を行うので、「課題解決能力」「論理的思考力」「プロジェクト管理能力」などの汎用的なスキルが身につきます。これらのスキルは、異なる業種においても通用する普遍的なビジネススキルといえるでしょう。
製造業以外のIT業界や物流業界、建設業界などでも、生産性向上や業務効率化の知見は重宝されますし、生産ライン改善で培ったPDCAのノウハウは、サービス業や小売業の現場改善にも応用することができるでしょう。また、製造業における生産ラインの自動化・DXが進む中で、システム開発やIoTベンダーなどIT分野との親和性も高まっています。
生産技術からのおすすめの転職先
では、生産技術から転職をする場合には、どのような職種や業種があるのでしょうか。
同業他社の生産技術
生産技術からの転職先には、同業他社の生産技術職があります。現在の生産技術の職場で培った専門知識や経験が、同じ業界の生産技術であればほぼそのまま活かせるためです。特に、同じ製品ジャンルや製造プロセスを持つ企業であれば、即戦力としての活躍が期待できるでしょう。
職業情報提供サイトによると、生産技術職の有効求人倍率は4.24と高く、多くの企業で生産技術が人材不足であることが分かります。だからこそ、同業他社であっても転職をしやすい傾向があるでしょう。
生産技術としてのスキルや経験を活かしやすい同業他社への転職は、キャリアを維持しながら新たな成長も期待できる有力な選択肢です。
同業界の別職種
生産技術から転職を考える際には、同じ業界の別職種への転職もおすすめです。生産技術職で培った専門知識や現場感覚、工程管理のスキルは、同じ製造業界の他職種に転職するうえでも大きな武器です。特に以下のような職種では、製造業における工程改善や品質管理、設備導入の知見を活かすことができます。
- 設計・開発職:生産技術を経験することで、生産性や量産性を意識した製品設計を行うことができるでしょう。
- 生産管理・SCM:製造工程の流れを把握していることで、より現実的かつ効率的なスケジューリングが可能になります。
- 品質保証・品質管理:不具合の原因分析や再発防止策の立案において、生産現場の実態を理解していることが大きな強みとなります。
このように、生産技術で培った知識や経験は同業界の別職種でも高く評価されるため、業界知識を活かしながら新たなキャリアに挑戦したい方にとっては有力な選択肢といえるでしょう。
異業種・異職種
生産技術からの転職を検討する際には、異業種・異職種へのチャレンジも視野に入れるとよいでしょう。生産技術職で培った論理的思考力や問題解決力、プロジェクト管理能力といった汎用性の高いスキルは、他業種・他職種でも活かすことができます。
また、「異業種転職の実態調査」によれば、異業種に転職した人の中で「エンジニア(設計・生産技術・品質管理)」職出身者は58.3%と最も多く、生産技術を含む技術職出身者が異業種でも高く評価されていることが分かります。
異業種・異職種のなかでも、特に以下のような仕事は生産技術の経験を活かすことができるでしょう。
機電エンジニア
生産技術からの異職種の転職先としては機電エンジニアがおすすめです。機電エンジニアとは、機械や電気、半導体などの分野で設計・開発、運用などを行う仕事です。
機電エンジニアがおすすめな理由としては、生産技術職で得られる知識やスキルが、機電エンジニアの業務と高い親和性を持っているからです。具体的には、生産技術における設備導入時の仕様検討や立ち上げ、トラブルシューティング、制御機器の理解、改善提案などの経験は、機械・電気を横断する実務が求められる機電エンジニアにとって大きな強みとなります。
また、製造現場での実践的な知見や、関係部署との折衝経験も、プロジェクト推進力として評価されやすいでしょう。
コンサル
生産技術職からの異職種転職として、コンサルタント職もおすすめの選択肢です。
生産技術職で培った現場改善や業務効率化のスキルは、コンサルタントとしてクライアント企業の課題解決に直結します。特に、製造業向けの業務改善コンサルやIT導入支援、サプライチェーン最適化の分野のコンサルでは、現場に即した視点を持つ人材が重宝されます。
加えて、プロジェクトマネジメント経験や部門間の調整力といった対人スキルも、コンサル業務において役立つでしょう。
IT系エンジニア
生産技術の異職種の転職先にはIT系エンジニアもおすすめです。
生産技術で求められる論理的思考力や課題解決力、システム的な視点は、IT分野でも評価されます。特にITエンジニアの業務では、システムの設計・構築・運用といったフローにおいて、工程管理やプロセス改善の経験が活かされる場面が多くあります。
また、製造業におけるIoT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、ものづくりの知見を持ったIT人材のニーズも高まっています。製造業向けのITソリューションを開発・提供する企業では、生産現場の知識を持つエンジニアが重宝されるでしょう。
生産技術の転職を成功させるためのポイント
生産技術の転職を成功させるには、どのようなポイントに気を付けるのがよいでしょうか。
業績の良い企業の特徴を知る
生産技術の転職を成功させるためには、業績の良い企業の特徴を知ることが重要です。
業績の良い企業は安定した経営基盤があり、設備投資や人材育成にも積極的な傾向があります。さらに、業績が安定していれば、福利厚生が整っていたり給与水準が高かったりするというメリットもあるでしょう。
上の生産技術者の未来実態調査の箇所でも、業績の良い企業には「社内で生産技術部門の認知度が高い」という共通点があると説明しました。生産技術部門が経営から重視され、開発投資や人材育成にも力を入れているので、生産技術へ転職をする際にも業績は重要な指標になるでしょう。
転職だけを目的としない
転職だけを目的としないことも、生産技術の転職におけるポイントのひとつです。
現在の仕事から離れたい、生産技術の仕事とは別の仕事をしたいというように、転職することだけを目的としてしまうと、企業選びや業務内容の理解が不十分になりがちです。その結果、入社後に「思っていた仕事と違う」「自分の強みが活かせない」といったミスマッチが起こるリスクが高まります。
特に生産技術から転職する場合の職種は業務の専門性が高いので、自身の経験やスキルがどのようにフィットするかを見極めなくてはなりません。転職をゴールと考えるのではなく、自分の目指す方向性や価値観に合った職場で、どのような成長や貢献ができるかを考えるのがよいでしょう。
エージェントや求人サイトを利用する
生産技術の転職を成功させるためにおすすめの方法はエージェントや求人サイトの利用です。エージェントや求人サイトを利用することで、自分では見つけにくい非公開求人にアクセスできるほか、業界に詳しいアドバイザーからのアドバイスを受けられるというメリットがあります。生産技術で培った知識やスキルを活かせる仕事なども教えてもらえるでしょう。
また、エージェントは企業ごとの採用傾向や選考ポイントを熟知しているため、応募先ごとに適切な対策をアドバイスしてくれます。生産技術職では改善提案の実績や現場との調整力が重視されるケースが多いので、そういったポイントを押さえた職務経歴書の書き方や面接での伝え方などをサポートしてもらえるでしょう。
転職エージェント利用者のほうが非利用者よりも年収が高くなるという調査もあるので、年収の面でもエージェントを利用したほうが有利になるでしょう。
生産技術の年収については以下の記事で詳しく解説しています。
『生産技術の年収とは?将来の年収、年収を上げる方法などを解説』
未経験での生産技術への転職は難しい?
未経験だけれども生産技術を目指したいという人もいると思います。未経験から生産技術へ転職することは難しいのでしょうか。
製造業は人材不足
未経験者が就職できるかどうかは、需要が大きく影響します。人材が足りている状況では、未経験者を採用する必要がありません。生産技術における人材の需要はどうなっているのでしょうか。
経済産業省の「2024年版 ものづくり白書」を見ると、2022年の製造業の従業員の過不足感を示す指数(DI値)はマイナス18.9となっており、製造業全体では人材不足となっています。生産技術は製造業の企業のなかで必ずといっていいほど設置されますし、専門的な知識やスキルの習得が必要だからこそ、生産技術もまた人手不足である可能性があります。
未経験であっても、学ぶ意欲と現場への理解を深める姿勢があれば、転職のチャンスは十分にあると考えられるはずです。
※「製造業 就職」の記事へのリンク
異業種からの生産技術への転職も可能
異業種からでも未経験から生産技術へ転職することは可能です。特に大学や高専で機械、電気、化学、情報などの理系分野を学んでいる場合は、基礎的な技術知識があるとみなされ、未経験でも採用対象となる可能性があります。実際に「未経験可」や「ポテンシャル採用」といった求人も一定数存在しており、若手人材を育成する姿勢のある企業では、意欲や学ぶ姿勢が重視されます。
また、英語力がある場合は、海外工場とのやり取りや輸入機器のマニュアル対応などで重宝されますし、グローバル展開をしているメーカーでは特に評価されやすくなります。さらに、CADの操作スキルがあると実務への適応力としてアピールできるでしょう。
このように、理系のバックグラウンドや特定のスキルがあれば、未経験であっても生産技術職に転職しやすいでしょう。
情報系業種もおすすめ
未経験から生産技術に転職する場合は、情報系業種もおすすめです。
経済産業省の理工系人材育成に係る分析データによると、電気系業種の生産技術職は理系もしくは電気系の学科の卒業生が割合が多いですが、情報系業種の「生産技術・製造・施工」は、文・教育・社会系学科を卒業した人が割合が30%以上を占めています。つまり、情報系業種のほうが理系の素養がない未経験者を採用しているということが伺えます。
これは、情報系業種における生産技術職が、従来の機械や電気の専門知識に加えてITリテラシーや論理的思考力、コミュニケーション能力といった、幅広いスキルを重視している傾向があるためと考えられます。未経験から生産技術職を目指す場合には、情報系業種も検討しましょう。
生産技術の転職ならベスキャリ機電で
生産技術職からの転職や生産技術への転職は難しいのではないかと思う人も多いと思いますが、ポイントを抑えることで転職を成功させることができます。生産技術を経験することでさまざまな知識やスキルを得られるので、それらを活かして転職をしましょう。また、未経験可の求人も多いので、生産技術を目指すのもおすすめです。そして、生産技術の転職を成功させるためにはエージェントの活用がおすすめです。
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