フリーランスエンジニアとして活動するうえで、単価交渉は収入を左右する重要なプロセスのひとつです。契約時には適正な報酬を交渉しなくてはなりませんし、契約後にも単価変更を交渉する場面などもあるでしょう。この単価交渉のタイミングや交渉の仕方などに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、フリーランスエンジニアが単価交渉を行うべきタイミングや交渉の手順、交渉を成功させるためのポイントを詳しく解説します。これからフリーランスエンジニアになろうと考えている人やフリーランスだけれど収入アップを目指したいという方は、ぜひ参考にしてください。

フリーランスエンジニアとは?職種やリスク、仕事獲得方法などを解説

フリーランスエンジニアが単価交渉すべき時とは

フリーランスエンジニアが仕事をする中で単価交渉が必要になるのは、どのようなケースなのでしょうか。まずは、単価交渉すべき時について解説します。

案件の内容が報酬と見合わない時

案件の内容と提示された報酬が見合わない場合、フリーランスエンジニアは単価交渉をすべきです。

必要なスキルや業務量に対して報酬が低すぎると、適正かつ十分な収入が得られず不利益を被ってしまいます。報酬が適正でなければ、仕事のモチベーションや生活に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

そのため、経験や実績をアピールし適正な単価を確保することが重要です。たしかにフリーランスとして独立直後は低単価で案件を受けがちですが、いつまでもその単価で受け続けるわけにはいきません。安易に低単価の案件を受けず、スキルや業務量に見合った報酬を得るために単価交渉を行いましょう。

契約時よりも業界の報酬水準が上がった時

契約時よりも業界の報酬水準が上がった場合も、フリーランスエンジニアは単価交渉を検討すべきです。

近年、IT業界ではエンジニアの需要が高まり、それに伴い報酬水準も上昇しています。契約時の単価が据え置かれたままでは、ほかのエンジニアよりも報酬が低いままになってしまいます。

フリーランスの場合は、自ら働きかけて交渉しなければ単価を上げることは難しいです。業界の報酬水準を定期的に確認し、自身の価値に見合った報酬を交渉しましょう。

契約を長く継続している時

長く契約を継続している場合も、単価交渉を行うのがよいかもしれません。長く案件を行うことで自身のスキルは向上していきます。報酬もそれに見合った価格へと調整する必要があるでしょう。

会社員であれば、勤続年数の増加とともに給与が上がるのが一般的です。同じように、フリーランスも報酬を上げる交渉をしたほうがよいでしょう。

フリーランスはひとりで行える業務量には限りがあります。時間あたりや案件あたりの単価を上げなくては、常に同じ金額になってしまうでしょう。経験やスキルに見合った年収へとするためにも、契約を継続している場合には単価を上げる交渉をしましょう。

フリーランスエンジニアが単価交渉しやすいタイミング

単価交渉を成功させるためにはタイミングが大切です。タイミングを見誤ってしまうと、交渉しても結果が出ない可能性があります。フリーランスエンジニアが単価交渉しやすいタイミングを紹介します。

新しい期の前

新しい期が始まる前は、単価交渉の絶好のタイミングです。

企業は年間の予算を期初に決定することが多いです。一方、一度決めた計画や予算を途中で変更するのは難しいです。そのため、期が始まる前に交渉することで、予算編成の段階で報酬の見直しを考慮してもらいやすくなります。

企業が予算を柔軟に調整しやすい期初前に単価交渉を行うことで、より有利な条件を引き出せる可能性が高まるでしょう。

契約更新時

契約更新のタイミングも、フリーランスエンジニアが単価交渉を行う絶好の機会です。

契約が更新されるということは、クライアントが引き続き仕事を任せたいと考えている証拠です。これまでの実績や貢献度を評価されているということでもあるので、単価交渉が前向きに受け入れられる可能性が高いはずです。

単価が低いと感じる場合には、契約更新時に自分のスキルや実績を提示し、単価交渉を行ってみましょう。事前に根拠を準備し、納得感のある提案をすることで、単価アップにつなげることができるかもしれません。

成果を出した時

成果を出したタイミングも、単価交渉におすすめのタイミングです。

クライアントは、契約当初はエンジニアのスキルレベルを把握できていないですし、本当に求める成果を出せるのかがわからないため、低めの単価を提示する傾向があります。しかし、一定の成果を出しスキルレベルを証明できれば、より適正な報酬で契約できる可能性があります。

目に見える成果があると、クライアントも納得しやすく、交渉をスムーズに進められるでしょう。実績を積み上げ、交渉の材料を揃えたうえで、クライアントに適切な単価を提示するのがよいです。

フリーランスエンジニアの単価交渉の手順

単価交渉は適切な手順を踏んで行う必要があります。ここでは、フリーランスエンジニアの単価交渉の流れを見ていきましょう。

1.準備

フリーランスエンジニアが単価交渉を成功させるには、事前準備が不可欠です。特に、価格の根拠となる資料の作成や業界水準の調査などの客観的なデータがあることで、クライアントも納得ができるでしょう。これまでの実績や成果を証明する書類を準備するとともに、業界全体の報酬水準を調査し、相場に基づいた交渉材料を揃えます。

さらに、クライアントに提示する「提示価格」、自分が目指す「目標価格」、譲れない「最低価格」を設定することで、交渉の軸を明確にできます。交渉の場では、最初にやや高めの提示価格を出し、その後に目標価格で調整することでクライアントに納得してもらいやすくなるはずです。

このように、交渉を成功させるには、根拠のあるデータの準備と明確な価格設定を行いましょう。

2.単価交渉

事前準備が終わったら、実際に単価交渉を行います。フリーランスエンジニアの単価交渉では、一方的に希望を通そうとするのでなく、クライアントの事情を考慮しながらお互いに納得できる妥協点を探ることが重要です。

クライアントの予算を超えてしまうと契約が成立しない可能性があるため、交渉をスムーズに進めるためにも、相手の事情をしっかりとヒアリングし妥協点を見つけましょう。

クライアントが予算の都合上、希望する単価を受け入れられない場合でも、業務範囲の調整や稼働時間の見直しなど、双方にとって妥当な着地点を見つけることで交渉が成立する可能性もあります。クライアントの事情を理解しながら、適正な単価で契約を結ぶことを目指しましょう。

3.文書化

単価交渉で決まった単価は書面で明示しましょう。書面化することで認識の違いやトラブルを防ぐことができます。

フリーランス・事業者間取引適正化等法の第3条では、企業とフリーランス、またはフリーランス同士の業務委託に関して、条件を明示することが義務付けられています。

契約内容には、取引先の名称、合意日、業務内容、報酬額、支払期日などの情報を記載します。SNSのメッセージで交渉を行うケースもありますが、メッセージが削除されたり、閲覧不可になるリスクがあります。そのため、事前に保存方法を決めたり、スクリーンショットを残したりすることが重要です。また、SNSのメッセージ機能での取引条件の明示は、送信者が受信者を特定できる場合に限られます。ブログやウェブページ上の書き込みは認められないため、注意が必要です。

単価交渉の前に知っておくべき水準

単価交渉を行う前に、フリーランスエンジニアの単価水準を確認しておきましょう。水準を大幅に上回る単価で交渉を行っても、クライアントはなかなか応じてくれない可能性があります。ここでは、実際の求人情報の分析結果を参考に、フリーランスエンジニアの案件平均や職業別・言語別の単価水準をチェックしていきます。

案件平均

2024年12月のフリーランスエンジニアの案件平均単価は月額74.9万円であり、70~80万円前後が一般的なひと月の単価水準といえるでしょう。ほかにも、言語ごとや職種ごとで求められるスキルの難易度などが変わってくるので、単価の平均も変わってきます。自分の領域がどのような平均なのかを調べて交渉するのがよいでしょう。

言語や職種によっては100~200万円台の案件も存在しています。2024年12月時点でのSAP言語の案件では最高単価が月額215万円というものもあります。

このように単価の幅が大きいため、自身の市場価値を正しく把握して適切な単価交渉を行うことが重要です。

職種別の単価水準

フリーランスエンジニアの単価交渉を成功させるには、職種ごとの単価水準を知っておくことも大切です。エンジニアの単価は職種によって大きく単価が変わりますので、大体の相場を抑えておきましょう。

2024年12月の調査によると、最も高い職種はVPoEで月額平均110.2万円、次いで機械学習エンジニアが106.7万円、エンジニアリングマネージャーが91.0万円となっています。逆に、もっとも低いアプリエンジニアは月額平均74.5万円となっており、大きな差があることがわかります。

このように、職種によって単価は大きく変わるため、適正な単価を把握し、適正な単価を交渉しましょう。高収入のエンジニアについては以下で解説しています。

フリーランスエンジニアで年収2000万円稼げる?稼ぐ方法や必要なスキルも解説

言語別の単価水準

単価交渉を行う前に、言語ごとの単価水準を把握しておくことも重要です。開発言語によっても単価の相場は異なり、特定の言語では高単価が期待できる場合があります。

2024年12月の調査データでは、最も単価が高い言語はSAP(月額平均124.9万円)、次いでHaskell(120万円)、Solidity(94.6万円)となっています。COBOLのように前回比3.3%増加し62.9万円に上昇した言語もあり、言語ごとに市場の変動などもあります。また、React(80.7万円)、JavaScript(78.1万円)など、Webサービス系の開発においても単価が上昇していることがわかります。

単価交渉を成功させるには、事前に言語ごとの市場単価を把握し、自身のスキルに見合った適正な金額で交渉を進めることが大切です。

単価交渉を成功させるポイント

フリーランスエンジニアの単価交渉を成功させるには、他にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。最後に単価交渉を成功させるためのポイントを紹介します。

エージェントに相談する

エージェントに相談することでも、単価交渉の成功率を高めることができます。エージェントはクライアントとの橋渡しを担い、フリーランスエンジニアの利益を考慮しながら交渉をサポートしてくれます。

エージェントは多くのフリーランスエンジニアの交渉を見ていますし、業界の相場を知っています。さらに、企業との信頼関係を築いていたり、企業の内情なども知っていたりする可能性があります。

エージェント経由で案件を獲得している場合、エージェントが単価交渉を行ってくれる場合が多いです。また、現状の単価に不満がある場合や新しい案件を探している場合も、エージェントに相談することでより高単価になるよう交渉してくれる可能性があります。

このように、エージェントと連携することで単価交渉を成功させることができるかもしれません。

責任者との関係を築く

単価交渉を成功させるには、プロジェクトマネージャーや部門長、経営者などの責任者と交渉ができるような関係を築いておくことが重要です。

実際に単価交渉の決定権を持つのはこういった責任者であるため、交渉を成功させるには誰が決定権を握っているのかを把握し、責任者と交渉することが必要です。そのためにも日頃から責任者とコミュニケーションを取っておくことや、責任者に成果を伝えておくことなどが重要です。

このように、責任者と良好な関係を築き信頼を得ることで、単価交渉をスムーズに進めることができるはずです。

企業側の視点に立つ

単価交渉を成功させるには、クライアント企業の視点に立ち、相手にとってもメリットのある条件を提示することが重要です。一方的な要望の押し付けではなく、双方が納得できる形で交渉を進める必要があります。

企業の経営戦略や市場環境によっては、単価交渉が難しい場合があります。特に、コスト削減を重視する企業や、競争が激しい業界では、価格だけを理由に交渉を持ちかけると受け入れられにくく、関係性の悪化を招く可能性があるでしょう。そのため、価格以外の価値も示しながら相手が受け入れやすい形で交渉を進めることが大切です。

例えば、納期の短縮や、より柔軟な対応を可能にする業務フローの見直しを提案することで、取引先にとってもメリットのある提案となります。また、アフターサービスの充実や、専門知識を活かしたコンサルティングの提供などを付加価値として示せば、取引先にとって単なるコスト増加ではなく、より大きなメリットを感じてもらえるでしょう。

このように、単価交渉を成功させるには相手企業の視点に立ち、価格以外の価値を強調し、相手企業にとって魅力的な提案を行うことが重要です。単なるコスト増加ではなく、取引全体のメリットを示すことで、双方にとって納得のいく交渉が可能となります。

能力に見合った金額で交渉する

単価交渉を成功させるには、自分の能力に見合った金額で提示することも重要です。適切な価格設定を行うことで、クライアントも納得しやすくなり交渉がスムーズに進みます。

クライアントは、求める成果を提供できるエンジニアに対して評価をします。期待に応える実力があると判断されれば、単価交渉にも前向きに対応してもらえる可能性が高まるでしょう。逆に、自身を過大評価した金額を提示しても、実力に見合わないと判断されれば受け入れられません。

適正な価格設定は、単価交渉の成功を左右する重要な要素です。相場を考慮し、自身のスキルや経験に見合った金額を提示することで、クライアントと良好な関係を築きながら、納得のいく報酬を得られるでしょう。

交渉術を学ぶ

単価交渉を成功させるためには、交渉術や心理学などを活用することも効果的です。特に、相手の心理を理解し戦略を練ることで、交渉を有利に進められる可能性があります。信頼関係の構築や印象管理も交渉を成功させるうえで重要です。

例えば、最初に高めの単価を提示し、相手に断られた場合に少し低い金額を提示すると、相手は受け入れやすくなります。これは「ドア・イン・ザ・フェイス」テクニックと呼ばれ、交渉の場でよく使われます。さらに、普段から雑談を交えたコミュニケーションを心がけたり、表情や声のトーンを意識することなどでも好印象を与えられるでしょう。

このように、単価交渉を成功させるには交渉術を学び、心理学的なテクニックを活用するのも有効かもしれません。相手の心理を理解し適切なアプローチを取ることで、より良い条件を引き出せるはずです。

フリーランスエンジニアの求人ならベスキャリITで

フリーランスエンジニアとして安定した収入を得るには、適正な単価で案件を獲得することが重要です。しかし、単価交渉はタイミングや交渉の仕方によって結果が大きく変わります。業界の相場を理解し、根拠を提示することで、クライアントに納得してもらいやすくなりますし、契約更新時や成果を出したタイミングを狙うことで、より有利な条件で交渉を進めることが可能となるでしょう。

納得の単価感の案件を獲得するには、高単価の案件を多く持つエージェントを活用するのもおすすめです。「ベスキャリIT」は、フリーランスエンジニアに特化した仕事紹介エージェントで、15年以上の運営実績があり、300社以上と取引を行ってきました。

常時10,000件以上の案件を掲載しており、上場企業を含むさまざまな企業の高単価案件も豊富です。専任アドバイザーが案件選びから単価交渉、契約後のフォローまでサポートするため、単価交渉が不安な方でも安心して利用できます。案件の獲得や単価アップに悩んでいる方は、ぜひベスキャリITを活用してみてください。

ベスキャリITの無料会員登録はこちら

シェアする