社内SEは、社内で利用する業務システムやインフラの構築、運用、保守などを行う仕事ですが、フリーランスとして働くことは可能なのでしょうか。社内SEとしてキャリアを築いてきた人やこれから社内SEを目指そうとしている人のなかには、フリーランスとして独立したいけれども不安を感じているという人も多いと思います。
そこで本記事では、社内SEがフリーランスとして活躍できる理由やフリーランスのメリット、必要な能力などを解説します。フリーランスとして独立するときに注意すべきポイントも紹介しているので、これからフリーランスになろうという人は参考にしてください。
目次
社内SEがフリーランスになれる理由
社内SEはフリーランスとして働くことが可能ですが、ここではまずその理由を解説します。
フリーランス案件が多い
社内SEがフリーランスになれる理由としては、社内SEのフリーランス案件が多いことが挙げられます。近年、多くの企業がDXやITシステムの内製化を推進しており、専門性の高い社内SEの需要が増しています。正社員としてそういった即戦力人材をすぐに確保することが難しいこともあり、フリーランスを活用する動きが活発化しており、フリーランス案件が増えているのです。
私たちが運営するIT専門の人材紹介エージェントである「ベスキャリIT」でも、常に一定数の社内SEの求人が掲載されています。他の求人サイトを見ても、フリーランスの社内SEの案件は一定数あり、ニーズがあることがわかります。
社内SEは人手不足
社内SEがフリーランスになれるのは、人手不足であることも理由のひとつです。企業内でのSEの仕事は増加しているのにも関わらず、人材市場における社内SEの数が不足しているのです。
「全国情シス実態調査 2024」では、情報システム部門の課題として、64.5%が「人材(できる人)が足りない」と回答し、54.8%が「人員(人数)が足りない」と回答しています。
さらに、情シス業務の外部委託に関する実態調査でも、「勤め先の情シス担当者の人数は、業務量に対して十分だと思いますか」という質問に対して、「あまりそう思わない」と回答した人の割合が29.7%、「全くそう思わない」と回答した人の割合が14.4%となっており、多くの現場で人手不足が課題となっていることがわかります。
このように、人手不足であることから、社内SEはフリーランスとして働きやすいということがわかります。
出典:株式会社バッファロー(https://www.buffalo.jp/biz/)
外部に依頼している企業が多い
社内SE業務を外部に委託している企業が多いことも、社内SEがフリーランスになれる理由のひとつです。
上の情シス業務の調査でも、「お勤め先では、情シス業務を外部委託していますか」という質問に対して、「全てしている」と回答した人の割合は24.4%、「一部している」と回答した人の割合は45.9%でした。
このように多くの企業が社内SEの業務に社外人材を活用していることからも、社内SEがフリーランスとして独立した際にも仕事を得やすく、フリーランスとして収入を得ていくことができるでしょう。
コスト削減のニーズが高い
企業のコスト削減のニーズが高いことも、社内SEがフリーランスとして働きやすい理由です。
社内SEの業務を内製化するには、人材の採用や育成を行わなくてはならないので、そのためのコストがかかってきます。また、正社員として雇用をする場合には社会保険や福利厚生、賞与などのコストも必要になります。業務委託を利用すればこういった費用がかからないので、コスト削減としてフリーランスの活用が進んでいるのです。
上の調査でも、「情シス業務を外部委託している理由を教えてください」という質問に対して、42.3%の人が「IT人材の採用コストを削減したいから」と回答しています。
正社員を雇用するとコストが継続的に発生しますが、フリーランスであればプロジェクト単位や短期間で仕事を依頼でき、コストを抑えることができるというメリットもあり、フリーランスの活用が進んでいるのです。
『フリーランスエンジニアとは?職種やリスク、仕事獲得方法などを解説』
社内SEがフリーランスになるメリット
ここからは、社内SEがフリーランスになるメリットを紹介します。
自由な働き方ができる
社内SEがフリーランスになるメリットとしては、自由な働き方ができることが挙げられます。社内SEの業務はパソコンとインターネット回線があれば対応できるものも多く、フリーランスの社内SEは勤務時間や勤務地に縛りがない場合が多く、好きな時間に好きな場所で働ける傾向にあります。
リモートワークが可能な仕事であれば、会社までの通勤もないのでより時間を有意義に使うことができます。子育てや介護と両立しながら在宅で働くこともできますし、海外などで働くことも可能でしょう。
現に、「フリーランスエンジニアとしての働き方に関するアンケート調査」では、フリーランスのメリットとして「働く時間に縛られない」「働く場所に縛られない」が上位でした。
フリーランスの社内SEになることで、よりワークライフバランスを重視した働き方ができますし、自分の理想の働き方をすることができるでしょう。
ただし、フリーランスに出社を求めたり、社員との連携のために働く時間を指定したりしている企業もあるため、案件の詳細をよく確認しましょう。
収入アップが期待できる
社内SEがフリーランスになることで、収入アップが期待できます。正社員は年功序列や会社の給与テーブルに収入が縛られることが多いですし、社会保険や福利厚生などがあることで手取りの給与は低くなる傾向にあります。フリーランスには社会保険や福利厚生がない代わりに仕事の報酬が高く設定されるので、手取りの収入は増える可能性があります。
また、正社員の場合は、残業や休日出勤があっても収入がそれほど増えないことが多いですが、フリーランスであれば稼働した分だけの報酬を得ることができます。複数の案件を受けるなどすれば、大きく収入を増やすことができるでしょう。
残業や休日出勤を減らせる
フリーランスの社内SEになることで、残業や休日出勤の負担を軽減できるというメリットがあります。正社員の場合には、トラブル対応や突発的な依頼などで勤務時間外の稼働が求められることも少なくありません。
フリーランスであれば案件は自分で選べますし、自身の業務範囲や稼働時間を契約の段階で明確に定められるため、無理な残業や突発的な休日出勤など契約範囲外の業務を断ることが可能になります。働く時間を自分でコントロールできるので、ワークライフバランスの改善にもつながるでしょう。
一方で、フリーランスでも納期の厳しい案件などを選ぶと業務量や稼働時間が多くなるため、自分に合った案件選定が重要です。
フリーランスの社内SEの年収
フリーランスの社内SEの年収はどれくらいなのでしょうか。
ベスキャリITに掲載している案件を見ると、月額報酬は30万円から150万円となっており、これは年収に換算すると360万円から1800万円ということになります。
このような年収の幅は、地域や業務内容、業務範囲、専門性によって生まれていると考えられます。都市部では給与の水準が高いですし、求められる知識やスキルの専門性が高い案件や業務範囲の広い案件などでは高単価が期待できます。
SEやエンジニアの年収は日本の平均年収と比べると高い傾向にあるので、フリーランスの社内SEに関しても一定の年収が期待できるでしょう。
フリーランスが必要とされる社内SEの業務
実際にフリーランスの社内SEを目指そうと思う際には、どのような業務を行うことになるかを理解しておきましょう。社内SEはさまざまな業務を行いますが、フリーランスはどのような業務で必要とされるのでしょうか。
上の「情シス業務の外部委託に関する実態調査」では、「外部委託している情シス業務を教えて下さい」という質問に対して、「サーバー構築」が51.3%、「ネットワーク構築」が39.7%、「PCの保守・管理」が33.3%となりました。
また、情シス担当者600名を対象とした調査では、アウトソーシングしたい業務として、約36.7%が「パソコン管理・キッティング作業」および「システム運用・監視」、約33.2%が「障害対応」、27%が「社内問い合わせ対応」を挙げました。パソコンやシステムの管理・運用などの業務を行うことが多いようです。
このように、サーバーやネットワークの構築・保守といったインフラ分野から、機器やシステムの管理・運用、障害対応などがフリーランスの社内SEに求められる業務なので、スキルや知識を高めておきましょう。
フリーランスの社内SEに求められる能力
フリーランスの社内SEには、どのような能力が求められるのでしょうか。
「全国情シス実態調査 2024」では、今後強化すべき、もしくは強化したいと考えている点は以下となりました。
内容 | 割合 |
---|---|
セキュリティ強化 | 約61.2% |
社員のITリテラシー向上 | 約47.7% |
情シス内の人材育成 | 約47.7% |
DX推進 | 約41.2% |
AIの活用 | 約40.2% |
中長期のIT戦略立案 | 約38.3% |
これをもとに、以下の表ではフリーランスの社内SEに求められる能力と、その理由を整理しました。
求められる能力 | 理由 |
---|---|
セキュリティ対応力 | マルウェアおよびランサムウェアによる攻撃が増加しており、企業は顧客情報や機密情報の漏洩のリスクを抱えています。社内SEには、システムの運用管理だけでなく、セキュリティインシデントが発生した際の初動対応や、予防策の立案・実行といった対応力が求められます。 |
社員のITリテラシーを高める指導力 | テレワークやクラウドの普及により、全社員に基本的なITスキルが必要とされるようになりました。フリーランスの社内SEは、社員のパソコンやネットワーク、AIなどについてのリテラシーを向上するための研修や社内勉強会の企画・運営、業務マニュアルの整備といった支援が期待されます。 |
DX・AI技術への理解と対応力 | 企業のIT環境は近年急速に進化しており、従来の保守・運用にとどまらず、業務効率化やデータ活用を目的としたDXの推進や、AIの導入と運用が重要な課題となっています。そのため、社内SEであっても、最新技術のトレンドを把握し、自社の業務に適用できる能力が不可欠です。 |
IT戦略の立案能力 | 近年、企業においては単にITシステムを運用するだけでなく、経営目標に沿ったITの活用が不可欠となっています。社内SEも、現状分析から課題抽出を行い、中長期的な視点でIT投資の方向性を示す戦略的な思考力が求められます。フリーランスにおいても、こういった経営目線でのIT戦略の提案力が求められるでしょう。 |
クラウド技術の活用力 | 企業は業務効率化やコスト削減を目的に、オンプレミス環境からクラウド環境へとシステムを移行しています。社内SEにもクラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloudなど)の導入・運用・セキュリティ管理に関する知識とスキルが求められるようになっています。 |
高いコミュニケーション力 | フリーランスの社内SEは、社員とは異なり社内に常駐しないケースも多く、限られた時間の中でヒアリング、要件定義、調整、報告を行う必要があります。また、社内SEが関わるプロジェクトでは複数部署を横断することも多く、部署間の調整役としての役割も期待されます。関係者と円滑にやり取りを進め、相手の意図を正確に理解し、自分の考えを的確に伝える力が必要です。 |
フリーランスの社内SEの注意点
フリーランスの社内SEになるには、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。
スキルが求められる
フリーランスの社内SEとして働く場合、幅広いスキルが求められる点に注意しましょう。上の「情シス業務の外部委託に関する実態調査」では、情シス業務の外部委託を行う上で感じている悩みとして、「スキルにバラツキが大きい」というものがあるとされています。
社内SEの業務はITインフラの整備・運用、社内システムの導入・管理、セキュリティ対策、ヘルプデスク業務など多岐にわたるうえ、フリーランスとして働く場合は即戦力であることが前提となります。そのため、これらの業務に関する幅広く深いスキルが求められます。
だからこそ、フリーランスの社内SEはスキルがないと契約が終了となってしまうリスクがあるので、長く活躍するためには幅広く実践的なスキルを備えておくのがよいでしょう。
社会的信用が低い
社内SEはフリーランスになると社会的信用が低くなる可能性があるという点にも注意しましょう。
フリーランスエンジニアとしての働き方に関するアンケート調査では、「フリーランスエンジニアになって感じたデメリット・不満な点」として、「社会的信用が低い」がもっとも高くなりました。
フリーランスは会社員と異なり雇用契約を結んでいないため、収入の安定性が不安視され、金融機関や不動産業者などから見て信用力が低く評価される傾向があります。
そのため、住宅の購入や銀行口座の開設、クレジットカードの新規発行などを行う予定がある人は、会社員の間に行っておくのがよいかもしれません。また、社会的信用を高めるために、資格取得や法人化なども検討するのもよいでしょう。
事務作業が必要
フリーランスの社内SEになると、SEとしての業務以外にもさまざまな事務作業を自分で行う必要があります。会社員の社内SEであれば総務や経理が担当する業務も、フリーランスになると外部委託しない限りすべて自分で行わなくてはならないのです。
フリーランスになると、開業時には税務署への開業届や青色申告承認申請書の提出、業務委託契約書の作成・締結、請求書の作成・送付、社会保険・税務関連の業務、確定申告などの事務作業を自分で行わなくてはなりません。
これらは本業の作業時間を圧迫する要因となりますし、怠ると罰則を受けることもあるため、会計ツールの導入や専門家への部分委託を検討するのがよいでしょう。
仕事獲得の負担がある
フリーランスの社内SEとして活動する際には、仕事を自分で獲得するための負担が発生する点に注意しましょう。
企業に所属している社内SEとは異なり、フリーランスの社内SEが仕事を獲得するためには自分で営業を行わなくてはなりません。そして営業活動を成功させるためには、プレゼン力や提案力、企業と信頼関係を築くコミュニケーション力などが必要になります。
このように、フリーランスの社内SEになると仕事獲得の負担が発生しますが、フリーランス向けのエージェントなどを活用することでこの負担を減らせる可能性があります。エージェントは、フリーランスと企業をマッチングする専門サービスであり、案件の紹介や契約交渉、報酬管理などを代行してくれます。
そのため、自分で営業先を探す手間が省け、営業活動にかかる時間や労力を減らすことができるでしょう。
社内SEのフリーランス求人はベスキャリITで
フリーランスの社内SEは一定の案件が常にあり、今後も高い需要が期待できます。ただ、フリーランスの社内SEとして評価され契約を得続けるためには、幅広いスキルが必要になります。実績を積み重ねるとともに、幅広い知識とスキルを身につけましょう。
また、フリーランスになると営業活動も行わなくてはならず、営業のスキルも必要になります。営業が苦手という人はフリーランス向けのエージェントの利用も検討しましょう。
IT分野に特化したエージェントサービスである「ベスキャリIT」は、常時10,000件以上のエンジニア案件を掲載しており、フリーランスの社内SEを求める案件も多く取り扱っています。利用者一人ひとりに専任のアドバイザーが付き、案件獲得を支援するとともに、面接のアドバイスや案件参画後のアフターサポートも行っています。
フリーランスの経験がない人や、企業との商談が苦手という方でも安心して活動できる体制が整っているため、フリーランスの社内SEを目指す人はぜひベスキャリITを利用してみてください。